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死神騎士様との間に双子を授かりました【8月1日2巻発売決定&コミカライズ準備中】  作者: 氷雨そら


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円卓 1


 旦那様の案内で、騎士団本部に向かう。

 今日の格好は、少しばかり大げさだと思っていたが、騎士団長様方とお会いするのであれば話が違う。

 私は心の中でアンナに感謝した。


「……あっ、べる~!」


 私と並んであるいていたレイが、一人駆け出していく。

 その先にいるのは、ベルセンヌ卿だ。


「べる~」


 レイはベルセンヌ卿に懐いている。


「ひのけんしゃん、こーりのけんしゃん!!」


 というよりも、火と氷の双剣に懐いているというほうが正確か。


 近衛騎士団長と訓練所の所長を兼務するベルセンヌ卿は多忙だが、仕事柄王都にいることが多い。

 一時期は修行だといって遠征に参加していたが……。


「……」


 旦那様の表情は少し複雑だ。

 彼は子煩悩ではあるが、高位魔獣との戦いのためずっと屋敷にいることはできない。

 自分は帰ってきたときに、人見知りされるのに――という感情が透けて見える。


 だが、ベルセンヌ卿の元に行こうとしていたレイは、視線を上に向けた瞬間、身動きを止めた。


「おとうしゃま!」


 レイは回れ右して、旦那様の足にしがみついた。


「おっきいの!!」


 やはり、レイがいざというときに頼るのは旦那様のようだ。

 旦那様は、レイを抱き上げた。

 レイはプルプルと小動物のように震えながら、旦那様に抱きついた。


「おや、怖がらせてしまったようだな」


 レイが怖がったのは、第三騎士団長ハロルド・スフィーダ卿だ。

 筋骨隆々で長身の彼は、まだ小さいレイにとって山のように大きく見えたことだろう。


 騎士団長の中で最年長である彼は、面倒見が良く子ども好きなのだが……。


「スフィーダ卿! お久しぶりです!」

「ハルト! 大きくなったな!」


 ハルトが駆け寄ると、彼はいともたやすく持ち上げた。

 そして彼は、表情を改めた。


「フィアーゼ侯爵夫人、お久しぶりです」

「スフィーダ卿、ご無沙汰しております」

「……呪剣を手に入れたそうですね」

「……すでにご存じだったのですね」

「我が、第三騎士団は竜との因縁が深いものですから」


 そういえば、第三騎士団の団旗は竜とそれを貫く槍だ。

 逸話についても伝わっているのかもしれない。


「こちらへどうぞ」


 ベルセンヌ卿が先導する。案内された先は会議室だった。


 室内には円卓が置かれている。

 すでに、騎士団長様たちは勢揃いしていた。


 子どもたちと私も席に案内される。

 挨拶だけだと思ったのに、会議室に案内されるなんて。騎士団長様たちの会話に混ざってしまっていいのだろうか。


「旦那様、私たちはご挨拶だけして……」


 旦那様は円卓の上に広げられた地図に厳しい視線を向けた。

 街道を中心に王都からロレンシア辺境伯領までが描かれた地図だ。


 騎士団長様たちが揃って立ち上がった。

 彼らは優雅に挨拶をする。


「お久しぶりです夫人」


 黒髪に長髪、紫色の瞳をしたラペルトリーゼ卿。

 彼は優れた遠距離魔導具の使い手でもある。


「ベルティナ・ロレンシア殿については、守り切れなかったことお詫び申し上げます」

「いいえ、妹は騎士です。誰のせいでもありません」

「……ですが」


 そのとき、会議室の扉がノックされた。


「どうぞ」

「……失礼いたします。皆様お揃いとのことで、退団の挨拶をしに参りました。姉様もいらっしゃったのですね」


 入ってきたのは、妹のベルティナだった。


 淡い金色の髪は肩まで伸びて、以前よりも麗しい印象になっている。

 だが、それよりもまず視線が向くのは左目を覆う黒い眼帯だ。


「ちょうどこのあと、フィアーゼ侯爵邸にお邪魔しようと思っていたんですよ。ちょうどよかった」

「……お見舞いに行ければ良かったのだけれど」

「小さな子どもがいるのですからお気遣いなく。この通り、生きておりますわ」


 優れた弓の使い手であったベルティナは、黒い森の掃討戦に参加して左目を負傷した。

 本来であれば、新人騎士たちが訓練のために戦うような森でだ。

 熟練の騎士である彼女が、弱い魔獣相手に後れを取るはずがない。


 連絡を受けたときも不思議に思ったが、彼女の姿を見ればさらに違和感が増していく……。


「それにしても、今の会話、聞こえておりましたよ」

「ベルティナ殿――」

「リーゼ卿、これは私の失態だと申し上げたはずです」


 そう言って、ベルティナは微笑んだ。

 その笑みは、不思議なことに以前よりさらに美しいのだった。


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