第六章 13 甘美なる金曜日同盟 1
『火木の一日五十人のおかず宣言、完全曜日交代制』
このダグラス(in湊)が行った方法により、家庭科室のパンクは未然に防がれ、調理研究クラブの兵站ラインは安定することが出来た。
火曜日には、一週間焦らしに焦らされたサッカー部が、各自実家から持参した「二合弱の白米タッパー」を手に狂喜乱舞ですた丼を食べる。
木曜日には、泥まみれのラグビー部が同じく白米タッパーを抱えてなだれ込み、家庭科部が下準備した具だくさんの熱々豚汁と豚の塩麴焼きに涙を流す。
これを週替わりに変更すれば、マンネリ化も防げるというものだ。
材料により、カレーやシチューに変更することもできる。
さて、男たちの胃袋を完全に掌握し、学園の裏の支配者となった調理研究クラブ。
しかし物語はここでは終わらない。
ダグラス(in湊)は「最も重要な同盟国」への見返りと、自軍の休息を忘れてはいなかった。
「……さて、白河隊長、サキ、阿久津。そして家庭科部のご令嬢たち。怒涛の火力戦闘または白刃戦闘(包丁)をよくぞ乗り切ってくれた」
金曜日の放課後、ダグラス(in湊)は家庭科室のホワイトボードの「金曜日」の欄に大きな文字をかき込んだ。
【金曜日合同製菓作戦】
「金曜日は、あの飢えた野獣(サッカー部・ラグビー部)どもの立ち入りを一切禁ずる。……これより、我が部と我が部の兵站を支えてくれた家庭科部による、至高のお菓子作り大会を開催する!」
「「「キャ―――ッ!! 待ってました!! 」」」
家庭科室に、女子部員たちの黄色い歓声が爆発した。
此処までの道程は簡単では無かった。
このプロジェクトは今や学園の新たな風物詩となり、学園の正式なインフラである「食堂・購買部」との公式コラボレーションプロジェクト――名付けて『学園胃袋適正化計画』である。
調理研究クラブがレシピと調理を提供し、購買部が火曜と木曜日の放課後用に食券を販売する。
「限定五十枚」売り上げの一部は学校側を通じて、調理クラブと下準備を支える家庭科部へ「公認の部費」として正当に還元される仕組みだ。
だが、ここで白河隊長が一つの懸念を口にした。
「ねぇ、藤代くん、一般販売にしたら肝心のサッカー部やラグビー部の子たちが食券を買えないかもしれないよ?」
「フン、そんな初歩的な兵站エラー、某が犯すと思うか?」
ダグラス(in湊)は不敵に笑い、購買部との間に交わした「特約」の書類を提示した。
「例えば火曜日の五十枚は、サッカー部の名簿の者のみが購入できるサッカー部専用枠にする。木曜日はラグビー部の名簿ののみだ。一般生徒への流出はありえない」
これにより、買い占めの内乱は未然に防がれシステムは最適化することになった。そして売り上げの一部が、彼らの製菓材料になったのだ。




