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美咲のオヤジの配達記録簿  作者: 空雨 素志


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第五話 誕生日プレゼント



翌日。


圭司と美咲は、上野とともに高木の勤務先を訪れていた。


理由は一つだった。


あの荷物が、会社から送られたものだったからだ。


会社の中は、思っていたより静かだった。


高木が亡くなったことで、社員たちもどこか落ち着かない。


上野は、事務担当の女性に話を聞いた。


「高木さんから、荷物の配送を頼まれたことはありますか?」


女性は少し考えてから、


「あ……はい」


とうなずいた。


「私が頼まれました」


「いつ頃ですか?」


「事件の日です」


「どんな依頼でした?」


「高木さんから、自宅に荷物を送ってほしいと言われました」


「荷物の中身は?」


女性は答える。


「妹さんへの誕生日プレゼントだと言ってました」


圭司と美咲が顔を見合わせる。


「誕生日プレゼント?」


「はい」


「何だったか分かりますか?」


「箱の中身までは見てません。ただ、高木さんがそう言っていました」


上野は少し考える。


「なぜ、会社から自宅へ送ったんでしょう?」


女性も同じ疑問を感じたのか、首を傾げた。


「私も、その時ちょっと聞いたんです」


「何と?」


「『何でわざわざ自宅に送るんですか?』って」


「高木さんは?」


女性は高木との会話を思い出すように、ゆっくり話した。


「『最近、会社で物がなくなることが多いから、置いてたらなくなるかもしれない』って」


部屋の空気が少し変わった。


「会社で物がなくなる?」


上野が聞き返す。


「はい」


「どういう意味ですか?」


「私も、その時聞いたんです」


女性は少し困ったように笑う。


「『そうなんですか?』って」


「高木さんは何と?」


「それ以上は、あまり話してくれませんでした」


上野はメモを取る。


「物がなくなるというのは、具体的に何が?」


「分かりません。会社の備品とか、小さい物とか……」


「誰かが盗っていると思っていた?」


「そこまでは聞いてません」


女性は首を横に振った。


「ただ、高木さんが気にしていたのは覚えています」


---


その後、上野は社員たちからも話を聞いた。


高木は真面目だった。


仕事に対して厳しい。


そして、社内で不正やルール違反があれば、見過ごさないタイプだったという。


ただし――


「誰かと揉めていた」


「誰かを疑っていた」


という具体的な話は出てこない。


圭司は、少し離れたところで社員たちの様子を見ていた。


その中に、古川がいた。


昨日、話を聞いた男だった。


古川も圭司に気づいた。


軽く会釈する。


圭司も頭を下げた。


それだけだった。


上野は古川にも確認する。


「古川さん。高木さんが、最近会社で物がなくなると言っていたことについて、何か知っていますか?」


「……いえ」


古川は少し考えてから答えた。


「そういう話は、聞いたことありません」


「何か困っていた様子は?」


「特には……」


古川はそこで言葉を止めた。


「高木さんは、真面目な人でしたから」


それ以上は何も言わなかった。


---


会社を出ると、美咲が言った。


「誕生日プレゼントだったんだね」


「みたいだな」


「じゃあ、荷物を持っていった人は……」


美咲が考える。


「プレゼントを盗んだってこと?」


「今のところは、そう考えるしかない」


上野は答えた。


だが、圭司は納得していなかった。


高木は死んでいた。


その部屋から、誕生日プレゼントだけが消えた。


しかも、高木はその荷物を自宅へ送る理由として、


**会社で物がなくなるから**


と言っていた。


それは単なる用心だったのか。


それとも――


高木は会社の中で、何か別のものがなくなっていることを知っていたのか。


そして、そのことを知っている人間は、


会社の中に何人いるのか。


圭司は、古川が歩いていく後ろ姿を見つめた。


まだ、何も分からない。


ただ一つ。


この事件には、


高木の死とは別に、


**「なくなった物」を巡るもう一つの謎がある。**


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