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第1話・チョコとラーメンとボッチ

  ――ウチは人知れず死んだらしい。


いや、人知れずどころか自分でも知らないうちに、だ。八白(やしろ)亜紀(あき)、年齢はごにょごにょ。短い生涯だった。



 今朝の事だ。布団に寝転がったままパソコンの電源をいれた。面白くもない起動音を聞きながらチョコを口に放り込み、でっかいあくびをひとつ。


 ちょちょ切れる涙を指でぬぐって、目をひらいたその時、なんとも表現のできない違和感がウチを襲った。


 いつのまにか、暗闇にフワフワと浮いていた。そこにはパソコンも机も、なんなら床すらもない。上も下もわからず重力も感じず、まったく方向感覚がつかめなかった。


「え、待って、なにこれ!?」


 夢? ……な訳ないよな。


「お~い……誰かいませんか~?」


 ウチの問いに答えるのは、シーンとした静寂だけだった。


 なんか、段々と怖くなってきた。真っ暗でなにも見えないし、身体は浮いているし。いや、もしかしたらこれ……落ちてるとか? 


「ちょっ、マジで怖いんだけど。どうなってんのよ」


 なにか潜んでいるかもしれないとか思ったら、さらに増す恐怖。変な汗がふき出て、首や背中を伝って流れていくのを感じる。



〔——落ち着きなさい、八白亜紀〕



 そんな時、どこからともなくハスキーがかった女の声が語りかけて来た。正面のようでもあるし、遥か遠くから語りかけているようでもあった。


「……誰? どこ? ……怖いって。なんなんここは?」

〔八白亜紀、山梨県在住。ひきこもりのボッチ。一応女性。独身。アラサー。恋人なし。趣味・アニメと漫画とボッチ。好きなもの・チョコとラーメンとボッチ〕

「コラ、個人情報保護法はどこにいった。」


 なんかもう『ふざけんな!』って気分が先に立って、『怖い』とかの感情も『ここどこ?』とかの疑問もどこかに吹き飛んでいった。吹き飛んで木端ミジンコだ。


「ったく、なんで知ってんのよ? だいたい一応女性ってなに、一応って。つか、ボッチ強調しすぎや。大事な事でもないのに三回も言いやがって。めっさえぐられたわ」 

〔それはさておき〕

「おくな!」

〔あなたはサクッと死にました。これから転生し、第二の人生を歩むことになります〕

「サクッと死にましたって、なんか軽くねぇか? それにトラックはどこに行ったんだよ、普通はひかれて転生するんじゃないの?」

〔今どきトラックなんて流行りませんから。スマートにいきましょう、スマートに。それに痛いですよ? ひかれると。グチャっと〕


 ……う、想像してしまった。


「んで、これって異世界転生のチュートリアルかなんかなん?」

(おおむ)ねその認識でよいでしょう。今、魔王の手により人類が存亡の危機にさらされています。あなたはこれより転生し、魔王軍と戦ってもらいます〕

「マジ? 魔王と戦うとか勇者転生じゃんか。こんな事、本当にあるなんて……なんかすげえ!」 


 いきなりテンションが爆上がりしてしまった。勇者属性なんて大当たりなのだから。

 

 ……ここからだ。ウチの人生はここから始まるんだ!


「さらば退屈な日々。待ってろ異世界! 超絶大勇者の爆誕やで!!」

〔どうどう、落ち着いてください。まずは最初に、受諾報酬としてマジックアイテムをひとつ与えましょう〕


 ウチのサブカル知識が警告している。『ここで武器や防具を貰うのは素人だ!』と。そして、『生きるためにはまず食料』とも告げている。


 それに、『どんな時でも食えるヤツが生き残る』って、“銀河鉄道に乗った黒い服のお姉さん”が言っていたしね。


「チョコとラーメンを無限にとりだせるカバンをくれ。ラーメンは飽きのこないアッサリ系がええな。塩……あ、鶏塩で頼むわ」

〔わかりました。意外と謙虚なのですね、見直しました。大抵の人は()()()()()()()()()()()()()()にしてくれと言うのに〕


 あ、言われてみればその通り。


「ウチは謙虚じゃないのでそっちにします。やっぱりなんでも取り……」

〔注文確定しました!〕


 ……そうっすか。仕事早え~。


「もうちょっと余裕持とうよ、人生無駄な時間は必要なんやで?」

〔それはさておき〕

「おくな!」

〔次に、付与される固有スキルです〕

「おお、きた! さすがにドキドキするな~。チートなの頼むよ、女神様!」


〔あなたには【ライズ(❲注❳)】のスキルが付与されます」


「は……? ライズ……化? なんぞそれ?」


 やばい、意味わからん。スキルってなんかこう『無限の超級魔力』とか『一振りで街が吹き飛ぶ』とか『どんな攻撃も一切通じない』とかそういうのじゃないのか?


〔これは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です〕


「……はい?」


 ――この女神、今なんて言った?


〔恐竜とお友達になれるのです。ちなみに超チートですよ。ヨカッタデスネ~!〕

「いや、そうじゃなくて、きょうりゅ…………きょ……えっ? ……なに?」

〔また、魔王軍は人間を警戒しています。あなた自身も人間から他の種族に転生してもらいます〕

「ちょっとまて、その流れだとウチも恐竜になるってことか? 美形エルフとは言わんからせめて人型にして! つか恐竜はないだろ、恐竜は。どこの世界線だよ。異世界転生が恐竜勇者って。聞いたことないっての」

〔では、恐竜たちを指揮し、地球を魔王軍の手から守って下さい!〕

「って、お~い。説明それだけ? ……マジで?」


 なにもなかった真っ暗闇に、前方から一筋の光が差し込んで来た。その光は段々大きくなり、あまりの眩しさに目をつむってしまった……。


 う~ん……ウチ、恐竜になってしまうのですか?


(注)

本作品の造語【Live-th:ライズ】について。

元は“共に”を意味する〔Live with:ライブ ウイズ〕から。

恐竜人を総称してライズと呼ぶ。

※Liveth(生きる)という単語そのものもありますが、本作では「寄り添う者」という意味で“造語”として使っています。



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表紙及び作中イラストはNovel AIで生成後、加筆修正して仕上げており、著作権は作者に帰属しています。


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― 新着の感想 ―
[一言] 読み易い事も然る事乍ら、色々な表現の仕方があって楽しくもあり感心してしまう作品でした。 この先も読むのが楽しみです。
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