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浮遊嬢は落ちぶれない  作者: 七色
第四章 活動嬢は負けられない
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第15話 救援の過去を忘れない

 両親が黒いバケモノに食べられちゃって、鈍色の魔法少女に助けてもらってから、いろいろあった気がする。

 わたしは、あの後どうしたんだっけ。

 両親は行方不明というあつかいになって、私はあの家にひとりで住むことになった。

 ふだん、ぶーぶー言いながらママのお手伝いをしていてよかった、なんて思ったのは、一人でご飯を作った時だったっけ。あの時も、それからも、たくさんケガして、ヤケドして、ご飯を作ってきたんだっけ。

 がんばっても、ママのおいしいご飯とはぜんぜんちがって。ママは自分で作った料理はおいしいでしょ?って手伝った日に言ってくれてたけど、あんなのうそっぱちだったんだって思い知らされたんだ。

 前まで小学校はすっごく楽しかった。たくさん友達がいて、みんなとたくさん遊んで、砂まみれになって帰ったっけ。

 親なし、なんて言われて学校でからかわれて……すごく悲しくて、辛くて、学校に行けなくなった。

 なんにもできなくなって、一人で公園のブランコにゆられていた。

 やけにうるさいカラスの声と、辺りには人のけはいが全くなくって、夕日がきれいだな~って思っていた。

 まるで、両親がいなくなった日のようだった。

 あの日、わたしはダモと出会ったんだ。

 

 ダモは、わたしのことを覚えていた。両親を助けてあげられなくってごめんなさい。って、あやまられて。でも、あの日のわたしは、怒ることなんてできなくって、ただただ泣いちゃったんだ。

 わたしが泣き止むまで、ずっとそばにいて、泣き疲れてうなだれている私に、ダモは言ったんだ。

 君さえよければ、魔法少女にならない? って。

 後から聞いた話だけれど、わたしがあの日魔法少女にならなかったら、そのままオリにのまれてメドモになっていたらしい。だから、一応ダモは命の恩人ってことになるんだと思う。

 今日までは、あの日消えてしまった方が楽だったのに、なんて思っていたけれど。こんな未来が待っていたのなら、あの日、ダモの手を取ったのはよかったのかもしれない。

 

 §


 パトロールが終わり、いつものように一人でホームに帰ってくる。いつも通り、わたしはひとり。そう思っていた。

 開いたドアが後ろで大きく音を立てて閉まる。その時、部屋の中から声が聞こえた。

「おいおい、帰ってきたのにただいまもなしか?」

「な、なんで、御剣さん?」

 わたしは床にひざをついて掃除をしている御剣さんにおどろいてなぜいるのか聞いてしまった。

「なんでって……今日の当番だからだろ? さっき決めたばっかりじゃんか」

 そうだった。これからは、ホームに人がいてくれるんだ……そう考えたしゅんかん、気はずかしさとうれしさがまじり合って、顔が熱くなった。

「た、ただいま! ……です」

「うん、おかえり」

 その一言に私はたえきれなくなっちゃって、ほっぺたをなみだが伝った。

「ちょっとちょっと、ボクのことも忘れないでよ~」

 ちょっとむくれたダモが床の上からこうぎしてきた。

「ダモモンのことも忘れてないって。落ち着いてよ」

 御剣さんはとても楽しそうに笑う。御剣さんは手に持っていた床拭きシートをゴミ箱へ捨てて、こちらに顔を向けた。

「ん、ちょうど掃除も終わったし、晩御飯にするか。何食べたい?」

「えーっと、私はなんでもいいです」

「遠慮は別にしなくていいぞ~。まあなんでもいいならアタシの好きなようにするけどさ」

 宿題やっとけよー。なんて言いながら、御剣さんはテキパキと夜ごはんの用意をしていく。ダモに手伝ってもらいながら、私が今日の分のおべんきょうをおわらせるころには、おいしそうなオムライスができていた。

