↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美咲のオヤジの配達記録簿  作者: 空雨 素志


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/48

第十二話 二つの真相


達夫が目を覚まし色々なことが分かった、


病院から戻って数日後、圭司と美咲は、上野と国東博史のことについて調べた資料を見ていた


---


国東博史。


以前、東央精密に勤めていた。


しかし、その後、ディーラー側に引き抜かれた。


国東は東央精密にいた頃から、ある秘密を知っていた。


**欠陥のあるブレーキ部品。**


それは、以前問題になったものと同じだった。


国東は、その欠陥を知っていた。


そして、表には出さず、秘密裏に交換を進めていた。


ただし、その交換は正式なものではなかった。


達夫とは別に、欠陥部品の交換発注を出していた。


その発注に関わっていたのが、佐伯和也だった。


圭司が資料を見る。


「和也さんも、この交換に関わっていた?」


上野がうなずく。


「はい」


美咲が資料を指差す。


「だから和也さんは、交換された部品と、実際に交換されていない部品の違いを知っていた」


「そういうことです」


圭司は黙り込む。


---


国東は知っていた。


和也が達夫と仲が良かったことを。


だから恐れていた。


自分たちが秘密裏に行っていたことが、達夫に伝わることを。


そして、その秘密が外に漏れることを。


しかし、それだけではなかった。


国東は、和也が何かを残している可能性も恐れていた。


だから、和也の死後も、その動きを気にしていた。


そして七年後。


国東は再び同じことを始めようとしていた。


欠陥部品の問題を知りながら、同じように秘密裏に処理しようとしていた。


しかし――


それに気づいた人物がいた。


達夫だった。


---


達夫は国東に直接言った。


「俺は昔のことも全部知っている」


国東は動揺した。


さらに達夫は、


「証拠もある」


そう匂わせた。


だが、実際には、達夫は決定的な証拠を持っていなかった。


ただ、国東にプレッシャーをかけるための嘘だった。


国東は達夫を疑った。


**達夫は何を知っている?**


**どんな証拠を持っている?**


国東は達夫の動きを調べ始めた。


---


そして、和也の遺品が遼から美紀へ送られた。


国東は、そのことも知った。


さらに、その遺品が達夫の家に届く可能性がある。


それを恐れた。


もし和也が残した資料の中に、昔の欠陥ブレーキのことが残っていたら。


もし、秘密裏に行われた交換発注の記録が残っていたら。


自分の過去と現在の不正が、すべてつながってしまう。


国東にとって、それだけは避けなければならなかった。


---


美咲が言う。


「だから、遺品を返したんだ」


圭司が頷く


「そう」


美咲を見る。


「達夫さんが美紀さんに心配をかけたくないとこっそり返したんだ」


上野がうなずく。


「国東から遺品を守るためです」


圭司は達夫の言葉を思い出す。


――俺は、国東に調べられている。


達夫は気づいていた。


国東が自分を調べていることを。


そして、和也の遺品が狙われる可能性にも気づいていた。


だから、あえて自分の手元から遺品を遠ざけた。


遼のもとへ戻した。


**守るために。**


---


圭司は黙って資料を見る。


「達夫さんは、自分が疑われてもいいと思ったんだな」


美咲が答える。


「そうですね」


上野が続ける。


「そして、国東に『証拠を持っている』と思わせた、また繰り返さないために。」


「本当は持っていないのに」


「はい」


圭司が苦笑する。


「ずいぶん大胆な嘘だな」



---------


 そして、隆の誤解によって事件が起きた。


事件の数日前。


遼には、以前から気になっている少年がいた。


学校でいじめられていたところを、昔、助けてくれた少年。


それが、別府隆だった。


隆も、あの時自分を助けてくれた青年のことを覚えていた。


二人は少しずつ話すようになった。


そして、互いのことを知っていく。


遼が佐伯和也の息子であること。


隆が別府達夫の息子であること。


そして隆は、遼にあることを話した。


「父さんが……荷物を送り返した」


「荷物?」


「遼のお父さんの遺品」


遼は驚いた。


自分が美紀に送った和也の遺品。


それが、達夫によって送り返されていた。


遼は考えた。


なぜ達夫が送り返したのか。


何かを隠しているのか。


