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第四十六話 宇津山|紀伊守、新たな城を預かる

 駿府から使いが来たのは、宗長に会ってから十日ほど後のことだった。

 小瀬戸城で帳面を見ていた泰満は、使者の言葉を聞いて顔を上げた。

「御屋形様より、出府せよとの御沙汰にございます」

「御屋形様より?」

「はい。なるべく早く参るようにとの仰せです」

「用向きは」

「それまでは伺っておりませぬ」

 今川氏輝からの直接の召しだった。

 氏親の葬儀の後、新しい当主へ奉公を誓うため駿府へ出てはいる。

 だが、それ以後に氏輝から個別に呼び出されたことはなかった。

 泰満は使者へ頷いた。

「承知した。明朝、小瀬戸を発つとお伝え願いたい」

「はっ」

 使者が下がると、泰満は隣にいた彌太郎を見た。

「何だと思う」

「私にお尋ねになりましても」

「父上からは何も聞いておらぬ」

「時茂様からのお話なら、先に何かございましたでしょうな」

「叔父上も何も言わぬ」

「泰以様の場合は、御存じでも黙っておられることがございます」

「だから困るのだ」

 泰満は腕を組んだ。

「御屋形様から直接呼ばれるようなことを、何かした覚えがない」

 彌太郎は少し考えた。

「何かしたから呼ばれるとは限りませぬ」

「では」

「これから何かさせられるのではございませぬか」

 泰満が嫌そうな顔をする。

「もっと嫌なことを言うな」

     ◇

 翌日。

 駿府へ入った泰満は、その日のうちに今川館へ出た。

 案内された部屋へ入ると、思っていた以上の顔ぶれが揃っていた。

 上座には今川氏輝。

 その近くに寿桂尼。

 朝比奈下野守時茂、福島盛広、長池左衛門尉親能。

 さらに葛山氏広までいる。

 泰満は一目見て、ただの報告のために呼ばれたのではないと悟った。

「朝比奈紀伊守泰満にございます」

 深く頭を下げる。

「来たか、紀伊守」

「はっ」

「急に呼び立ててすまぬ」

「とんでもございませぬ」

 氏輝に促され、泰満は顔を上げた。

 一度だけ時茂と目が合った。

 だが父は何も言わない。

 長池も氏広も、すでに何か大きな話を終えた後のような顔をしていた。

 氏輝が口を開く。

「紀伊守。宇津山を知っておるな」

 一瞬、泰満は何の話か分からなかった。

「宇津山にございますか」

「ああ」

「存じております。以前、泰以叔父と一度参りました」

「聞いておる」

 氏輝は長池を見る。

「親能」

「はっ」

 長池が泰満へ向き直った。

「宇津山城の普請は、間もなく一段落いたします」

「先日、宗長殿からも伺いました」

「宗長殿から?」

「泰以叔父の館に滞在されておりまして。その前に宇津山へ立ち寄り、長池殿にもお会いになったと」

「なるほど」

 長池が小さく笑う。

「ならば、以前とは随分変わったことも聞かれましたか」

「人も道も増えていたと。ただ宗長殿御自身は、城普請のことは分からぬと申しておられました」

「宗長殿らしい」

 そこで氏輝が話を戻した。

「紀伊守」

「はっ」

「小瀬戸より宇津山へ移れ」

 泰満は、一瞬返事ができなかった。

「……宇津山へ、でございますか」

「ああ」

 氏輝は泰満を見た。

「以後は宇津山城を居城とし、城ならびにその周辺を治めよ」

 そこでようやく、言葉の意味がはっきりした。

 一時的な城番として入れという話ではない。

 小瀬戸を離れる。

 家臣を動かす。

 家族も移す。

 これまで預かってきた土地の中心そのものが変わる。

 泰満は姿勢を正した。

「恐れながら、一つお尋ねしてもよろしいでしょうか」

「申せ」

「なぜ、私なのでございましょう」

 氏輝は少しだけ葛山氏広を見る。

「氏広」

「はっ」

「そなたから申せ」

 泰満も氏広へ身体を向けた。

