第八話 足跡
上野は、国東博史と別府達夫の関係を調べていた。
東央精密に関係していた人間。
別府家と付き合いのあった人物。
以前の取引先。
一人ずつ話を聞いていく。
そして、少しずつ見えてきた。
国東と達夫の間には、何かがある。
昔から、二人の間には確執のようなものがあったらしい。
「何か揉めたことがあるんですか?」
上野が聞いても、詳しいことを知る者はいなかった。
ただ、
「国東さんは、別府さんをかなり警戒していた」
「逆に、達夫さんも国東さんを信用していなかった」
そんな話が出てくる。
さらに上野は、国東が佐伯和也について調べていたことも突き止める。
和也が東央精密にいた頃のこと。
そして、達夫との関係。
国東は、和也と達夫について何かを調べていた。
上野は考える。
――国東は何を知りたい?
そしてもう一つ。
国東は、**達夫が何かを隠していることを知っていた。**
---
その頃。
圭司と美咲は、佐伯遼のアパートに配達にきていた。
「またこのアパートか」
トラックから荷物を出す
階段を登る人影、圭司は何気なく見る。
遼だった。
そして、ふと気づいた。
「……ん?」
「どうしたの?」
美咲が聞く。
圭司は遼の足元を見る。
遼は、歩くときにほんの少しだけ右足を引きずっていた。
「遼君!」
「はい?」
「足、どうした?」
遼は一瞬、足元を見る。
「……別に」
「そうか」
圭司はそれ以上言わなかった。
しかし、頭の中に何かが引っかかった。
――右足。
圭司は、あの日のことを思い出す。
ガラスが割れる音。
家の中。
そして、別府家から逃げていった男。
あの男も――
**少し足を引きずっていた。**
圭司の表情が変わる。
美咲が気づく。
「圭司?」
「……いや」
圭司は遼を見た。
遼は部屋の戻る。
圭司はその場では追及しなかった。
配達のあと、すぐに上野へ電話をかける。
「上野さん」
『どうした?』
「遼君のアリバイ、調べてもらえますか?」
電話の向こうが少し静かになる。
『……何か気づいたのか?』
圭司は黙っていた。
そして、小さく頷く。
「はい」
---
上野はすぐに遼の身辺を調べ始めた。
事件当日の行動。
立ち寄った場所。
周辺の防犯カメラ。
そして――
事件当日、別府家の近くにあるコンビニの防犯カメラに、遼の姿が映っていたことが分かった。
「……いたか」
上野が画面を見つめる。
事件が起きる前の時間。
遼は別府家の近くにいた。
上野はさらに調べる。
その中で、美咲の大学の友人からも話を聞くことになった。
「佐伯遼って人、知ってる?」
「知ってるよ」
「どんな人?」
友人は少し考えて答える。
「大学で見かけることあるし……」
「他には?」
「年下の男の子と、よく一緒にいるよ」
上野の表情が変わる。
「年下?」
「うん。結構仲良さそうだった」
上野は黙ってメモを取る。
――佐伯遼。
――事件当日、別府家の近く。
――逃げた男と同じ足の特徴。
――そして、年下の男の子とよく一緒にいる。
これまで別々だった情報が、少しずつ一本につながり始めていた。




