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死神騎士様との間に双子を授かりました【8月1日2巻発売決定&コミカライズ準備中】  作者: 氷雨そら


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円卓 3


「ベルティナ叔母さま……騎士を辞めちゃうの?」

「ハルト……」


 ハルトがベルティナのことを見上げた。

 彼は少しだけ眼帯に視線を向けてから、もう一度ベルティナを見つめる。


「私は弓使い。片目で魔獣を仕留めるのは難しいわ」

「……そうだね。叔母さまの言うとおり、不利だ」


 ハルトは考え込んでから、ベルティナに再び視線を向けた。


「紙とペン、ある?」

「……? ええ、借りてくるわ」


 ベルティナはしばらくすると紙とペン、そしてインクを借りて戻ってきた。

 ハルトはテーブルの上に紙を広げて、何かを書き始めた。


 ――いつの間にか、ハルトは初級文字どころか上級文字まで書けるようになっている。

 今描いているのは魔法回路のようだが難解で、どんな魔法が発動するのか全くわからない。


「宝物庫で見た壊れた神代技術搭載ガントレットボウガン第5世代改良型……魔法回路をできる限りたくさん持ってくるために諦めたけど」

「ガントレットボウガン? 護身用の?」

「うん、ガントレットボウガンは腕の長さしか引けないから弱い。あれは弱い魔獣相手の護身用だ。そして割れた部分から覗いていた魔法回路は、威力を補うのではなく、別の機能を付与していた」

「――力ではなくほかの機能を?」

「そもそも、叔母さま言ってたじゃない、魔獣を弱らせるのは私ですと。とどめを刺すのは近接武器型魔導具の役目だ」

「その通り、私たち弓使いは敵を弱らせることが使命。トーナメントの試合直前に姉様に告げた言葉。三年も前のことよく覚えていたわね」

「格好いいって思ったから」


 ハルトは書き上がった魔法回路をベルティナに見せた。

 彼女の表情は、わかりやすく変化した。


「まさか、魔力を使った自動照準機能!?」

「思い出せるだけ書いてみたけどやっぱりそうなんだね!! 実用可能だったかはわからない。失敗して、捨て置かれていたのかもしれないけど……」

「……これは魔法回路のごく一部ね」

「持ってこられなかったし、ちょっとしか見てないから……大事かなってとこだけ覚えてきたの」

「あなたは本当にすごいわね。これだけあれば既存の魔法回路と組み合わせて実現できそう」


 ベルティナは、しばらくの間何か考え込んでいたが、それから私たちを見つめ微笑んだ。


「――決断が早すぎたようね」

「叔母さま……一緒に研究しよう!」

「ええ! 魔導具の未来は明るいわ!」


 二人はガシリと手を握り合った。

 次第にハルトの顔が真っ赤になっていく。


「まだまだね」

「う~ん、本気で握ったのに全然敵わないや!」


 ハルトが挑んだのは、腹を割って話したい相手に挑む、ロレンシア辺境伯領恒例の力比べだったようだ。


「ふふ、あとで語り明かしましょう」

「……うん、語り明かそう。魔導具の未来を!」


 話は丸く収まったようだ。


「ベルティナ……」

「あら、姉様――そんな顔なさらないでください。騎士を辞めても魔導具師として王国の役に立つことはできるでしょう。そこまで悲観してはいませんでしたわ。でも、私は戦うことが好きですの」


 ベルティナはそう言って笑った。


「ベルティナは、小さい頃から、魔力が強く、負けず嫌いで、責任感が人一倍強かったものね」

「……まあ! ふふふ」

「何がおかしいの?」

「魔力が強いこと以外は、姉様には負けますわ」

「えっ……」

「確かに、エミラは負けず嫌いで、責任感が人一倍強いな」

「……旦那様」


 会議は終わったようだ。

 扉が開き、今の会話は旦那様に聞こえていたらしい。


「シノア・イースト卿! 私の前へ!」


 ベルティナが、イースト卿を呼んだ。

 イースト卿が、敬礼した。


「は、姫様!」

「ここは領外よ。――さて、あなたからの先日の申し出だけど」

「……」

「お受けするわ。退団は取り下げ、新たな武器型魔導具が開発できたら戦場に戻る。つまり、後継者を産むのは今しかない」

「……それはまた、豪快な理由ですね。しかし、とてもあなたらしい」


 イースト卿が、ベルティナの前にひざまずいた。


「あなたには二度と魔獣の爪を近づけない」

「不要よ、自分の身は自分で守るもの――でも、子どもが無事に授かったら二人で守ってあげましょう」


 ――まさかの電撃婚約である。


 イースト卿が、ベルティナのことを少なからず思っていることは、辺境伯領にいる頃から気がついてはいたが……。


 ――ベルティナが傷ついたとき、求婚していたのね。

 話の流れから言って、ベルティナは守られるだけなどお断りだとでも言ったのだろう。


「ジレジレ終了からの急展開?」

「だが、それはそれでいいって、どういう意味?」

「「えっ、イースト卿とベルティナ叔母さま、結婚するの!?」」


 ハルトの腰に下がった魔剣と、旦那様の腰に下がった聖剣はビカビカキラキラとはやし立てるように輝いている。

 魔剣と聖剣は本当に恋人や夫婦のロマンスが大好きだ。


「……とりあえず、陛下とロレンシア辺境伯にご報告しよう」


 怒濤の展開について行けないが、この場で一番落ち着いているのはスフィーダ卿に違いない。

 

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