「葛山殿が、私を御推挙くださったのでございますか」

「左様」

 氏広は落ち着いて答えた。

「差し支えなければ、その理由をお聞かせ願えますでしょうか」

「甲斐で見たことです」

 泰満の表情が変わった。

「上条河原にございますか」

「その前後も含めて」

 氏広は少しだけ姿勢を直した。

「軍が崩れた時、そなたには三百ほどの兵がおりましたな」

「はい」

「そのまま、自分の兵だけを連れて退くこともできた」

「小原殿らも残っておられました」

「承知しております。そなた一人の手柄にするつもりはございませぬ」

 氏広は続けた。

「私が見ていたのは、勇ましく戦ったかどうかではありません」

「では」

「退くべき時を誤らなかったことです」

 泰満は黙った。

「福島殿が討たれた。軍は崩れた。それでも残った兵を通し、自らも殿を務めて退いた」

 そこまでは、泰満自身も分かっている。

 だが氏広が言ったのは、その後だった。

「勝山へ戻ってからも、そなたは無理に取り返そうとはしなかった」

「葛山殿の御判断に従ったまでにございます」

「その判断に従えることも大事なのです」

 氏広は言った。

「若い者ほど、負ければ取り返したくなる。失ったものを、すぐに自分の働きで取り戻そうとする」

 泰満は何も言わなかった。

「しかし境目では、それが一つの城の話では済まぬことがある」

 氏広の視線が、脇に置かれた遠江の絵図へ移る。

「宇津山は三河に近い」

「はい」

「敵が来れば戦わねばならぬでしょう。だが、勝てぬ時に城一つへ固執し、兵も土地も失ってはならない」

 泰満は小さく頷いた。

「勝つ時よりも、退く時に何を残すか」

 氏広が言う。

「その判断のできる者がよいと申し上げました」

 泰満は少しだけ目を伏せた。

 上条河原からの撤退を、自分では誇れる戦とは思っていない。

 福島助春が死んだ。

 多くの兵を失った。

 帰らなかった者もいた。

 ただ、生きている者を帰そうとした。

 それだけだった。

 だが、その姿を見ていた者がいた。

「ありがたき御言葉にございます」

「礼には及びませぬ」

 氏広は答えた。

「見たことを申し上げただけです」

     ◇

「それだけではない」

 氏輝が口を開いた。

 泰満が向き直る。

「泰以が、父へ宇津山の整備を勧めたそうだな」

「はい。舟形山から戻った折に進言したと聞いております」

「父はそれを覚えていた。長池へ普請を命じたのも、その話があったからだ」

「はい」

「泰以は長く父へ仕えた」

 氏輝は言った。

「舟形山。曳馬。そのほかにも功がある」

 泰満は少し迷った。

 だが、そのまま受け取ることはできなかった。

「恐れながら御屋形様」

「何だ」

「泰以叔父の軍功と、私への御沙汰とは、できましたら分けてお考えいただきたく存じます」

 一瞬。

 時茂が僅かに口元を緩めた。

 長池も顔を伏せた。

 泰満が二人を見る。

「何かございましたか」

「いや」

 時茂が答えた。

「泰以兄上も、まったく同じことを申すだろうと思っただけだ」

 氏広も頷いた。

「御安心ください。泰以殿の功だけで紀伊守殿を推したのではございませぬ」

「ならば」

「ただし」

 氏広が続ける。

「朝比奈泰以殿ほど御先代へ仕えた者の養子を、泰以殿自身が必要と考えた城へ置く」

 泰満は聞いている。

「それは周囲を納得させる一つの理由にはなります」

 そこで泰満にも分かった。

 誰を城主に置くのか。

 それは、その本人だけを見て決められるものではない。

 家がある。

 縁がある。

 これまで積み重ねた功がある。

 そして、周囲が納得するだけの理由も必要になる。

 小瀬戸で村同士の話をまとめる時と、規模が違うだけなのかもしれなかった。

「承知いたしました」

 氏輝が泰満を見る。

「それに」

「はっ」

