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1日目 けーこーとー

 残念ながらわたしが捕まって1日経った。ここで泊っているのか、誰も帰る気配がなかった。(いかずち)が帰れば、バグも治るかもしれなかったのに! いや、せめてドア向こうでもいいんだけど。



 何で雷、部屋の一角にトイレ作ってるのよ。仕切りはあるけど上から吊るして見えないようにしてるだけとか……、もうわたし対策として完璧じゃない! むぅ…。



「トイレ見つめてどうしたのよ」

「忌々しいなって」

「?あぁ。なるほど。そんな意図はないわよ」


 それだけで通じるのね。はぁ。



「で、あのざまなのは時短のため?」

「勿論」

「わよね」


 他を見てもその傾向が見て取れるもの。ご飯もサプリに野菜ジュース。それにゼリーか棒っていう、雑に済ませるセットみたいなもんだし。



「体に悪そう……」

「ちゃんとおにぎりも食べてるよ!」

「炭水化物じゃないの」


 おにぎりなんて。一応、中に入ってる具によったらたんぱく質、脂質を取れるけど……。だから何? っていう。



 しかもわざわざ言ってきたくせに手に持ってるのが自然解凍の焼きおにぎりって何なのよ! 何の解決にもならないじゃないの!



 はぁ。どーしようかしら。空を見ても青くない。研究室の天井があるだけ。



 …視界に輪入道がふわふわ浮きながら蛍光灯を確認してるのが入ってきた。天井付近の作業は浮いてたら強いよね。縦横無尽に張り巡らされてるコード類は全部輪入道が調整してるんだろうなぁ……。



「どのコードが何に繋がってるか把握してるの?」

「いや。そも繋がってないのもあると思う」

「仕事しろよ!?」


 そんなんしてるからぐっちゃぐちゃなのよ! 長さ足りないからって適当に延長コード連結しまくっちゃって!



「最悪、火事になるわよ」

「うちは電気を扱う研究室だぞ?」


 いや、鼻で笑うように言われても…。



「じゃあ、やりなさいよ」

「実験忙しい」

「蛍光灯を確認する余裕はあるのに!?」


 それならマジでコード片付けるほうがいいでしょ!? 



「コードは動いてる装置とも絡んでいるから面倒なんだ。蛍光灯はすぐだ。何より、写真撮るときに電気なかったら困るかもだろ?」


 写真? あ。実験器具とかのね。研究に魂捧げすぎよ! でも、それなら、



「あなた人魂みたいなの周りに漂わせてるわよね?それを明かりにすれば?」

「俺だけならいいが、教授や咲が必要としたら困るだろうが」

「確かにそう……なのかしら」

「そうなんだ」


 そうなのか。うん。イマイチ納得いかないけど、あそこまで言うんだから、そうなんでしょう。でも、ひとつ言わせて欲しい。何であんたそんな真面目に研究者してるの?



「輪入道なら輪入道らしく魂ぬいて行きなさいよ!」

「俺が抜かれちまったんだよ」


 研究にって? やかましいわよ。あぁ、もう。思わず声が出ちゃったじゃない。



「駄目だな。切れてる。あ、教授。蛍光灯の替えがなくなりました」

「了解。メリー」

「流れるように振ってくるわね!?」


 少しは罪悪感を抱きなさいよ!?



「抱かないよ?だって、こういう機会がないと君は外に出れないでしょ?」

「…確かに」


 悔しいけど。そうだ。適当にスマホに出られるとわたしの怪異である『メリーさんの電話』の始点が定まらない。通常だったら始点はわたしの気分でいい。……のだけど、バグってる今、適当だと始点は雷の真横になるかもしれない。



