黒い森 9
旦那様が不在の屋敷は、妙に広い。
ピカピカ、キラキラキラリーン。
だが、静まり返ってはいない。
部屋の中は、赤に紫に光り輝いている。
視線を向ける。どうも、魔剣と呪剣が語り合っているようだ。
「お母さまに会いたい?」
「聖剣さんのこと?」
「なかないで~」
ハルトとルティア、そしてレイが呪剣をなだめている。
多分、宝石の光具合からいって、魔剣も一緒になだめているのだろう。
「……そうだ! 呪剣さんに名前つけてあげる」
「……泣き止んだ」
「おなまえ~!」
ルティアが、唇に指を当てて考え始めた。
「ステラ、シャーロン、ダイアナ」
「……原初神代技術搭載武器型人格インストール魔導具零世代ということになるね!」
「それは、魔導具の型式でしょ! そもそも『げんしょ』とか『じんかくいんすとーる』って何なの!?」
「魔導具の命名には、決まった法則があるんだけど、千年よりも昔、神代に作られた現存する魔導具がないから、新たな名称を考えないとないんだよ……。ちなみに原初はオリジナルってこと。インストールは、あらかじめ作られた魔法回路に、人間的な思考回路を植え込んだ場合に使えそうな名前だよ! それを言うと、魔剣さんと聖剣さんは、神代技術搭載武器型人格インストール魔導具第一世代かな?」
「全くわからない……。あ、ユーステリアがいいかも」
「てりー!!」
二対一、呪剣の名称は決定したようだ。
だが、ハルトが言っているのは剣としての銘ではなく、魔導具の型式なのだから、魔導具学会で語られるのならそちらが正しいとも言える。
「お祖父様に相談しよ~」
ハルトは早速、録音の魔導具を取り出して話しかけ始めた。
「ハルト、私も使っていいかしら」
「お祖父様にお話しするの?」
「ええ――」
先日のベルティナの電撃婚約はもちろんのこと、当主選定の儀について私の口からも伝えておきたい。それに辺境伯領周辺の魔獣が激減し、代わりに黒い森から魔獣があふれて王都を目指していることについても父様の意見が聞きたい。
――この混乱の最中では、無事に届くという保証はないが。
『ピピ……ッ、ピピピピ!』
「ぴーちゃんが、もってくの?」
ぴーちゃんが魔導具をアームで掴んだ。
レイが口にしたことから推測するに、ぴーちゃんはロレンシア辺境伯家まで魔導具を届けるつもりなのだろう。
先日、傷だらけで帰ってきたぴーちゃんは、ハルトとレントン様の手によって磨き上げられた。
むしろ、今までよりもピカピカで太陽が当たるたびに輝いている。
「「ぴーちゃん……」」
「奥様、蜘蛛型魔導具を行かせれば、私の目で辺境伯領の状況も確認できます」
『ピピッ』
ぴーちゃんは、背中に録音魔導具の小包を背負い、旅立っていった。
「「ぴーちゃん、がんばってね!!」」
「いってらっしゃ~い!」
ハルトとルティア、レイは、いつまでも手を振っていた。





書籍1巻発売中&2巻8月1日発売