21章・クラスメイトに背を向けて−1
後方からは仲間の負傷に気が動転しながらも池田が魔法を放つ。
だが、それは空中で霧散した。
「え⁉︎私の、魔法が……?」
何が起きたのか理解できていたのは宗絃とクレアだけだ。
呆然とした表情を浮かべた池田を見た宗絃は状況が理解できていないであろう彼女に驚いた。
(ひょっとして魔法の支配権を知らない?)
膨大な魔力さえあれば高威力の魔法は放てるが、威力と支配権は別物である。
術者の支配権が弱ければ宗絃やクレアが展開する魔力の領域では魔法として存在を維持できず消えてしまうのだ。
魔力を周囲に展開して戦うのは魔人独特の戦法であるため人間と魔人の戦闘が無くなってから久しい現代にこの概念を知る者は魔法を研究している人間の中にすらおらず、池田が知る由もなかった。
「この距離で気を抜くでない。」
退屈そうに告げながらクレアが剣を振る。
「ふむ。今度は思い通りじゃったの。」
満足そうに言いながら向けられた視線の先では空中から血が滴り、不可視の刃の存在を示している。
宗絃が僅かに顔を背けると同時に池田の身体が右肩から斜め一直線に切断され、ずるりと落ちた。
クレアと池田の間にいた山田の上半身も同様にぼとりと落ちる。
「え?」
由里からは悲鳴よりも疑問の声が漏れ、すとんと腰が抜けた。
長谷川は震えて奥歯を鳴らすだけで言葉を出せない。
宗絃が無表情のまま一歩を踏み出すと伊藤は何とか、
「ま、待ってくれ。」
と声を出した。
「分かった。俺はもう国王の下で働くのは辞める。どこかで冒険者やって暮らす。だから、殺さないでくれ。」
宗絃は相変わらず無言のまま踵を返すと水鏡を解除して兜割を腰に戻し、闘技場の出口へと向かった。
残された三人の勇者と彼女の戦意も比例したらしく、クレアは宗絃同様に剣をしまうと宗絃の後を追った。
二人の後ろ姿が見えなくなり静まり返った闘技場には、我に返りパーティーメンバーの無惨な姿を見た長谷川が嘔吐する音だけが響いた。




