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19/22

少女?いえ、少年でした






 今日も良いお天気です!

 気温も湿度もちょうどいいですし、穏やかな日になりそうです。


「───んぅ、ふう」


 雲一つ内青空で伸びをするとはとても気持ちいいですね。

 ギルドの中には私の指定席があります。

 お昼時になるとお日様の光が入ってきてポカポカなんです。


 今日の依頼はもうありませんし、となると、私の仕事もありません。


 ギルド職員としてはどうかと思いますが、平和なのは良いことだと思います。

 いつもの冒険者の皆さんは森の中の魔物が急にいなくなったとことのでその調査に行っています。


 今までこんなことは無かったんですが······。

 森でなにが起きているのでしょう。少々不安ですね。


 ギルド長は、なにか大事があったとかでドルドの街の知り合いのとこに行ってますし、ギルドの中は私のみです。

 私を信頼して1人で任せてくれているのを喜ぶべきか、ギルド長の奔放癖を怒ったらいいのか分かりません。


 することも無いけど、たまにはこんなにのんびりとした日もいいな~と思う。


 ちょうどいい気温でうつらうつらとしていると、お客様が入ってきたので受付モードへ移行します。

 入ってきたのは珍しい髪の色をした、可愛らしいお嬢さんでした。


「いらっしゃいませ! ご要件は······えっと~お嬢さん? ここは遊びに来る場所じゃないよ?」


 キョロキョロしているし、間違えて入ってきちゃったのかな? 

 それにしても綺麗な髪の色です。

 見たことは無いですけど、あれが雪の色というものなんでしょうか。


 いいなぁ。私も自分の黄色い髪は嫌いじゃないけどこの子みたいな白い色もいいなと思います。

 ちょっぴり羨ましいです。


「訂正していただきたいことが2点あります。まず、僕は男です。なのでお嬢さんじゃありません。そして遊びに来たわけではなくて冒険者になりたくてお伺いしました」

「えっ、あ! し、失礼しました! 冒険者登録の方ですね! ······失礼ですがお歳をお聞きしても?」

「9歳です」

「きゅ、9歳ですか······? えっと~冒険者はとても危ないお仕事ですよ? もちろん何歳からでも登録は出来ますが······」

「問題ありません。冒険者登録をお願いします」

「か、かしこまりました」


 ふあ~びっくりした~。男の子だったとは思いもしませんでした。

 ······でも、9歳で冒険者って危なくないかな?

 私が新人だからそう思っているだけで、他のギルドでは普通に受け入れてるのかな……本人はなりたいって言ってるし、う~ん。


 しょうがないか。

 羊皮紙をお嬢さん······じゃなかった。男の子に渡しました。


「では、こちらに記入していただきたいのですが、代筆は必要ですか?」

「いえ、問題ありません。自分で書きます」


 ほわぁ、その歳で自分で書けるとは驚きですね。

 私は物覚えも悪かったから時間かかったんですよねぇ。


 ──と、感傷に浸っていたら書き終わったようです。


 そしてカードに血を1滴垂らしてもらい冒険者登録を完了しました。


「これで冒険者登録完了となります。クルルさんというのですね。冒険者ギルドやカードの説明などを聞きますか?」

「はい、お願いします」


 私は決めました。心の中ではクルルちゃんと呼ぼう。

 こんなに可愛い子にちゃん付けして呼ばなきゃ勿体ない気がする。


………………


…………


………


 さて、クルルちゃんに冒険者ギルドやカードの説明を終えました。

 今日のお仕事はこれで終わりですね。


「大変なんでしゅ、カミーラちゃん! ファ、ファ、ファファファ───!」 


 村長が青い顔をしてギルドに駆け込んできました。

 一体、どうしたと言うのでしょう。


「お、落ち着いてください村長! 何言ってるか意味不明です! ·········ただでさえ分かりずらいんだから」


 あ、ついつい本音が出てしまいました。

 誰も聞いてないことを願いましょう。


「しゅ、しゅまない。村の北側に大牙虎ファングタイガーが現れたんでしゅ。······それも、2体」

「え·········2体? 1体でも被害が大きいのに、それも2体も? ど、どうしましょう! 今ギルド長はドルドの街にいるし冒険者の皆さんは5人とも森に行っちゃってるし······!」


 どうしようどうしようどうしましょう!

 村長が言ったことはとても大変なことです。

 Cランクの魔物である大牙虎。

 Cランク冒険者でも5人パーティを組んで挑んでも、勝てるか勝てないかという瀬戸際です。


 今はいつもの5人もいないですし、どうしたらいいんでしょうか。

 ギルド長がいてくれれば、もしかしたらどうにかできたかもしれないのに······主にコネでですが······。


「いくらですか?」

「え?」


 反射的に呆けた声を出してしまった。

 クルルちゃんは今なんて言ったの?


「その依頼、僕が受けます。ギルドからはいくらでますか?」

「む、無理ですよ! 無駄です、無茶です、無謀です! 今さっき冒険者登録したばかりじゃないですか! 大牙虎ファングタイガーはCランクの魔物ですよ!?」


 そんなの自殺するようなものです。

 9歳の子供、ましてやさっき登録したばかりの子に無理に決まっています。

 ギルド職員として、そんな許可することができません。


「──だから、その魔物はいくらなんだ?」


 肌が細かい針に刺されるような錯覚に陥り、視界がグルリと反転しそうな不快感が体を突き抜けました。


「ひっ! え、えっと通常、大牙虎は1匹で金貨3枚です。今回は2体ですので金貨6枚となりますが、村の危機なのでもう少し色は付くと思います」


 先ほどの可愛らしいクルルちゃんではありません。


 体を踏んばります。これが子供が出せる殺気なんですか?

 もうしばらくは、立ち上がる事さえできなくなる程に足が震えちゃってます。


「もう一度言います。その依頼、僕が受けます」


 もしかしたらクルルちゃんは、それができるほどに強いのかもしれない。

 そんな小さな希望が湧いてきました。


「·········わかりました。村長さんもそれでいいですか?」

「あ、あぁ。それでいいでしゅよ」


 村長さんもクルルちゃんの殺気に当てられ朦朧としてます。

 1度だけ村長さんを睨みつけるとクルルちゃんはギルドの外へ向けて踵を返しました。


「それじゃ行ってきます。依頼の方お願いしますね」


 その、近所へ出掛けるかのような気軽な口調に再び恐怖しました。

 私と村長さんは首を縦に振ることしかできませんでした。



 ───それから数分後、血だらけのクルルちゃんが帰ってきたのでした。


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