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〔改訂版〕ジュラシック・テイル ~猫耳転生と恐竜少女~【異世界だと喜んでたのに実は白亜紀の地球でした!?】  作者: 黒猫ぽん!
world:01 猫耳転生とJ世代

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第9話・竜の刃

 ――ティラノが突然手を離した。 


 次の瞬間、ウチの体は再び激しい濁流に引きずり込まれる。


「なんで――!?」 


 必死で顔を水面に上げたその刹那。 巨大なワニの口が、すぐ目の前でガブリと空を噛み砕いた! 


 牙が水しぶきを爆散させ、一瞬前までウチの身体があった空間を文字通り食らい尽くした。凶悪な顎が閉じる音が、水中と空気の境目で不気味に響く。


「マジか……!」 


 水の中で冷や汗が噴き出すような恐怖。心臓が跳ね上がり、背筋が凍るのを感じていた。


 ティラノが手を離さなかったら、ウチは今頃、真っ二つだった。


 だが、恐怖はまだ終わっていない。ワニが、獲物を逃した怒りで再び向き直ってきた。


 しかし――


「ざけんじゃねぇぞコラ!」


 ドカッ!、という鈍い衝撃音と共に、完璧なまわし蹴りがワニの後頭部にクリティカルヒット。


「俺様の“ツレ”に手を出してんじゃねぇ!」


 ワニの巨体が派手に吹っ飛び、気絶したまま腹を見せてぷかぷかと流されて行った。 


 ……”ツレ“って言われるのは悪い気がしない。むしろボッチ殺しの嬉しい言葉だ。


 ティラノは軽くふざけたような口調だけど、あの瞬時の判断力と正確な行動は本物だ。


 野生の生き物は“生きる”ことに貪欲で敏感――それが彼女の本質なんだろう。


「少し休んでおけよ。あの白いのは任せておけって」


 彼女は立ち並ぶ木々の根元に行くと、木刀を頭上に構えて目を閉じた。


 足元からゆらゆらと熱気が立ち上がり、全身を包んでいく。


「これは……」

〔恐竜人(ライズ)の持つ、闘気(オーラ)ですね〕


 最初はうっすらとしていたが、みるみるうちに鮮明な形になっていった。


「え? あの形……ティラノサウルスじゃん」


 同時に、ポケットの中の約束珠が熱を帯びて輝き始める。


「——いくぜ! レックス・ブレード!!」


 カッと目を見開き、上段から一気に振り下ろす。木刀とは思えない凄まじい切れ味で、巨木をあっさりと切り倒した。


「なにこの威力……」


 闘気(オーラ)を纏った一撃。まさに竜の刃。


 近くにいるだけで危険な、凄まじい威力と反動。周囲の砂や小石を吹き飛ばし、有り余るエネルギーが竜巻となって吹き荒れた。


「これが女神さんの言っていたスキルなのか」

〔そうです。切り札になりうる能力ですよ!〕


 恐竜の幻を背負って技を放つ姿は、思わず見惚れるほどだった。技名は……まあ、ちょっと微妙だけど。


 彼女は切り倒した巨木を軽々と担ぎ、中州へと運んでいく。最初に『俺様一人で十分』と言っていた意味が、痛いほどわかった。


「これでいいかー?」

「お、落ちないでくださいね……」


 プチが心配そうにウチの腰に蔦をしっかり縛り、ベルノの分の蔦も用意してくれた。


 ……なんて頼もしい、素敵な娘たちなんだろう。


「ちゃっちゃと行ってこいヨ!」

「うん、ありがとう」


 丸太の上は転がり落ちそうに思っていたけど、意外と安定している。猫人のバランス感覚と、爪を少し引っ掛けるだけで体勢を整えられるのが大きい。


「……猫の爪って、めちゃくちゃ便利やな」 



♢



 みんなのおかげで、なんとかベルノを助け出すことができた。無事でよかった……本当に、よかった。


 ウチは結局、自力でなに一つ成し遂げられなかったけど――そんな反省は後でいい。今はただ、この子のことだけを考えよう。 


 白い柔らかな毛並み、しっぽの先の焦げ跡、そして金色の瞳。呼びかけにピクリと反応する耳。 


 ……間違いない。ウチの飼い猫、ベルノだ。


「幼いころに死に別れて、再会したのが白亜紀って……」


 腕の中で小さく震えるもふもふの体。川の水を浴びて冷え切っているし、いつからあんな場所に放置されていたのかわからない。とにかく体力が心配だ。


「この子もチョコで体力回復するかな?」

〔それはわかりません。さすがに猫まで想定していないので……〕

「っていうか、こんな弱肉強食の時代に子猫のまま転生させるなんて、バカ神はどこまでアホなんだよ」

〔バカなのかアホなのか、どちらかに統一してください〕 


 ……両方でいいだろ。


「ったくもう、擬人化するとか考えなかったのかよ」

〔ですがもし擬人化していたら、あなたの飼い猫と気がつかなかったのでは?〕


 言われてみればその通り。結果オーライ……と言いたいところだけど、素直に納得できるわけもない。


「ベルノ、ちょっと口開けて~」


 と、薬を飲ませる要領で口を開け、小さく割ったチョコを放り込んだ。……これで体力回復しなかったらどうしよう?


 しかし運命というものは、アッサリとウチを裏切ってくれる。悪い方にも、よ(・)い(・)方(・)に(・)も(・)。

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― 新着の感想 ―
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2023/10/27 13:13 退会済み
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