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美咲のオヤジの配達記録簿  作者: 空雨 素志


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第六話 遺品



午後。


圭司と美咲、そして上野は、再び別府家を訪れていた。


玄関で美紀が迎える。


「どうぞ。遺品なら、見てもらって大丈夫です」


「ありがとうございます」


美咲が頭を下げる。


四人は居間に入り、テーブルの上に佐伯和也の遺品を並べていく。


古い写真。


手紙。


時計。


小さな置物。


美紀が一つ一つ手に取っていく。


「これは……昔、和也さんと旅行したときのものです」


「これも?」


「ええ」


そこにあるのは、どれも美紀と和也の思い出の品だった。


圭司は一つ一つ確認しながら、首をひねる。


「……特に怪しいものはないですね」


「そうですね」


美咲も写真を確認する。


「今のところ、犯人が欲しがりそうなものは……」


そのときだった。


美紀が一枚の写真を手に取った。


「……あ」


少しだけ表情が変わる。


「懐かしい」


写真には、東央精密の建物を背景に、何人かの社員が写っていた。


その中に若い頃の佐伯和也もいる。


美紀は写真を眺めながら、ふと何かに気づいたように指を止めた。


「あ、この人」


和也の隣に立つ男を指差す。


「元、東央精密の社員だった人」


圭司と美咲が顔を上げる。


「この人が?」


「はい。今は、達夫さんと一緒に働いている...」


上野も写真を覗き込む。


「誰ですか?」


美紀は写真を見つめる。


「名前は……」


そのとき、横から声がした。


「国東さんだよ、母さん」


隆だった。


いつの間にか、後ろから写真を覗き込んでいた。


「このあいだ来た、国東さん」


「そうそう」


美紀も思い出したように頷く。


「このあいだ、達夫さんに言われたとかで、資料を取りに来た国東さん」


美咲と圭司が顔を見合わせる。


「元東央精密の……国東」


上野が写真を見ながら言った。


「何を取りに来たか、知りませんか?」


美紀は首を横に振る。


「わかりません」


「資料……」


美咲が呟く。


そのとき、隆が写真をもう一度覗き込んだ。


「そうよ……」


美紀が別の部分を指差した。


「そう、これ。隆君の本当のお母さんよ」


写真には、和也と国東の後ろで笑っている女性が写っていた。


隆の視線が止まる。


「……母さん?」


「うん」


美紀が静かに答える。


「失礼ですが」


上野が写真を見たまま尋ねた。


「達夫さんの前妻も、東央精密に?」


「はい」


美紀は頷いた。


「でも、隆君が五歳の時に亡くなったみたいです」


圭司は黙って写真を見つめた。


佐伯和也。


別府達夫の前妻。


そして、元東央精密社員の国東。


一枚の写真の中に、三人がつながっている。


しかも、国東は最近、達夫の指示で別府家を訪れ、資料を持ち出している。


偶然。


そう考えるには、少し重なりすぎていた。


そのとき、隆が口を開いた。


「国東さん……」


三人が隆を見る。


「なんか、父さんのことを調べてたみたいでした」


「……達夫さんを?」


美咲が聞き返す。


「うん」


隆は写真を見ながら答えた。


「何を調べてたのかは知らないけど……父さんのこと、いろいろ聞いてきました」


圭司と美咲、そして上野は顔を見合わせた。


圭司が立ち上がる。


「……国東さんを調べる必要がありますね」


上野も頷く。


「そうだな」


美咲は写真をもう一度見た。


東央精密。


佐伯和也。


国東。


そして別府達夫。


それぞれが、どこまでつながっているのか。


三人は別府家を後にした。


玄関を出たところで、圭司が振り返る。


「美咲」


「うん?」


「国東って男……ちょっと気になるな」


美咲は頷いた。


「私も」


そして三人は、国東という男を調べ始めることになる。


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