第九話 プラネタリウム
圭司と美咲が上野を訪ねる。
取調室のピリッとした空気から離れ、上野は一息ついていた。
「吉田は白状したのか?」圭司が覗き込む
上野は顔を上げ見慣れた二人にため息をつく
「黙ったままですよ。どうしたんですか?今日は」
「プラネタリウムを見せてもらえないかなぁお願い」
美咲は横から顔を出す
「俺も自分の荷物が気になってな、ちょっとだけお願い」
圭司は美咲をまねて見せた。
上野はさっきよりも深いため息をついた。
別の小部屋。
「少しだけですよ、本当に少しだけですからね」
上野は渋々といった様子で段ボール箱を開け、例のプラネタリウムを取り出した。
「わあ……これが、教授が抱えていた……」
美咲は目を輝かせた。上野が準備しているのをじっと見つめる。
カーテンをおろしプラネタリウムを動かした
「これは、凄いな」と圭司が見上げる
美咲は、少し眉間を寄せていた。
ふいに小さく声を上げた。「やっぱり....」
「圭司、上野さん、これ……星の並びがおかしいよ」
「おかしい、とは?」上野が穏やかな声で尋ねる。
「この砂時計みたいな形が『オリオン座』でしょ。で、そのすぐ隣にあるS字のカーブが『さそり座』なんだけど……。なんと、そのさそり座の横に『おとめ座』まで並んでるの!」
美咲は身を乗り出して説明を続けた。
「ギリシャ神話で、狩人のオリオンは毒サソリに刺されて死んじゃったから、神様が二つの星座を遠く離したんだって。だから、さそり座とオリオン座が同じ空に並ぶことは絶対にないの。ましてや、おとめ座までこんな不自然な位置に……これ、わざわざ星の位置を変えて作らせたものだわ」
美咲の言葉を聞いた圭司の脳裏に、先日大学で耳にした聞き込みの記憶がよみがえった。
「そういえば……大学で、学生たちが言っていたな。教授は生前、個人的に『星座』の配置について熱心に調べていたって。それに、天文サークルの部員が『サークルの中に教授の研究室の人間がいる』って言ってた。名前はたしか……って、言いかけたところで」
圭司はハッと手を打った。
「あーー! そういえば、あの日荷物を渡すとき、かすかに『甘い香水の匂い』がしていた」
「香水の匂い、ですか?」と上野が眉をひそめる。
「それに、ちょっと待ってくれ……。あの日俺、すぐにサインをもらって戻るつもりだったから、トラックのエンジンをかけっぱなしにしたまま停めていたんだ」
上野はその言葉にハッと目を見開いた。
「なるほど……。トラックのエンジン音がずっと響いていた。だから、物音や、転落した時の声がかき消されてしまい、警備員が発見するまで時間が遅れたのかもしれませんね」
「それもあるんだけど……」圭司はさらに重要なことに気づき、声を強めた。
「俺のトラックには、『ドライブレコーダー』がついている。エンジンをかけてたからあの時間の周辺を映しているかもしれない……!」
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