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浮遊嬢は落ちぶれない  作者: 七色
第三章 爆愛嬢は止まらない
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第6話 爆愛嬢は止まらない

「ねえねえ、ゆうちゃんは自分以外も浮かせられるの?」

「え?」

 安アパートからでると、すぐにそんな話を切り出されて、一瞬ドキッとしてしまう。そりゃ、ほかの子の魔法とか気になるよね。私もみんながどんな魔法を使えるのかちょっと気になるし。

「え~っと……どうだろう? ダモを肩に乗せて飛んだことはあるけど、もしかしたら一緒に飛べるのかな?」

「じゃあじゃあ、()()()()()()()ことはできる?」

「え?」

 またすっとんきょうな声を出してしまった。メドモ……あの怪物を?

 自分以外を浮かせられるのか、という質問から一緒に飛びたいのかな、と私は勝手に予想してしまっていた。

「えーと……それは、どうだろう? あんな大きなの、飛ばせられるのかな? ……そもそも、どうして飛ばせたいのかな?」

「うーんとね、ちひろね! ()()()()()()()()()()なの!」

 これは困った。この子とんでもない子だ。メドモを飛ばす、という話からかなり飛躍し、かつ危険すぎる話題に脳みそがついていかない。

「あ~~~引かないで引かないで? ()()()()()()()()()()のが、大好きなの!」

 あんまり変わらないけど、という言葉はぐっと飲みこんだ。下手なことを言って険悪な雰囲気にはしたくなかった。

 飲み込んだ言葉の代わりに、私は次に浮かんだ疑問を投げかけてみる。

「今までも、ちひろちゃんの魔法で爆発させてきたんだよね? どうして、メドモを飛ばしたいにつながるのかな?」

「えっとねえっとね! 今までは、まわりを壊しすぎないように、ちっさい爆発を使ってメドモをやっつけてたの! でもね、ゆうちゃんがたかーいところまでメドモを飛ばせば、すっごくおっきな爆発を起こしてもいいと思わない?!」

 それをやると私ごと爆発させそうだけど……まあ、そこは年長者の私がなんとかすればいいか。なんでもかんでも否定してたら何をやるにも嫌になっちゃうかもしれないし。年下の少女による論理的な爆発計画を私はいったん受け入れることにした。

「それにねそれにね、()()()()()()()()()()()()()気がするんだ!」

「いつもはそんなに大きなメドモが出ないの?」

 今日はおっきなメドモが出る、という部分に少しだけ違和感を感じて問い返してみる。私は今まで学校の校舎よりも大きなメドモにしか遭遇したことがないから、大きいの尺度がわからない。

「うん! 今まではちっさい、大人と同じくらいの大きさとか、ちゅーくらいの、道に生えてる木とおんなじくらいの大きさのメドモが多かったんだ! でもねでもね、最近は見上げるほどおっきなメドモがね、ちょくちょく出てくるんだよ!」

 今までは、あんな大きな怪物じゃなかったのか……なんて運がないのだろう。()()()()()()()()()()に、最初から運なんてあるわけがないのだけれど、こんな時にも私は自分の運を呪ってしまう。いくら呪ったところで、何の意味だってないのだけれど。

「ねえねえ! 今一緒に飛べないか試してみようよ! 私も空、飛んでみたいよ!」

 ぎゅっと手を固く繋ぎなおし、突然ちひろちゃんは走り出す。わたしも手を引かれて小走りになった。

 「え、ちょちょ待……わ!」

 小さな段差をちひろちゃんがジャンプし、私はそれについていけず派手に転んでしまう。この転び方、今は痛くないけど、変身を解いたらめちゃくちゃ痛いやつだ。

 手をつないでいたちひろちゃんは手を離してちゃんと着地できたようだ。転んでしまって地面に伏している私を、ちひろちゃんが心配そうにのぞき込んでいた。

「ゆうちゃん、大丈夫? ごめんねごめんね、ゆうちゃんがね、一緒に飛ばしてくれると思ったんだけどね、やり方間違えちゃったみたい……」

「ううん、大丈夫だよ。魔法少女だもん。これくらいじゃあ、なんとも。それより、ちひろちゃんに怪我がなさそうでよかったよ。」

 事実、ダモが話していた通り、魔法少女に変身している今は傷どころか痛み一つない。いつもの姿に戻った時が怖いけれど。

「ゆうちゃん……ゆうちゃんはとっても優しいね! ちひろね ちひろね、ゆうちゃんのこと、好きになっちゃった!」

 そう言ってちひろちゃんは満面の笑みを浮かべる。釣られて私も笑みを浮かべた。

「アハハハハハハハ」「フフフフフフ」

 うれしくって、楽しくって。二人でひとしきり笑った後、ちひろちゃんが切りだした。

「ゆうちゃんは前どういう風に飛んでたの?」

「どういう風って、いわれても。飛ぼうと思ってふわ~って浮く感じかなぁ、こんな風に」

 私が目の前で低空飛行して見せる。ふわふわと浮かぶ私を見ると、チヒロちゃんは目を輝かせて手を鳴らした。

「わ~すごいすごい! ねえねえ、そのまま手をつないだらね、そしたらそしたら、一緒に飛べるんじゃないかな?」

「そうかも! じゃあ手を取ってくれる?」

 固く結んだ手を引き上げようとするも、そんなことをするまでもなく、ちひろちゃんの身体はふわりと浮かび上がっていた。ふわふわと浮かぶちひろちゃんは目を輝かせる。

「わぁ……」

「フフフ……じゃあ、このまま高いところまでいこっか」

「うん!」

 ふわふわと上昇し、街を見下ろすことができる高さまで飛ぶ。そのまま二人、笑いながら空を泳いでいく。ちひろちゃんの手を繋ぎ留め、決して手を離さないように。踊るように、駆けるように。無邪気に、無垢に。

