第20話 たまには運に頼らずに封印を解く
ミナに案内してもらって、俺たちは北西の山(ナユアリという山らしい)へと向かった。
それほど高い山ではなかったので、一時間ぐらいで頂上に着いた。
「ここに神殿があるのか?」
「ええ。そろそろ見えてくるはず」
ミナの言った通り、すぐに神殿が見えてきた。
さて、問題は……、
「この神殿、封印かなんかある?」
「ある。元々、その封印があるせいで、この神殿の調査は行われていなかったの」
「でも、封印ぐらい、ヒカルさんにかかれば……」
おいおい、ルリ。封印を解くのは俺頼りかよ。
まあ、封印があったら手当たり次第いじるつもりだったけど。
「よし、中に入るぞ」
神殿の中は、全然広くなかった。
理由は簡単。入ってすぐのところに、封印された扉があるからだ。
ところで……、
「この封印、どうやって解けばいいんだ?」
封印の周りには、ミサト様の時のような石版はない。
柱もないので、ユサン様の時のように、適当に触れまくる作戦も使えないだろう。
「誰か、何か気づいたことはないか?」
「参考になるかどうかはわからないが、この扉から、強い魔力を感じる」
扉から強い魔力か……。
試しに、扉に触れてみますか。
「これでどうだ?」
……………………。
反応なしか。
「ヒカルさん! 今ヒカルさんが触った所を中心に、魔力が強くなっています!」
何だと? おいおい、まさかこの扉……、
「ルリ。今から、俺は扉の右下に触れる。その後、魔力が右下に集まってくると思うから、左上に爆発魔法頼む」
「わ、わかりました!」
ルリが、爆発魔法の準備を始める。
さて、俺の想像通りなら……、
「準備できました!」
「わかった。行くぞ!」
そう叫ぶと、俺は予定通り扉の右下に触れる。
そして、頃合いを見計らい、ルリが爆発魔法を放つ。
ドッカーン。
威力を一旦集中させた、凄まじい爆発魔法が扉に炸裂する。
おそらく、これで……。
「と、扉が、壊れてるだと!?」
「私の魔法で?」
「ヒカル、一体何したの?」
驚いた三人が、俺に質問してくる。
思ってた通りにいって、俺が一番ビックリしてるんだから、ちょっと落ち着く時間が欲しいんだけど……、まあいっか。
「最初に俺が扉に触れた時、そこを中心に魔力が強くなったよな? その時に俺は、この扉が封印されているんじゃなく、力が加えられた部分の耐久力を強化する魔法がかけられていることに気づいたんだ」
「つ、つまり、ヒカルさんは先程、右下をあえて強化させることで、左上に強化魔法が行かないようにしたんですか?」
「そういうこと」
ええええぇぇっっ!!
三人の叫び声が重なる。
うん、叫びたい気持ちはわかるよ。
というか、俺が一番叫びたい。
「だ、だが、ヒカルが触れただけで魔法が偏るのなら、前に王都の人たちが来た時に突破されていても、おかしくなかったんじゃないのか?」
「甘いぞリンカ。俺は自分の手で触れたんじゃない。こいつで扉を突いたんだよ」
俺は、こっそり鞘から抜いていた神速の剣を見せた。
さすがは伝説の神器だ。俺が全力で右下を突いただけで、ルリの爆発魔法で左上を壊せるぐらい、魔力を集めてくれたんだからな。
「少し狭いけど、一人ずつなら通れそうだ。中に入るぞ」
◇
「見つけたぜ」
「こ、これが……、ゲンブ様の神器、竜王の槍」
神殿の奥には、リンカが考えた通り、ゲンブ様の神器が存在した。
これで、ミナも自分の武器をゲットすることができた。
「ゲンブ様。不束者ですが、貴殿の神器を使わせていただきます」
「リンカのおかげだな」
「バカ言うな。ヒカルの力だろ」
そうか? だが今回は、運に頼らずに封印を解けたからな。
その点においては、俺も活躍したと言っていいのかもしれない。
「無事ミナさんの武器も手に入ったことですし、改めて大図書館に向かいましょうか」
「だな。ってことで、ミナ、悪いが案内を……」
「ミ、ミナ様!」
俺たちのもとへ走ってきたには、東国の騎士団の伝令係だった。
王国から伝令? 一体何事だ?
「私はここです。それで、何かあったのですか?」
「そ、それが、王都サヒルドに厄災級の魔物が現れて……」
厄災級の魔物だと!?
この頻度で出現するとか、色々おかしいだろ!?
「王都の現状は!?」
「今は東国騎士団が戦っていますが……。二隊に分かれているので、魔物を倒すのは不可能です!」
「ちょっと待て。今二隊に分かれてって言ったか? なんで分かれてんだよ?」
「ま、まさか……」
「厄災級の魔物が、北と南に同時に現れたためです!」
う、嘘だろ……。
ただでさえヤバイ厄災級が、二匹同時にだと!?
「や、厄災級の魔物は、全部で十匹のはずです。なのに、どうして二匹同時に来るんですか!?」
ルリの動揺は、この場にいる全員が感じていることだった。
俺も、同じく動揺していた。
いや、動揺していなければおかしいのだ。
しかし……、
「王都に行くぞ」
その言葉は、考えるより先に口から出た。
今となってはもう確かめる術はないが、もしかしたら俺はこの時、自らの身に課せられた使命を、無意識のうちに果たそうとしていたのかもしれない。




