第18話 運が良ければ金貨一万枚が貰える
サミ村の村長、手紙に変なこと書いてないだろうな。
サミ村では、ブラッディベアを倒しただけだし、何も悪いことはしてないはず。
というか、むしろブラッディベアを倒して、村を救った立場にいるぞ俺は。
……自分でこんなことを言うのはどうかと思うが。
「そんな顔をするな、若者よ。この手紙は、お前さんらに感謝するという内容じゃ」
「それを聞いて安心しましたよ……」
「ガーッハッハッハ! 厄災級を二匹も屠ったと聞いて、どんなクセの強いやつが来るかと構えとったが、お前さんは正直者じゃな」
「お父様、笑ってばかりいないで、話の続きを」
「そうじゃったそうじゃった。おい、若いの。厄災級二匹討伐で、金貨一万枚じゃあ。持っていくといい」
「い、一万枚!?」
俺とルリの叫び声が重なった。
この世界には、銅貨、銀貨、金貨の三種類の硬貨が存在する。
銅貨は百枚で銀貨一枚分、銀貨は百枚で金貨一枚分となっている。
そして、俺の感覚では、銅貨一枚でだいたい日本の十円ぐらいだ。
つまり、金貨一万枚は、日本円にしておよそ十億円である。
エ、エグい……。
いや、異世界に転生する前は、宝くじ当たりまくったおかげでそれ以上持ってたけども。
厄災級とはいえ、魔物二体倒しただけだぞ。
「十億、いや、金貨一万枚は多すぎると思うんですけど……。俺たち、魔物二体倒しただけですよ?」
そう言うと、あれだけ喋っていた王様が、突然静かになった。
あ、あれ? 俺、今何か変なこと言ったか?
「お前さんは、厄災級の魔物の恐ろしさを知っておるのか? あいつらが滅ぼした都市は数知れず。挑んで命を落とした冒険者は、今の時点で何人いるかわからんのじゃぞ!?」
「え? 厄災級って、そんなにヤバイんですか?」
「私、前にヒカルさんに言った気がするんですが……」
「そうだっけ?」
言われてみれば、そんなことを言われたような気もするなあ。
全然気にしてなかったけど。
「ヒカルさん、厄災級の魔物は、一匹に金貨三千枚の賞金がかけられているんですよ」
「あれ? でも今、二匹で一万枚って言われませんでした?」
「それは、ワシの可愛い娘を助けてくれた分じゃ。安心せぇ、残りの四千万は自分で出しておる」
なかなか豪快な王様だな。
そういうことなら、有り難く頂いておくか。
幸い、いくら貰っても、異空間袋のおかげで大丈夫だしな。
「ありがとうございます、国王様」
「あー、ワシにはタメ語で構わんぞ。それと、国王じゃなくて、エブルドって呼ぶこと」
こ、この王様ツッコミどころありすぎだろ……。
まあ、変に厳しい人よりは、絶対に良いんだけど。
「それなら、私のことはミナとお呼びください、ヒカルさん」
王女様まで……。
俺、ただの一般人ですよ?
その辺、理解されてます?
「おい、ヒカル。今晩王宮に泊まっていけ。ワシに、旅の話を聞かせるんじゃ」
「それは名案です、お父様! すぐに部屋を用意させます!」
な、何だか大変なことになってきたぞ……。
この親子には、自分たちが王族の人間であるという自覚があるのだろうか?
◇
その夜、俺たちを歓迎するために、ミニパーティーが開かれた。
料理は言うまでもなく、めちゃくちゃ豪華である。
「じゃあお前さんは、厄災級を倒せたのは、ただ運が良かっただけだと言うのか!?」
「だーかーらー、さっきから何度も言ってるじゃないですか!」
いやー、まさか、俺が王様とこんな会話をする時が来るとは……。
やっぱり、エブルド様は豪快だな。
「でも、運が良いだけで、厄災級は倒せないと思うんですけど……」
「そうですよね、ミナさん! 私もそう思うんですけど、ヒカルさん全然答えてくれなくて!」
「だって、マジで運が良いだけなんだもん」
実際の所、俺がこの世界で戦えているのは、ホントのホントに運のおかげである。
俺の攻撃力が高く見えるのは、神速の剣がヤバイだけだしな。
「おい、ヒカル。本当はどうなんだ? お前が森で立てたあの作戦。あれは素人の考えられるレベルじゃなかったぞ」
リンカまでそんなこと言い出すのかよ。
あれは、たまたま思いついただけなんだよ、運良く。
「おい、若いの」
「ヒカルさん!」
「ヒカル!」
その後俺は、夜遅くまでエブルド様たちに質問され続けた。
め、めちゃくちゃ疲れた。
王様と話すのも考えものだな……。
◇
やっとエブルド様たちから解放された俺は、ミナが用意してくれた部屋向かう。
荷物を置いた後、クソでかいお風呂に入り、今日の疲れ(もちろん、疲れの原因は、さっきのミニパーティーである)を癒した。
「ふう、気持ち良かった〜」
さすが王宮。お風呂も超豪華だったな。
ただ、一人で入るには大きすぎる。
そういえば、パーティーの後は、誰とも話していないな。
(あんだけ質問されまくるのは困るが、一人っきりも寂しいな)
部屋に戻った俺は、一人で寝る準備をしていた。
いつもなら、ルリやリンカが一緒だからな。
今から二人の所に行こうかな……。
コンコン。
うん? 今、窓の外から音がしなかったか?
そう思い、窓の鍵を開けて、外を見てみる。
「ありがと! 外から来るのは、ちょっと無茶だったかな?」
「……は?」
えーっと、ミナ王女様? こんなところで何をされているので?
それに、口調が変わっているような……。
そんなことより(そんなことでもないけど)、王女様が、夜遅くに一人で人の部屋に来たらダメだと思うんですけど……。
しかも俺、男ですよ?
「ミナ様? なんでこんなところに?」
「実は、ヒカルにお願いがあって来ました。父やルリたちには聞かれたくないので、一人でここまで」
お、お願い?
聞く聞く聞きます!
ミナ様のお願いなら、何がなんでも叶えますよ!
「それで、お願いというのは?」
「えっと、その……、私を、ヒカルたちの仲間にしてくれない?」
「わかりまし……って、えええぇぇぇっっっ!!!」
俺は、真夜中にも関わらず、大声で叫んだ。
く、国の王女様が、俺たちの仲間に入りたいだと!?
い、一体何が起こってるんだ!?
ちなみに、これは後から聞いたことだが、ミナ様は場面によって口調を変えるらしい。