 行きたい場所へ行きたいように、とはいかなくとも。二人一緒ならどこまで飛んだって楽しかった。

 そのとき、ちひろちゃんのもつ黄緑色のステッキが光り輝くのが見えた。

「ちひろちゃん、それ……」

 「ゆうちゃんゆうちゃん! あっちでメドモが出るよ! 急ご!」

 そのとき、ちひろちゃんも輝く魔法杖に気づいたようで、楽しそうに笑いかけてきた。

 何かを主張するようなその魔法杖が気になって私は思わずちひろちゃんに聞いてしまった。

「ちひろちゃん、その……子? はどういう子なの?」

「うんうん! この子はね、探査杖のアイミキミカちゃん! メドモがでると、どこにいるか教えてくれるの!」

 すごく便利な魔法だ。現役の頃はメドモ退治にものすごく貢献していたんだろう。なんて思うのはすこし不謹慎だろうか。

「教えてくれるっていうのは、なにかしゃべってくれるの?」

「ううんううん。キラキラ光るとね、どっちにいるのか、なんとな~くわかるの! 今までね、何度も何度も話しかけてみたんだけど、な~んにも答えてくれないの! でもねでもね、話しかけるとね、ふるふる~って震えるんだ!」

 なるほど、魔法杖と直接話すのは難しいんだ。でもまったくの無意味ってわけでもないみたい? わたしもミライちゃんに話しかけてみようかな?

 そんなことを考えながらちひろちゃんが教えてくれた方角へ飛んでいくと、黒く半透明の甲虫のようなメドモが見えてきた。

「あれは……」

「〇キブリだ!!」

 黒色といい、触角、甲虫特有の光沢といい、もう完全にそれにしか見えなかった。〇キブリを見るのは初めてではないが、あまりいい気分ではない。そんな嫌悪感を飲み込んで、ちひろちゃんのことを気にかけてみる。

「私は大丈夫だけど、ちひろちゃんは大丈夫?」

「うん! 私ね私ね! 〇キブリすきだよ!捕まえてお外に捨てるとね、ママが褒めてくれるの!」

 ネコか、この子は。そんなツッコミを心のうちにとどめて置き、ちひろちゃんと一緒に着地した。

「じゃあ、ちひろちゃんはまってて、私あれやっつけてくるから。」

「? 私も手伝うよ? っていうか、爆発させてくれないの?」

 ちひろちゃんに嫌な思いをさせたくなかったから私一人で戦おうと思っていたが、私が浮かせてちひろちゃんが爆発させるとか話してたのを忘れていた。忘れてただけだから、目をウルウルさせた悲しそうな顔でこちらを見つめてこないで?

「……じゃあ、なんとかあれを浮かせてみるからちひろちゃんが爆発させてね」

 なんとかメドモを浮かせつつ自分は爆破から逃れるイメージを固めて、半透明のメドモへ猛進する。すると、メドモもこちらに気づいたように、カサカサと突進してくる。家屋の屋根や道で足を器用に動かす姿に軽い嫌悪感を覚えながら、どんどん距離を縮めていく。

 激突する寸前で上昇し、メドモの触角にしがみつく。本物で触覚が細長いように、巨大なメドモの体の中でも、触角は成人男性の胴体くらいの太さで、なんとか抱きしめるようにしがみつくことができた。

「……やあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 しがみついたまま上空、まわりに何にもなくなるくらいまで飛んでいく。

「飛んでけええええぇぇぇぇぇ!!」

 さらに上へ投げるつもりで手を離すものの、魔法でちょっぴり浮かんだままだった。けど、これでいい。()()()()()()()()()()。ダモがいっていたように、都合よくメドモがふわふわと浮かんでいた。足をバタバタさせ、羽を羽ばたかせているが、空を進むことは()()()()()()()()()()()()()()

 急いでちひろちゃんのもとまで飛んでいくと、ちひろちゃんが笑っているのが見えた。

「ちひろちゃん!」

「ありがとうゆうちゃん! ド派手な爆発! 大好き(だ~いすき)だよ!!!」

 ちひろちゃんの体から愛が光となって溢れだす。赤い愛は黄緑のステッキに方向を示され、巨大なメドモへと向かっていく。

 次の瞬間。世界は赤一色になった。

 赤い愛情の大爆発が空を覆いつくす。爆風が地上まで届いて、ド派手な花火に気を取られていた意識を引き戻す。

「えへへ! ゆうちゃんゆうちゃん! どうどう? すごい爆発でしょ! さいこーでしょ!」

 たしかに、こんな爆発みたことがない。心の高鳴りが止まないし、尋常じゃない爽快感で頭がいっぱいになった。それはそれとして。爆発が大きすぎて、爆風でメドモの真下の住居が崩れているのが見えた。被害を抑えるために浮かしたけど、もっと浮かさないとダメだったなぁ……

 ほんっとに今日は楽しかった~!

 毎日毎日これくらい楽しければいいのに!

 しかも今日はこのあとママに会えるみたい!

 次回、浮遊嬢は落ちぶれない、第7話!

『被虐少女は憎まない』

 お楽しみに!

 それにね、すっごくすっごく感謝してるの!

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