「先日、そなたは申したな」

 泰満には、すぐ分かった。

 氏親の葬儀の後。

 新しい当主となった氏輝の前で、自分が誓った言葉だった。

「御先代へお仕えしたものと変わらず、わしに奉公すると」

「はい。申し上げました」

「ならば」

 氏輝は静かに言った。

「仕事を任せる」

 泰満は一瞬黙った。

 氏親ではない。

 目の前にいるのは、その後を継いだ氏輝だ。

 自分はこの男へ仕えると、自分で決めた。

 ならば、その主から与えられた仕事を受ける。

 泰満は深く頭を下げた。

「御屋形様の御命、謹んでお受けいたします」

「うむ」

「小瀬戸より宇津山へ移り、宇津山城ならびにその周辺の仕置、しかとお預かりいたします」

「頼むぞ、紀伊守」

「はっ」

 寿桂尼も泰満へ声を掛けた。

「泰以殿が最初に目を付け、御先代が整えさせた城です」

「はい」

「大切になさい」

 泰満は寿桂尼へ向き直り、改めて頭を下げた。

「肝に銘じます」

 寿桂尼は少し間を置いた。

「氏輝を頼みますよ」

 先ほどとは違う言葉だった。

 城の話ではない。

 主君の母として。

 氏親亡き後の今川家を支える者として。

 泰満は深く頭を下げた。

「はっ。微力を尽くしてお仕えいたします」

     ◇

 評定を終えた後。

 泰満は長池に呼び止められた。

「紀伊守殿」

「はい」

「宇津山への移りですが、明日すぐ家中を連れて来られては困りますぞ」

 泰満が少し笑った。

「私も、そこまで急ぐつもりはございませぬ」

「それならよろしい」

「いつ頃から引き継ぎを」

「まず一度、城へお越しください。今は小原親高殿が守備を預かっておりますので、そちらからも話を聞いていただきたい」

「小原殿が宇津山に?」

「はい。普請の間も城を守っていただいております。紀伊守殿が着任されるまでは、そのまま守備を続けていただくつもりです」

「そうでしたか。甲斐以来、しばらくお会いしておりませぬ」

「着任後も、引き継ぎが済むまでは小原殿に残っていただきます。城の造りも周辺の様子も、よく承知しておられますので」

「それはありがたい。小原殿から直接伺えるのであれば、心強うございます」

 泰満は少し考えた。

「城だけを見ればよろしいので?」

 長池はすぐ首を振った。

「城だけなら、今日にでもお渡しできます」

「やはり、その先がありますか」

「ございます」

「村」

「はい」

「道」

「はい」

「水」

「もちろん」

「船も」

「ございます」

「兵糧の置き場」

「それも」

「人足」

「それもです」

 泰満は思わず息を吐いた。

「どれほどございます」

「二年近く触っておりますので」

「聞かなければよかった」

「今からそれでは困ります」

 泰満も笑った。

 小瀬戸へ来た時も同じだった。

 城を預かると言われ、実際に行ってみれば、城だけを見ていればよい仕事ではなかった。

 田がある。

 水がある。

 道がある。

 村がある。

 寺がある。

 そこに暮らす人がいる。

 宇津山も同じなのだろう。

 いや。

 浜名湖と三河を抱える分、さらに多いのかもしれない。

「小瀬戸の仕事を整理しながら、何度か宇津山へ参ります」

「それがよろしいでしょう。いきなり全部を持って移る必要はございませぬ」

「まずは、長池殿が何を整えられたのか、小原殿がどのように守っておられるのか、見せていただきます」

「その後で」

 長池は言った。

「紀伊守殿が、どう使うかをお決めになればよろしい」

 泰満は頷いた。

 まだ自分の城ではない。

 だが、もうじき。

 自分が預かる場所になる。

「よろしくお願いいたします」

「こちらこそ」

     ◇

 小瀬戸へ帰ったのは、翌日の夕方だった。

 美代が出迎えた。

「お帰りなさいませ」

「ああ」

「御屋形様からのお召しは、何のお話でした」

