第16話 やっぱり運が良ければ厄災級の魔物は倒せる
弓楓の森で、リンカを新たに加えた俺とルリ。
俺たち三人は、タヤルトという街を目指して、旅をしている。
ところで、これはルリが森を出てから教えてくれた話なのだが、この世界の名前はラオラルドというらしい。
そして、この世界は東西南北に計四つの国があり、俺たちが向かっているタヤルトは、東国イストラルで二番目に大きい街だとか。
「ふう、やっぱり歩くと疲れるなあ」
「後三十分ぐらいで着きます。頑張りましょう!」
「休憩したいっす」
「情けないな。男のくせに」
文句を言うリンカは放っておいて、俺は地面に腰を下ろした。
異空間袋から無限の聖水を取り出し、ガブガブ飲む。
「ぷはぁ! うまい! 生き返るぜ!」
そのまま、無限の聖水をルリに渡す。
ルリは瓶を受け取ると、そのまま口をつけて飲んだ。
「この聖水はいつでも美味しいですね!」
ルリは飲み終わると、瓶をリンカに渡した。
リンカは、相変わらず少しためらってから、聖水を飲み始めた。
リンカがためらった理由はただ一つ。
瓶に口をつけて飲むということは、俺と間接キスをすることに気づいているからである。
最初、俺とルリが普通に同じ瓶で水を飲んでいるのを見たリンカは、凄い叫び声をあげた。
そこで、ルリは間接キスを知ることとなるのだが、知った後もルリは全然気にしていなかった。
当然、リンカは同じ瓶で水を飲むのを嫌がった。
しかし、いちいち水を汲んだりするのも大変である。
結局、俺が飲んだ後にルリが飲んで、その後にリンカが飲むということになった。
「まったく……。ルリには色々常識が欠けているぞ」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ!」
ちなみに、今リンカが言った色々には、俺と二人が同じ要塞天幕で寝ることも含まれている。
これを話すと長くなるのでやめておくが、要するに気にしたら負けということだ。
休憩を終えた俺たちは、再び歩き始めた。
ルリの言った通り、三十分ぐらい歩くと、かなり大きな街が見えてきた。
「見えてきました! あれがタヤルトの街です!」
「思ってたより大きいな」
「外の世界には、こんなに大きな街があるのか……」
さすが東国で二番目の大きさを誇る街だ。
ここなら、食料や薬をたくさん買えるな。
「早速行きましょう、ヒカルさん!」
「そうだな。おーい、行くぞリンカ!」
「ちょっと待てヒカル。何かが見えるぞ」
「何かが見える?」
一体何が見えるんだ?
なんだか嫌な予感がするんだが……。
「ほら、あれだ」
「どれどれ……」
ふむふむ、砂煙が見えるな。
その砂煙の中心にいるのは……、何やらかなりでっかい動物だ。
っていうか……、このかなりでっかい動物って……、
「魔物じゃねーか、あれ!」
「あ、あれは、厄災級の魔物、デスタイガーです!」
や、厄災級だと!?
おいおい、この世界の村や街は、なんでこんなに厄災級の魔物に襲われるんだ?
「と、とにかく、このままだと街の人たちが危ない。俺たちで、あいつを何とかしないと」
「とりあえず、魔物の近くまで行くぞ。この距離では何もできないからな」
「わかりました! 身体強化魔法かけます!」
ルリに身体強化魔法を付与してもらった俺たちは、デスタイガーに向かって走り始めた。
今回、敵の弱点はわからないので、まずは俺が攻撃を避け続けて、情報を集める作戦でいく。
「ルリ! リンカ! 援護頼む!」
そう言うと、俺は神速の剣を鞘から抜き、デスタイガーの背後から思い切り斬りつけた。
ゴルルワァー!!
不意打ちを受けたデスタイガーは、俺の方を向くや否や、鋭い爪を振り下ろしてきた。
俺はそれを、運が良すぎるために習得している、何が起きてもビビらない能力を使い、ひたすら避け続ける。
後方からは、ルリによる攻撃魔法と、リンカが打つ矢が飛んできている。
後は何か弱点を見つけられれば、この勝負勝てるぞ。
ガリルワァー!!
爪による攻撃を全部避けられて怒ったのか、デスタイガーが突進してきた。
まあ、突進の方が避けやすいからラッキーだな。
俺は簡単に突進を避けつつ、デスタイガーを斬った。
デスタイガーは、方向を変えて、まだ俺を狙っているらしい。
(次は首を斬ってみるか……)
そんなことを考えながら、俺は突進攻撃に備える。
備えたのだが……、
グキッ。ドサッ。
デスタイガーは、どうやら方向転換した時に、足を捻ってしまったらしい。
かなり重症らしく、全然動かない。
これまでの戦いは、ほとんど運に助けられてきた俺。
だが、今までは、自分で何か行動をし、終わってみれば、それが幸運な結果だったのだ。
今回のように、何もしてないのに戦いに勝つのは初めてである。
「なんか心苦しいけど、悪いな」
シュバッ。
俺は、デスタイガーの首を落とした。
これで、タヤルトの街は助かるはずだ。
変な感じはするが、結果オーライだな。
すると、近くから足音が聞こえてきた。
ルリとリンカが来たのだろう。
二人に状況を報告しないとな。
「ありがとな、ルリ、リンカ。おかげでこいつを倒せた……、え?」
そこにいたのは、きちんとした甲冑に身を包んだ騎士団だった。
え? 何してるんだこの人たち? まさか、俺を捕まえに!?
「こ、これは、えっとですね、その……」
だが、俺の言い訳は最後まで聞いてもらえなかった。
なぜなら、騎士団の人たちがお礼を言い始めたからである。
「今回は、デスタイガーを討伐していただき、本当にありがとうございます!」
「今、タヤルトには東国の王女様がいらっしゃるのです。もし魔物が街に入っていたら、王女様が危険に晒されていたかもしれません。貴殿のおかげで助かりました!」
「王女様が、貴殿にお礼をしたいとおっしゃられています! ぜひこちらへ!」
国の、王女様?
えっ、ええええぇぇぇぇ!!




