第七話 国東博史
上野は、一人で国東博史のもとを訪ねていた。
国東は落ち着いた様子で上野を迎えた。
「別府達夫さん、ご存知ですよね?」
「もちろんです。なんか、強盗に入られたとかで」
「はい。その件で、国東さんに話を聞きたいと思いまして」
上野は手帳を開いた。
「事件当日のアリバイを確認させてください」
「私はその日は、ずっと家にいましたよ」
「でも事件前に、別府家を訪ねていますよね?」
「ええ。ちょっと資料を取りに」
「何の資料か、お答えできますか?」
国東は少し間を置いた。
「いや、それはお答えできません。会社の内情に関わることなので」
上野は国東の顔を見る。
「東央精密で働いていたとか」
「はい」
「佐伯和也さん、知っていますよね?」
その名前を聞いた瞬間。
国東は唾を飲み込んだ。
そして、短く息を吐く。
「……知っています」
上野は、その反応を見逃さなかった。
「隆君が見ていたんですよ」
「な、何をですか?」
「いや、それは話せません。捜査情報なので」
国東は黙った。
上野はそれ以上追及せず、立ち上がった。
「今日はこれで」
「……はい」
上野は国東の家を出た。
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その頃。
圭司と美咲は、佐伯遼のアパートを訪ねていた。
圭司がチャイムを鳴らす。
しばらくして、ドアが開いた。
「はい……」
遼が顔を出す。
圭司は開口一番、言った。
「送り返されてないでしょ」
遼は少しだけ目を細めた。
「ええ、知ってますよ」
「ん?」
圭司が首を傾げる。
「何で?」
「だって、荷物返って来てないから」
「あ……」
圭司は一瞬黙り、それから苦笑した。
「ハハ、そうだよね」
遼が二人を見る。
「何か用ですか?」
圭司はポケットから写真を取り出した。
国東博史の写真だった。
「この人、来ませんでした?」
遼は写真を見る。
「いつですか?」
「……来たんですか?」
美咲が思わず聞き返す。
「来ましたよ」
「いつ?」
「え?」
遼は少し考えてから答えた。
「先日です。父さんの古い友人とかで」
圭司と美咲の表情が変わる。
「遺品を見せてくれと言われて……残ってるものは見せたんだけど」
「後は?」
「後は、別府家に送った後だったから」
「……送り返されて来た時?」
圭司が聞く。
「いや」
遼は首を横に振った。
「その前です」
圭司と美咲は顔を見合わせた。
国東は、別府家に資料を取りに行く前に、佐伯遼のもとを訪れていた。
そして、佐伯和也の遺品を見ていた。
「ありがとう」
圭司が言う。
二人は遼の部屋を後にした。
玄関を出ると、圭司はすぐにスマートフォンを取り出した。
上野に電話をかける。
「上野さん、今いいですか?」
『どうした?』
圭司は歩きながら言った。
「国東さん、別府家に行く前に、佐伯遼のところにも来てました」
電話の向こうで、上野が黙った。
「……何?」
「佐伯和也さんの遺品を見せてもらったそうです」
圭司は美咲を見る。
美咲も険しい表情をしていた。
「上野さん。国東さん、何か隠してるかもしれません」




