45話
『アダム・ニルバーナ・デイュオ』
唐突だが、こんな名前に聞き覚えはないだろうか。アダム・ニルバーナ・デイュオ(以後、アダム氏)は、今から1000年以上昔にいたと言われている“魔王”だ。
アダム氏は、初代魔王として世界中を混沌へと誘った。
初代魔王...かつて、最強とまで言われた初代勇者と一騎討ちをし、相討つ。だが、私はこの部分に疑問を感じていた。
当時の勇者パーティーは、勇者「エリュク・サンドロ」、賢者「サーラ・ギアス」、龍騎士「ルルイエ・ギアス」、そして最後に、狂戦士「ミカーラ・ホラステロ」だ。一般的な絵本や小説には前の三人しか書かれていないが、本当はもう一人いる。それが、狂戦士だ。
勇者は確かに強かったのだろう。
が、勇者パーティーが残した記録によると魔王城にたどり着きはしたが不意を突かれ、敢えなく殉職した、と書かれている。
だが、魔王を倒したのは勇者である。と、政府は発表している。はて、何故だろうか。
その謎の鍵を持っているのが、狂戦士だと私は考えた。
『狂戦士』...この適性職業自体は、たいして珍しい職業ではない。
が、それ故に疑問に思う。
だったら、何故パーティーに入れたのだろうか、と。
それは、もしかしたら規格外の強さを持っていたのではないか、と。
結論はまだ出ない。
この文を書いたことで、謎が更に深まったような気もする。
私は、考古学者。古き未知を考え、学ぶ者。
謎が有る限り、私はこの星の果て、ましてや異世界まででも、どこまでも、いつまでも追っかけようではないか。
我らが祖国、『ゼロ帝国』に永久の平和を願ってーーーー
カイン・ゼロ著 『未知の世界』より、一部を抜粋。
△▼
「...クハッ!」
「エリック...頼む、目を覚ましてくれっ!」
そろそろ俺の体力並びに魔力がヤバイんで...と、心の中で付け足しておく。
や、マジでそろそろヤバイんだけど...
ぶっ倒れても知らないよ?...あっ、アイテムが壊れない限り、試合は続くんだったか。今のうちに...
すす~っと魔道具に手を伸ばすアオト。その様子を見た観客は「正々堂々戦え!」だの「この卑怯者が!」とか「悔しかったらフードでも取って見なさいよ!顔面偏差値の違いをこの目に焼き付けておいてあげるから!」等、好き放題言われる始末である。
アオト、泣きそうである。
チクショーめ!勝ってるのは...俺なんだぞ!?なのに、なのに........
もう、いいかな。会場ごとぶっ壊しちゃおうかな。ふ、ふふっ、ふふふふふふふふふ。いいな。面白そうだ。
泣きそう........いや、既に暗黒面に堕ちている。ソレでも尚、エリックのことは離さない辺り、アオトの良心を感じた場面でもあった。もっとも、その事には誰一人として気づいていないようだが。
