第四話 荷物の中身
救急隊員が達夫を病院へ運び出したあとも、別府家には重い空気が残っていた。
割れたガラスが床に散らばっている。
中では現場検証が始まろうとしている。
美紀は、圭司から渡された荷物を手にしたまま、立ち尽くしていた。
上野刑事が静かに声をかける。
「お邪魔じゃなかったら、もう少し話を聞かせてもらってもいいですか?」
美紀は少し迷ったあと、頷いた。
「……はい」
圭司と美咲、上野は美紀と一緒に部屋へ入った。
隆も、その場に残っている。
美紀はテーブルの上に荷物を置いた。
「これ……」
箱を開ける。
中身を見た瞬間、美紀の顔が変わった。
「……何で?」
圭司と美咲が顔を見合わせる。
「どうしたんですか?」
美紀は箱の中を見つめたまま、呟いた。
「これは……元主人の遺品です」
「元主人?」
「はい」
美紀の声が少し震える。
「佐伯和也のものです」
圭司が驚いたように聞き返す。
「佐伯和也?」
「……はい」
美紀はしばらく黙っていた。
「死んだのも知らなかった……」
その言葉に、圭司と美咲は驚いた。
すると、横にいた隆が口を挟んだ。
「お父さんだよ」
「え?」
美紀が隆を見る。
「お父さんが送り返していた」
隆はもう一度言った。
「何で?」
美紀は顔をあげた。
上野は話を変えるように尋ねた。
「すいません、達夫さんのお仕事は?」
「ディーラーで役員をやってます」
「失礼ですが、元主人とは?」
「直人さん、あ、弟さんなんですけど……亡くなってから色々とあって、今の主人と……」
その言葉を聞いた圭司と美咲、そして上野は顔を見合わせた。
圭司が尋ねる。
「すいません」
「はい?」
「佐伯和也さん、もしかして東央精密に勤めていませんでした?」
美紀は驚いた。
「はい。どうしてそれを?」
圭司は美咲を見る。
美咲も圭司を見る。
「……やっぱり」
上野も二人の様子を見ていた。
美紀は続けた。
「隆君は、今の主人の子です」
隆は黙っている。
「遼もつれてきたかったんですが、お父さんが一人になると言って……」
圭司は、昨日会った遼の姿を思い出した。
上野が尋ねる。
「もう一つ聞いていいですか?」
「はい」
「達夫さんとはどこで?」
「前の主人の関係で、よくしてくれてたんです」
「達夫さんと和也さんは、面識は?」
「はい、あると思います」
「どうしてですか?」
「達夫さんが東央精密に発注してたので」
圭司と美咲は顔を見合わせた。
圭司が聞く。
「なんか……恨まれるようなこととか?」
美紀は少し考えた。
そして、静かに首を横に振った。
「……わかりません」
圭司は、それ以上何も言わなかった。
ただ、頭の中には一つの疑問が残った。
**なぜ、達夫は遼から送られてきた和也の遺品を、何度も送り返していたのか。**