それとも、和也のことを何か知っているのか。


遼は、もう一度荷物を送った。


そして確かめようとした。


**本当に達夫が送り返しているのか。**


もし本当に達夫なら、


**なぜ、送り返すのか。**


もう一つ。


遼には、別府家へ行きたい理由があった。


母親――美紀を、一目見たかった。


---


事件当日。


隆は、達夫が国東に調べられていることを知った。


さらに、達夫が遺品を送り返していたことも知った。


隆は思った。


――父さんは、何か悪いことをしている。


国東に調べられている。


和也の遺品を送り返している。


何かを隠している。


隆は達夫に問い詰めた。


「なんで遺品を送り返したんだよ」


達夫は答えなかった。


「父さん、何を隠してるの?」


「隆には関係ない」


「関係あるだろ!」


二人の口論は激しくなった。


達夫も感情的になる。


そして――


つい手が出てしまった。


「……やめろ!」


達夫の手が隆の頬を打った。


その瞬間。


リビングの掃き出し窓から、遼が入ってきた。


遼は、隆が殴られたところを見ていた。


「何やってるんですか!」


達夫が振り向く。


遼は隆の前に立った。


「やめてください」


隆は動けなかった。


達夫と遼が向き合う。


そのときだった。


隆の手が、そばにあった置物に触れた。


「やめろ!」


遼が叫ぶ。


しかし、隆は動揺していた。


置物を手に取る。


そして――


投げた。


置物は達夫の頭に当たった。


「……っ」


達夫が倒れる。


置物は床に跳ね返り、そのまま開いていた掃き出し窓へ飛んでいった。


ガシャーン!


ガラスが割れる。


隆は呆然と立ち尽くした。


「父さん……?」


達夫は動かない。


そのとき――


遠くから車の音が聞こえてきた。


圭司たちの配送トラックだった。


遼が窓の外を見る。


そして隆を見る。


「隆……」


隆は震えている。


遼は言った。


「何も言わなくていいから」


「でも……」


「いいから!」


遼はその場から走り出した。


隆はその場に残った。


そして、圭司たちが到着する。


---


圭司が事件を振り返る。


遼が逃げた。


足を引きずっていた。


だから、誰もが遼が達夫を殴ったと思った。


しかし、実際には違った。


遼は達夫を止めようとしただけだった。


そして隆が、達夫を傷つけてしまった。


遼が逃げたのは、自分が犯人だからではない。


**隆を守るためだった。**


達夫も、隆を守るために何も言わなかった。


遼も、隆を守るために何も言わなかった。


そして隆は――


最後まで、自分が原因だと言えなかった。


---


圭司は思い返す


「だから、あの時……『わからない』と言ったんだな」


美咲が静かに言う。


「遼さんは、隆君を守ったんだね」


圭司は何も言わない。


事件の真相は、ようやく明らかになった。




夜。


いつもの居酒屋。


いつもの席。


圭司と美咲、そして上野が座っていた。


上野はすでにかなり酔っている。


「いやぁ……まったく、とんでもない事件でしたねぇ」


圭司が苦笑する。


「上野さん、もう飲みすぎですよ」


「いいんですよ。終わったんですから」


美咲が笑う。


「結局、誤解から始まった親子喧嘩みたいなものでしたね」


「まあな」


圭司がグラスを置く。


「でも、終わってみれば……誤解が解けてよかった」


上野が頷く。


「本当にそうですよ」


少し間があく。


そして上野が、ふと思い出したように言う。


「そう言えば……遼くんも一緒に暮らすみたいですよ」


美咲が顔を上げる。


「本当?」


「ええ。美紀さんと隆くんと一緒に」


圭司は少し笑った。


「別府遼になるのか」


美咲も笑う。


「そうなるのかな」


上野がグラスを持ち上げる。


「佐伯和也さんが望んでいたことですしね」


圭司は黙って頷く。


「……そうだな」


美咲が圭司を見る。


「これで、和也さんも安心したかな」


圭司は少しだけ笑う。


「きっとな」


店の中に、いつもの賑やかな声が響いている。


上野はまた酒を飲む。


「いやぁ……親子ってのは、難しいですねぇ」


圭司が笑う。


「酔っ払いが言うと、説得力ありますね」


「野上さん、ひどいなぁ」


美咲が笑う。


三人の笑い声が、店の中に響いた。


事件は終わった。


それぞれが抱えていた誤解も、少しずつ解けていった。


そして――


新しい家族の時間が、始まろうとしていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。