第四話 荷物の送り主
司法解剖の結果が出た翌日。
上野は、圭司を警察署に呼んだ。
「昨日の荷物について、もう一度確認させてください」
「荷物?」
「高木さんの部屋に届けた箱です」
圭司はうなずいた。
「ああ」
「送り主は、分かりますか?」
「それが……」
圭司は少し考えた。
「俺が依頼を受けた時は、荷物そのものだけ渡されました。送り主の会社名までは、書いてたのかなぁ、覚えてない」
「伝票は?」
「俺が撮った配達写真に写ってるかもしれません」
上野は写真を確認する。
箱に貼られた伝票。
そこには、発送元の番号が記載されていた。
上野が読み上げる。
「……発送番号47-1」
圭司が首を傾げる。
「うーーん」
「わからないですか?」
「牧田に依頼を受けて、届けただけだからな」
上野は伝票を写真に収める。
「荷物の中身は?」
「知らない」
「箱の大きさは?」
「このくらい」
圭司が手で大きさを示す。
「重さは?」
「そんなに重くなかった。片手で持てるくらい」
上野は少し考える。
「調べる必要がありますね」
---
その日の午後。
上野と圭司と美咲は、久しぶりに牧田の会社を訪れていた。
牧田吾郎は営業部の席で資料を整理していた。
短い髪に髭。
相変わらず、仕事中でもどこか余裕がある。
「おう圭司どうした?あれ?もしかして上野刑事さん?お久しぶりです。」
上野は少し会釈して
「ご無沙汰してます。その節は」
美咲は膨れ顔で
「もう私もいるんですけど!」
牧田は笑いながら
「はいはい、相変わらず可愛いですね」
「で、お揃いでどうした?」
圭司は上野の顔を見て牧田を見た
「ちょっと聞きたいことがある」
「なんだ?」
圭司達は椅子に座った。
「この前、お前の会社から受けた仕事が、髙木って人の荷物だったんだ。」
牧田の表情が変わる。
「高木?」
「古いマンションで亡くなった人だ」
「……ああ」
牧田は少し黙った。
「そういうことか」
「知ってたのか?」
「ニュースでな」
牧田はパソコンを開く。
「ちょっと待ってくれ」
社内の配送記録を検索する。
しばらく画面を見ていた牧田が、指を止めた。
「あった」
「何だった?」
「発送元は株式会社ネクストウェーブだ」
「高木の会社だ」
「中身は?」
牧田は配送依頼の詳細を確認する。
「雑貨だな」
「何?」
「それが……」
牧田は画面をスクロールする。
「割れ物注意とかいてるな」
「何だろうカップとかか?」
圭司は身を乗り出す。
「高木が依頼?」
牧田は記録を確認する。
「ちょっと集荷してきた人間に聞いてみる」
牧田は電話をした。
「髙木さんじゃないぽいぞ。事務の女性だったみたいだ」
高木は、死ぬ直前に何かを自宅へ送らせていた。
そして、その荷物は圭司が午後六時に届けた。
だが――
司法解剖によれば、高木はその前に死亡している。
「上野刑事、これ」
そう言ってその資料を上野に渡した。
上野はうなずいた。
「ありがとうございます。」
圭司は立ち上がった。
その時、牧田がふと尋ねる。
「圭司」
「ん?」
「その荷物、高木の部屋からなくなってるんだよな?」
「ああ」
「じゃあ……」
牧田は少し考える。
「誰かが持っていったってことか」
圭司は答えなかった。
高木は死んでいた。
それなのに、部屋の中から男の声がした。
そして、届けた荷物は消えた。
圭司は、あの時の声を思い出す。
――そこに置いてください。
あの声は、高木ではなかった。
では、誰だったのか。
そして、その男はなぜ、荷物を持ち去ったのか。
事件は少しずつ、
**「殺したのは誰か」だけではなく、「荷物を持ち去ったのは誰か」**
という別の謎を見せ始めていた。




