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死神騎士様との間に双子を授かりました【8月1日2巻発売決定&コミカライズ準備中】  作者: 氷雨そら


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騎士団訓練所 3


 騎士団訓練所は、活気に満ちていた。

 ウィンブルー王国には五つの騎士団があるが、騎士になるためにはこの訓練所に通う必要がある。

 憧れの騎士になるために、誰もが真剣に訓練に取り組んでいるのだ。


「「わわ……」」


 ルティアとハルトは、目を輝かせている。


「こんなふうに訓練しているんだね」

「すごいね……みんな騎士になるために頑張っているんだ」


 騎士候補生には通いの者もいるが、ほとんどは寮生活を送っているという。

 こうして同期を作ることで、五つの騎士団の協力体制を維持しているのだ。


「「……お父さま!!」」


 ルティアとハルトの視線の先に、旦那様がいた。

 騎士候補生たちに指南しているのだろう。

 家にいるときに旦那様は、いつも笑みを浮かべている。

 だが、視線の先で剣を握り多数の騎士候補生たちに囲まれている旦那様は、厳しい表情を浮かべていた。


「「危ない!」」


 多数対一人。通常であれば不利な状況だ。

 候補生たちが一斉に旦那様に攻撃をしかける。


 しかし、旦那様がゆらりと剣を振れば、一つまた一つと候補生たちの剣が弾き飛ばされていく。


「「お父さま……すごく強い」」


 ハルトとルティアが、ベルセンヌ卿から本格的に剣を習い始めてから三年。

 ベルセンヌ卿が教えてくださったのは、王国流の基本の剣だ。

 旦那様は、ルティアとハルトに剣を教えることは少ない。


 ――自分の剣は、我流だからまずは基礎を教えてもらった方がいいだろう、と。


 だから、2人が知っているのは今でも、優しくて家の中では少し頼りない父親だけなのだ。


「お父さまって、本当に強いんだね……」

「うん、トーナメントでも強いって思ったけど……」


 ルティアとハルトの声は震えていた。

 現時点でも、ルティアとハルトは強い。それは、ベルセンヌ卿にすぐにでも騎士団訓練所に入れる実力があると言わしめるほどだ。


 訓練して強くなった今だからこそ、わかるのだろう。


 旦那様の剣筋は、まるでそれ自体が暴れているかのように荒々しく破壊的だ。

 それでいて風から生み出されたような剣の軌跡に、見惚れてしまうほど美しい。


「「綺麗だね……」」


 旦那様が手にしているのは、聖剣ではなく模擬剣だ。

 白銀に輝く刀身を持つ聖剣を振るったなら、どれほど美しいことだろう。


 最後の一本の剣が弾き飛ばされた。

 周囲の騎士候補生たちの息は、完全にあがっているが旦那様の呼吸は乱れてすらいない。

 圧倒的な実力差が、そこにはあった。


「……」


 旦那様は、本当にかっこよかった。

 凛々しさと美貌、そして強さを兼ね備えた第一騎士団長……魔力を持たず、容姿もごく平凡な私が彼の妻であることが今でも信じられない。


 それなのに、こちらに視線を向けた途端、彼はなんとも気まずそうな表情を浮かべた。


 ――旦那様は、戦っている姿を私たちに見せたくなかったのかもしれない。そんなことを、ふと思う。


「「お父さま!!」」


 止める間もなく、ルティアとハルトは旦那様の元へと駆け寄っていった。

 旦那様はようやくいつものような笑みを浮かべ、二人を抱き留めた。


 そして、私とレイにもいつものように笑いかける。


 ザワザワ――


 このざわめきを耳にするのは、初めてではない。

 そう、これは騎士団任命式の日……私に向けられた旦那様の笑みに対して騎士様たちが発したざわめきと同じ類いのものだ。


「旦那様、お疲れ様です。お仕事中に、ルティアとハルトが申し訳ありません」

「いや……君たちはどうしてここに?」

「お祖父様から許可証をいただいて、騎士団訓練所の見学に来たのですよ」

「ああ――ジェイル・イーストが試験を受けるのだったか……」


 旦那様は、しばし考え込んでから騎士候補生たちに視線を向けた。


「訓練は以上とする。このあとは各自、直属の上官の指示に従え」


 ほんの少しだけばらついた敬礼。

 正規の騎士たちは、敬礼一つでも少しの乱れもない。


 ――ここで訓練を受けて、彼らは本当の意味での騎士になっていくのだ。


「「お父さま、かっこよかったよ!」」

「君たちに褒められるとうれしいよ」

「私、お父さまみたいになる!」

「僕も……! お父さまみたいになる!」


 旦那様は軽く笑い、それから口を開いた。


「――騎士団長たちが全員揃っている。せっかくだから、挨拶しにいこう」

「全員揃っていらっしゃるのですか?」

「ああ、ジェイルの付き添いでイースト卿が来ているからな」


 視線を向ければ、ハルトの目がキラキラと輝いていた。

 騎士団長様たちの武器型魔導具が、気になっているのだろう。

 ルティアの目もキラキラ輝いている。

 今でも彼女は、自分の机に騎士団長様たちの姿絵を飾り、憧れの視線を向けているのだ。


「……エミラ」

「は、はい!」

「君はいつも綺麗だが、ひと目見てもう一度恋に落ちそうになった」

「えっ……!?」


 旦那様は自分で口にしておいて照れてしまったようだ。

 ルティアとハルトが口元をにやつかせてる。


「どう思う? ハル」

「もう魔剣さんに聞かなくてもわかるよね、ルティー」

「「クフフフ」」


 二人は私たちが仲が良いのが嬉しいようだ。


「おとうしゃま……抱っこ!」


 レイが両手を挙げて抱っこをねだる。


「ああ、おいで」


 旦那様がレイのことを抱き上げると、周囲からは再びかすかなざわめきが起きるのだった。


 

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