「ーーーーッ!!こ、こは...?」
「ふふふふふふふふーーーーぁ、エリック起きたの?それならさ~、ちょっと会場を観客ごとぶっ壊すから手伝ってくれない?」
寝起きでそうそうクレイジーな事を言われるエリックだが、観客達の反応を見て悟ったようだ。
「はぁ...悪いな、アオト。迷惑をかけたようだ」
「ふふふ、部屋を貸してくれてるからお返しみたいな物だよ~」
はたして、アオトはどこへ向かっているのだろうか。しゃべり方からとてつもない闇を感じる。
「続けて悪いんだがもう一つ、...負けるわけにはいかねぇんだよっ!!」
次の瞬間、エリックの周りを光の粒子が包み込む。
「...ん?これは?」
「ふふふふふ、“存在進化”ですよぉ~羨ましいですね~これで貴方も真の勇者ですね~」
エリックの頭の中に、直接流れ込んでくるような声が聞こえる。
____固有名詞:エリックの覚悟を読み取り成功
____“真の勇者”へ存在進化を検討、挑戦...
____失敗。再挑戦...
____失敗。
____外部からの接続を確認...
____固有名詞:◯ゐ♪ヵ¶‰∇∽の接続を確認
____固有名詞:◯ゐ♪ヵ¶‰∇∽より、
神の因子”を受託
「あっ、それ貰いますね~」
何処かのVIPルームより。
「........あっ、やっべ。盗られた。大丈夫かな?勇者君...」
____...受け取り失敗
「変わりにこっちあげますね~。なんか魔王とか邪神とか討伐したら貰っちゃってさー、あげますね~」
またまた何処かのVIPルームより。
「アオトの野郎...完全に楽しんでるよ...あれ?これ、アオトに存在進化されないよね?されたら詰むよ?」
____固有名詞:アオト・ホラステロより、
“勇者の証”を受託
____...受け取り成功。
“勇者の証”を使用し、再挑戦
____成功。“真ナル勇者”に進化完了。
称号『勇ある者』獲得。
...あっ、終わった。なんだか友人が存在進化してることろを見るのって感慨深いものがあるな。
エリックの周りを包んでいた光の粒子がエリックに取り込まれる。
会場は、突然の出来事に騒然としている。
が、誰かの発した一言が場を掻き回す。
「おっ、おい!あれって“存在進化”ってやつじゃないのか!?」
「...え!?存在進化って伝説じゃなかったの!?」
「おいおい、勇者の野郎遂にやりやがったよ!流石だぜ!」
...いいな~。なんでコイツら俺にだけ否定的なの?エリックめ...俺が代わりに勇者やろうかな。あれだろ?魔王を殺すだけでいいんだろ?よっしゃ任せろ。10秒で狩ってくるわ。
「じゃっ!ちょっと行ってくるね」
「あのさ...?友達がさ?せっかくなんだか強くなったんだからさ?もっと、ほら、喜ばない?」
あっ、忘れてた。俺も存在進化しておかなきゃ。
........あれ?俺って現種族なに?どんな存在に進化するわけ?不安だぁ...
あれだ。気にしたら負けだ。そもそも、存在進化しないと圧倒的に魔力が足りないからな。空を飛べないからね。
Lets 存在進化!
「...無視しないで?」
気にせず実行だ!
____固有名詞:アオト・ホラステロの
存在進化を実行します。
ま(以下略)何処かのVIPルームより。
「はいっ!詰んだーー!!イヴーー!逃げる準備!急いで!死んじゃう!!」
「ほラ、言ったでしょウ?...次のプランヨ。急ぐわヨ!」
____固有名詞:アオト・ホラステロの意思に
より、“神の因子”を使用。
____...成功。神の因子を取り込み、
“神化”に成功。
____“破壊神”に神化完了。
称号“管理者”、“破壊の権化”を獲得。
____これより、世界の理は
固有名詞:アオト・ホラステロには
通用しません。ご了承ください。
...あ"ぁ"~。........あれ?俺、神になってない?おいどうしたエリック?なんでそんなに怖い目で俺をみてるんだ?
ふと、急に静かになった周囲が気になり辺りを見てみる。
すると........
「なんで...全員気絶してんだ?」
あるぇー?おかしいな。俺は魔力を回復するためだけに存在進化したのに。なにか恐れられる、ましてや気絶させるようなことなんかしてないのになぁ?
「そうか、そうだったのか...」
「お、おい!?エリック?一体どうしたんだ?」
「君は........向こう側だったんだね」
「はぁ?突然何言ってーーーーー」
会場の端で物陰が動くのを確認した。
と、同時に回避行動に移す。
...あっぶな。さっきまで顔があった場所を猛毒をたっぷりと塗りたくったナイフが通過した。
ナイフの投擲者を確認する。
「...ライム、か」
「えぇ。パーフェクトメイドことライムでございます」
「お前がいるということは...」
「サンドロ家、大集合でございますわ」
ぞろぞろ、と団体さんが到着する。
ルル、サラ、ライム...見知ったメンバーを筆頭に凡そ10人ほど闘技場内に入ってきた。
「...エリック。どういうことか、一応説明してもらおうか?」
「あぁ。勿論だとも、親友よ」
俺のことを“親友”と、そう呼ぶ彼の目はまるでゴミを見るときのソレだ。
「魔王の...いや、魔神の特徴は知っているか?」
「いいや。特には」
「...羽だよ。君の背中に生えているような、ね」
...羽?何言ってんだコイツは。そんなものあるわけ........(背中をゴソゴソ)
................あったよ。
トンでもなく立派なものが。根本を確認した限り、3対の立派な羽がありましたとも。
「...魔王、もしくは魔神相当まで存在進化したのかい?」
「うーん...ソレに近い感じ、かな?」
まぁ、破壊神だしな。間違ってはいない。
「まぁ要するに、君は人類にとっての害悪になったわけだ」
「あぁ、なったな。...で?」
「...君を殺すよ、アオト」
「やれるものなら、な」
不敵に嗤い合う二人。
一対十一という絶望的な状況。
余りにも理不尽な人数差を前に、それでも不敵に嗤うアオト。
破壊神VS真ナル勇者 幼い頃よりの竹馬の友が、今ここで衝突する。
「はぁ........今日はツイてないなぁ」
空を仰ぎ、呟くアオト。
「久しぶりの本気なんだ。...リハビリくらいにはなってくれよ?」
アオト➡アオト・ホラステロ
エリック➡エリック・サンドロ
ルル➡ルル・ギアス
サラ➡サラ・ギアス
ミカーラ・ホラステロ、狂戦士...くっ、頭痛が...




