第六章 14 甘美なる金曜日同盟 2
火曜日はサッカー部の五十人、木曜日はラグビー部の五十人が昼休みに「指定席食券」を購入。
部活終わりに白米を詰めたタッパーを食堂へと持参する。
表の厨房で、五十人前の肉を豪快に炒め、熱々の豚汁を盛り付けるのは、設備も人員もそろった食堂のプロのスタッフたちとなった。
では、調理研究クラブの面々は一体何をしているのか?
彼らの戦場は、食堂のさらの奥にあるバックヤードになっていた。
「阿久津、ニンニクとショウガのすりおろしは均一かつ迅速に行え。繊維の残し方一つで食堂の巨大フライパンに投入した際の香りの広がりが変わるのだ。サキ、白河隊長、塩麴の調合率は大丈夫だな?……肉を柔らかくする酵素の働きを最大化させるんだ!!」
「「「うっす!!」」」
そう、ダグラス(in湊)たちは「味の心臓部」を握る影の支配者となっていた。食堂のスタッフがどれだけ大量の肉を炒めようとも、その肉を劇的に美味くする「特製タレ」や「付け込みの秘密」はすべて調理研究クラブがバックヤードで極秘に開発・仕込んだものなのだ。プロのマンパワーとクラブとの完璧な共同戦線であった。
この公式コラボにより、購買部の売り上げの一部は「公認の部費」として下準備を支える家庭科部と調理研究クラブへ正当に還元された。
そして、その「正当な部費」を堂々と受け取るのが、金曜日の放課後だった。
「……さて、白河隊長、サキ、阿久津。そして家庭科部のご令嬢(女子部員)たち。今週もバックヤードでの完璧な兵站補給、見事であったぞ」
こうして金曜日の放課後、ダグラス(in湊)は家庭科室のホワイトボードに、流麗な文字を大きく書き込み、お菓子作り大作戦が始まろうとしていた。
公式の部費を使い、我々のバックヤードを支えてくれた家庭科部への報酬として、最高級の製菓材料を調達できた。これは、各家庭から持ち寄ることは出来ないものばかりだ。
粉、砂糖、牛乳、ベーキングパウダー、卵……家庭で用意できるもののほかに、調理台には「発酵バター」「純生クリーム」「クーベルチュール・チョコレート」「純ココア」が並ぶ。
「任せて藤代くん!」
ダグラス(in湊)は材料をじっと見つめ、家庭科部女子たちが騒いでいたメニューに目を落とす。
「この持ち寄り品と家庭科室のオーブンで……これより『フォンダンショコラ作戦』を開始する」
「「「キャーッ!!作ろ―――っ!!」」」
家庭科室に、女子部員たちの黄色い歓声が上がった。
火曜・木曜の男臭い「戦場」から一転して、教室の中は、一瞬で甘美な香りに包まれるのである。
『不思議だね、ダグラス……作ったことのないものだけど、僕もわくわくしているよ』
(……いや、湊よ、某もだ。……しかしながら、家庭科部の女子どもが騒いでいた『フォンダン・ショコラ』って一体何だ?)
脳内の湊もダグラスも期待と不安で一杯である。




