第十話 ドラレコと新たな真実
「すぐに確認しましょう」
上野は迷うことなく手配をかけ、圭司のトラックからドライブレコーダーのSDカードを回収させた。
パソコンのモニターに映像が映し出される。
画面には停められたトラックのフロントガラス越しの風景。エンジン音が低く響き続けている。
圭司、美咲、そして上野の三人が食い入るように見つめていた。
事件の起きた時間帯を進んでいく。
「見つかりましたよ。ちょうどこの辺です」
上野が穏やかな声で指をさす
映像の端、一人の人物が歩いていく姿が捉えられていた。
「……あれは、吉田澪じゃないか?」
圭司が画面を指差す。
たしかに、画面に映っているのは入り口から研究室へ向かおうとしている吉田の姿だった。
彼女はその後、中庭で警備員を発見することになる。
「では、吉田はやはり中庭へ向かっていた。彼女の犯行ではないということになりますね」
上野が腕を組みながら呟いたその時だった。
画面のタイムスタンプが少し進んだ瞬間。
一人の人間が慌てて外階段へ飛び出し、隣の棟の屋上へと駆け上がっていくシルエットが映し出された。
「あっ――!」
美咲が、突然大きな声を上げて画面を指差した。
上野と圭司は驚いて振り返る。
「なんだ、美咲。どうしたんだ急に大きな声を出して」
「何かわかったんですか?」
「研究室に出入りしていて、天文サークルに所属している人!」
美咲は言った。
上野と圭司は小さくため息をして
「なんだよ、今はそんなことよりも.....」
食い気味に美咲は言う。
「違うッ、私、思い出した! あの時、大学の構内を歩いていて、屋上から降りて来てた人とぶつかった、この人よ。天文サークルに所属している人」
「なんだって……?」
圭司が身を乗り出す。
「本当ですか、美咲さん。その人物が誰だか分かったのですか?」
上野の表情が急に鋭さを帯びた。
「うん! その時は顔までは見えなかったし、騒々しかったから……甘い香水の匂いもしてた」
美咲は息を整え、確信に満ちた声でその名前を告げた。
美咲が指差したその名前を聞き、圭司と上野は息を呑んだ。
「――平川唯……!」
一連の事件の裏に隠されていた、本当の「影」の名前がここで初めて繋がった瞬間だった。
「……なるほど」
上野はメガネのブリッジを押し上げ、落ち着いたトーンながらも静かな闘志を宿した瞳で頷いた。
「平川唯、そして吉田澪……。二人の関係性、そして末吉教授を含めた人間関係について、早急に調べる必要がありますね」
上野は手元のファイルを開き、静かに指示を飛ばした。
「すぐに追加の捜査に入りましょう。吉田と平川、そして教授の足取りについて、徹底的に調べ上げるのです」
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