 泰満は履物を脱ぎながら答えた。

「宇津山へ移ることになった」

 美代の動きが止まった。

「宇津山?」

「ああ」

「城の普請をしているという」

「その宇津山だ」

 二人は部屋へ入った。

 泰満が腰を下ろす。

「御屋形様から、小瀬戸より宇津山へ移り、城とその周辺を治めるよう仰せを受けた」

 美代も向かいへ座った。

「では」

 一度、泰満の顔を見る。

「紀伊守様が宇津山城主になられるのですね」

 改めて言われると、妙な感じがした。

「そういうことになる」

「おめでとうございます」

「めでたいのか」

「違うのですか」

「いや」

 泰満は少し考えた。

「たぶん、めでたいのだろう」

 美代が笑った。

「まだ御自分でも、よく分かっておられないのですね」

「今日の朝までは、小瀬戸へ戻ってくるつもりで駿府へ行ったからな」

「それが、帰ってみれば宇津山城主」

「ああ」

「紀伊守様らしいです」

「どこがだ」

「いつも先に仕事が決まって、それから考えておられます」

「それは、わしが決めているのではない」

「存じております」

 泰満も苦笑した。

「すぐに移るわけではない。長池殿から引き継ぐものが随分あるらしい」

「小瀬戸の方も整理が要りますね」

「ああ。誰を先に送る。誰を残す。どこまで家臣を動かす。孫太郎もいる」

 美代が尋ねた。

「私は、いつ頃宇津山へ参ればよろしいでしょう」

 泰満は美代を見る。

「行くつもりなのか」

 今度は美代が不思議そうな顔をした。

「紀伊守様が宇津山を居城となさるのでしょう」

「ああ」

「でしたら、私も参ります」

「だが、また住むところが変わるぞ」

「掛川から小瀬戸へ来た時にも変わったでしょう」

「そなたは平気だったのか」

「平気ではございませんでした」

 美代はあっさり答えた。

「ですが」

 少しだけ笑う。

「住めば、そこが家になります」

 泰満はしばらく美代を見た。

「強いな」

「紀伊守様よりは」

「そこまで言うか」

「少しだけです」

 泰満も笑った。

     ◇

 その夜。

 泰満は一人、宇津山へ移るために必要なものを書き出していた。

 家臣。

 兵。

 武具。

 馬。

 帳面。

 米。

 小瀬戸に残す仕事も整理しなければならない。

 長池から引き継ぐものは、それよりさらに多いという。

 誰を連れて最初に宇津山へ入る。

 誰を小瀬戸へ残して整理をさせる。

 美代と孫太郎は、どの段階で移す。

 考えていると、戸口に美代が現れた。

「まだお休みにならないのですか」

「少しだけだ。明日になると忘れそうなのでな」

「では」

 美代が近くへ座る。

「私も、忘れないうちに申し上げておいた方がよさそうですね」

 泰満が筆を止めた。

「何だ」

 美代は少しだけ間を置いた。

「子を授かったようです」

 泰満は美代を見る。

「……子?」

「はい」

「孫太郎の」

「弟か妹になります」

「もう分かるのか」

「そちらは、まだ分かりませぬ」

「いや、そうではなく」

 珍しく泰満が言葉を探した。

「本当に?」

「おそらく間違いないかと」

 泰満はしばらく黙っていた。

 今日一日で、宇津山へ移れと言われた。

 新しい城を預けられた。

 帰ってきたら、もう一人子ができるという。

「紀伊守様」

「何だ」

「困りましたか」

「いや」

 答えだけは早かった。

「困ってはおらぬ」

「では」

「一度に来すぎだと思っている」

 美代が笑った。

「それは私に言われましても」

「分かっておる」

「子にも言えませぬよ」

「それも分かっている」

 泰満は目の前の紙を見る。

 宇津山へ移すものを書き出した紙だった。

 その空いているところへ、何となく書いた。

 美代。

 孫太郎。

 そこで筆が止まる。

「何を書いておられるのです」