 いきなり「わたしメリーさん。貴方の横にいるの」とか許されない。余韻もくそもないもの。



「わかったわよ」

「ありがと。じゃあ、このカード使って。近所にあるから」

「場所指定!?」


 別にいいけど…。思いっきりポイントカードじゃない。破棄してやろうかしら。



『メリーさん。蛍光灯よろしく』


 答えるのは癪だから速攻で切ってやる。



 さて、何事もなくついたわね。蛍光灯……蛍光灯? え。めっちゃ種類あるわよね? どれなのかしら。聞く方が早いわね。



『わたしメリーさん。今、家電量販店ににいるの』

『FHF16』


 えぇ……。たぶん型番……よね? ググってみましょ。うん。あってるわね。



 型番だけ伝えてくるとかある? 酷くない? てか、かけた瞬間言ってくるって、分かってたんなら教えておきなさいよ! はぁ。



 えーと……同じ型番のんいっぱいあるじゃない! 電話するのも癪ね。一番安いのにしましょ! でも、位置が高い! 手が届かないわ! えぇっと人は……いた! 都合よく女の店員さんがすぐそばに居るわ!



「店員さん。わたし、メリーさん」

「あぁどうも。私は島津です」


 名乗られたわ。丁寧な店員さんね。…うん? 名乗ったのはわたしが名乗ったからじゃないかって? かもしれないわね。



「どうされましたか、お嬢さん?」


 ! わたしを速攻で迷子扱いしてこない。この時点で高評価ね。大抵の人はこっちから声をかけたら迷子扱いしてくるってのに。



「あれを取りたいのだけど、取れないの」

「承知いたしました。抱っこいたしますので、じっとしていてくださいね」


 抱っこ? あぁ、なるほど。取りたいって言ったから取らせてあげようって心意気ね! なんてすばらしい心意気。これは加点不可避ね。



 しかも、安定感がえぐいわね。わたしが怪異ってのもあるかもだけど、垂直にすくっと立ち上がったわよこの人。



「取れた!」

「では降ろしますね」


 やっぱり安定感が尋常じゃないわ。このまま何百回もこの運動を繰り返せそうなくらい!



「ありがとう!」

「いえいえ。あ、お待ちを。お嬢さん。失礼ですが、しっかり食べておられますか?いえ、持ち上げさせていただいた感じ、骨ばっているという感じはなかったですが…いえ、お嬢さんにはこれを言っても分からないかもですね。聞きたいのは一つです。ちゃんと食べていますか?」

「うん!大丈夫!心配してくれてありがと!」


 あの人、とっても優しいのね! 触っただけでわかるのは変態じゃないかって? 馬鹿ね。骨ばってるとかは極限までいけば見ただけでわかるわよ。そこまでじゃないにしても虐待かも? って思ってくれた人に対して言うことじゃないわ。



 レジに行くまでにお金とポイントカードを取り出して、レジで颯爽と提出。レジ袋ももらわずにシールを張ってもらっていざ!



『わたしメリーさん。今、買い物が終わったの』

『えーと、メリーさん。それでいいの?』

『え?』


 ……あ゛。やらかした。ちゃんと居場所を言わなきゃ駄目だったのに!?



『えーと、やり直していいかしら?』

『駄目。早く帰ってきて』


 くっ…。無視してもう一回かけ…あぁ駄目だ。わたしの本能が駄目って言ってる。どうしようもないわね。諦めて帰りましょう。くそぅ。次の機会はきっと……!






「おい、島津?何でクネクネしてるんだ?」

「え?いや、だって可愛い子がいたんですよ!そしてその子に合法的に触らせてもらえたんです!めっちゃ軽かったのが心配事項ですが、触感的に大丈夫という不思議な可愛い子だったんです!あー、手が幸せ……」

「お、おう。恍惚とした顔してんな。迷惑だからしゃきっとしてくれ」

「ふふふ……。大丈夫です!お客さんがいないことは確認しています!」

「後ろ」


 指に従って後ろを見る島津。無機質なレンズがじっと島津を見つめている。



「……助かりません?」

「|1週間何もないことを《犯罪がなければ自動削除》祈れ」

「ぴぇん」

「てか、お前、その子に警戒心抱かせるような真似してねぇよな?」

「勿論です!駄目ならしばいていただいてもいいですよ!」

「よし、なら見に行くか」


 バックヤードに行く二人。



「駄目じゃねぇか」

「ひぃん」


 何故か置いてあるハリセンの小気味いい音が部屋に響き渡った。

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