「「いただきます」」

 お母さんが作るオムライスが大すきだったけれど、ひとりになってからはおいしいオムライスを食べられていなかった。御剣さんのオムライスはお母さんのものと味はちがったけれど、とってもおいしかった。

「おいしい……」

「それはよかった。ハートもうまく描けたし、満足満足」

 御剣さんは二人分のオムライスにケチャップでかわいいハートを描いていた。

「つくるんの描くハート、すごいかわいいね!」

「でしょ~?」

 うれしそうに笑う御剣さんを見ていたら、ゆうちゃんとの会話をちらりと思いだした。

「あの、その……ありがとうございます御剣さん」

「ん? なにが?」

「あ、えっと。ゆうちゃん……浮世さんとお話ししたんです。私の面倒みてくれるように、話し合ってくれてありがとうって。そしたら、浮世さんが、御剣さんが仕切ってくれて、面倒もみてくれて。だから、ちゃんとお礼しないとねって」

「あ~いいのいいの。アタシも、見てられなかっただけだから。小学生が一人暮らしとか……ちょっとありえないだろ。なんとかしないとって……そう思っただけだよ」

 何でもないようにいってみせる御剣さんがなんだかかっこよく見えて、わたしは顔を見られなくなった。


 三年前のあの日、目の前の女の子を助けることができなかった。

 もっと速く駆けつけていれば、もっと早くメドモを倒せていれば、この子の両親は消えることはなかった。

 だから、自分が責任を負うべきことなんだ。でも、自分には、活動嬢《元城ひとは》があの日の少女だと気づけなかった。そして、浮世さんにまで責任を被せてしまった。

 見てられなかっただけ、なんてものは嘘だった。あの時の責任を今になって突きつけられて呼吸ができなくなりそうだった。だから必死に空気を求めて責任を取ろうとしただけだったんだ。

 くよくよ悩んでいると、ダモが元城ちゃんに話しかけた。

「そういえば、今日のパトロール、どうだった? ゆうちゃんと楽しく話せた?」

「うん! すごく楽しかったよ! でも……」

 ダモの言葉に、元城ちゃんはなにごとか考え始めた。

「でも、どうしたの?」

「えっと、その、ふしぎなことがあって。」

 ダモの問いかけに、元城ちゃんは曖昧な答えを返した。

「不思議なこと?」

 その先が気になって促してみると、元城ちゃんはゆっくりと思い返しながら話し始めた。

「いつもは、でてくるメドモって一体ずつだったと思うんです。それなのに、今日は一度に三体くらいのメドモがでてきて……」

「三体!? ふ、二人は無事だった? 怪我とかしてない?!」

 元城ちゃんの言葉を聞いたダモが慌てふためいてしまった。

 見た限り、元城ちゃんに怪我はないようだし、ダモから聞いた話だと、浮世さんは怪我を負うことがない。

 ダモを落ち着かせてから、元城ちゃんにその時の状況を聞いてみることにした。

「ダモモン落ち着いて。元城ちゃん、そのメドモは大きかった?」

「いえ、木と同じくらいの大きさでした」

 中型か……気づけば口から洩れた声は、元城ちゃんを不安にさせてしまったらしく、顔色を曇らせてしまった。

 二人に考えていたことを告げる。

「明日、みんなに伝えよう。これからも複数体のメドモが出現するなら、現状の体制だと被害がでる」

「そうだね。つくるんや芦谷さんなら大丈夫だろうけど……二人から三人へ、人数を増やした方がいいかもしれない」

 何か今までにない異様なことが起きている。そんな予感がする。

 先の見えない不安が黒い渦を巻いていた。

 みんな、ひさしぶり。プロローグぶりかな?

 次回は第二回の魔法少女会議をするよ。二人でパトロールしてると危ないからね。

 それと、芦谷ちゃんとアタシができることについても話すよ。

 次回、浮遊嬢は落ちぶれない、第16話!

『危ないままではいられない』

 お楽しみに!

 ……だって、そうだった。

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