「宇津山へ連れていくものだ」

「私は物ではございませぬ」

「知っておる」

「孫太郎も」

「それも知っている」

 泰満は少し考えた。

 その下へ、もう一つ書く。

 子。

 美代が呆れたように笑った。

「まだ生まれてもおりませぬ」

「だが、連れていくだろう」

「私のお腹の中におりますから」

「なら、最初から一緒だな」

 紙を眺めているうちに。

 泰満自身もおかしくなって笑った。

     ◇

 翌朝。

 小瀬戸城から西を見ても、宇津山は見えなかった。

 山がある。

 道がある。

 その先に浜名湖がある。

 さらに西。

 泰満が以前、泰以と一度だけ立ち寄った城がある。

 あの頃の宇津山は、まだ小さかった。

 泰以は城から湖を眺め、この地はまだ使い切られていないと言った。

 舟形山が破られた時、その内側でもう一度受ける場所。

 浜名湖を見る場所。

 船を動かし、兵糧を運び、三河への備えとする場所。

 その言葉を、氏親は覚えていた。

 長池親能へ普請を命じた。

 長池は二年近くをかけて、城だけではなく、道も、水も、船を寄せる場所も整えた。

 氏親は、その完成を見ることなく世を去った。

 そして今。

 その後を継いだ氏輝が泰満へ命じた。

 小瀬戸より宇津山へ移れ。

 そこを居城とし。

 周辺を治めよ。

 泰満はまだ、新しくなった宇津山を見ていない。

 長池がどんな城を造ったのか。

 どこまでが自分の預かる土地になるのか。

 何人の兵を置くのか。

 そこに暮らす者たちが、自分をどう見るのか。

 何一つ分からない。

 だが。

 小瀬戸へ来た時も同じだった。

 最初から分かっていることなど、ほとんどなかった。

 土地を見る。

 人を見る。

 道を見る。

 水を見る。

 そして、分からなければ。

 見てから考える。

 泰以から何度も教えられた。

 氏親のもとでも、それを見た。

 小瀬戸で、自分自身も覚えた。

「若」

 後ろから彌太郎の声がした。

 泰満が振り返る。

「何だ」

「長池殿へ、いつ宇津山へ伺うか御返事を出しますか」

「ああ」

 泰満は頷いた。

「三日後に行くと伝えろ」

「承知しました」

「彌太郎」

「はい」

「宇津山は覚えているか」

「若と泰以様と参った時のことでございますか」

「ああ」

「もちろん」

「随分変わっておるらしいぞ」

 彌太郎が西を見る。

「では、見るのが楽しみでございますな」

「そうだな」

 泰満も、もう一度西を見た。

 朝比奈紀伊守泰満。

 二十五歳。

 妻、美代。

 嫡男、孫太郎。

 そして、まだ生まれていないもう一人の子。

 今川氏親の時代に養子となり。

 名を持ち。

 家臣を持ち。

 戦を知った。

 小瀬戸を預かり。

 土地を治め。

 妻を迎え。

 父になった。

 その氏親は、もういない。

 今の主は今川氏輝である。

 泰満は、その新しい主へ仕えると自分で決めた。

 そして今度は、その主の命を受けて浜名湖の西へ向かう。

 泰以が見つけ。

 氏親が造らせ。

 長池が形にし。

 氏輝が自分へ預けた城。

 宇津山。

 そこが、次の居城になる。

 小瀬戸での日々は終わる。

 だが、そこで覚えたものまで置いていくわけではない。

 人を見る。

 土地を見る。

 道を見る。

 水を見る。

 それを持って。

 次の土地へ行く。

 泰満は西を見た。

 まだ見えない宇津山が。

 その先で待っていた。



今川クロニクル『宇津山朝比奈記』

史料・創作メモは上記参照。

関連史跡・考察は作者noteに掲載しています。


本作『宇津山朝比奈記』は、noteのほか、小説家になろう・カクヨムでも連載しています。

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