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38話

 「おはよーー!」

 「「「.....................」」」


 相も変わらず無言が続く。そろそろ一人くらい話し掛けてくる人がいてもいいのになぁ...


 「先生~おはようございますー!」


 ハゲに話し掛けると、ビクッ!と跳ねてからギ、ギ、ギ...と機械のような動きでこちらを向く。


 「お、おはよう」


 おぉ...おおおおお!!やっと挨拶を返してくれた!!進歩したぞ!...まぁ、ハゲの友達なんぞいらないけどな。

 えっ?理想が高いって?馬鹿言っちゃいけないよ。“理想は高く”って偉い人が言ってたもん!ってか、理想云々じゃなくてさ、常識的に考えたらさ、友達と呼べる存在がハゲ一人って人いる?いないよねぇ。...そういうことだよ。


 「え、えっと...アオト君?だよね?」

 「はいっ!アオトです!」


 音速を突破しそうな勢いで振り向くアオト。

 何処かで俺を呼ぶ声が!!あっ、すぐとなりにいた。...座席は二人座れる長椅子タイプで、自由席だ。つまり俺は授業中は何時も...皆まで言わなくても分かるね?

 

 「あの...昨日は凄かったね。どうやったらあそこまで威力が出るの?」


 ...女神だ。めっ、女神が此処にいるぞっ!!


 余りパットしない顔立ちに見えるが、よくよく見るとパーツ一つ一つが整っている。多分、伸ばしすぎている黒髪が原因なんだろうな。二つのおっとりした碧眼が俺を見つめる。...可愛い。

 ...こんなに誉めちぎっているが、この子は名前すら知らないです。


 「えぇーと...」

 「あっ、ごめんね。名前がまだだったね」


 彼女の口から告げられる一言一言が脳内で反芻され、脳味噌に刷り込まれていく。あぁ...可愛い。


 「私の名前は“ウェンディ”。よろしくね、アオト君」

 「う、うん!よろしく!」


 フードを被ったままなのだが少し失礼な気がしてきた。取ろうかな...いや、やめておこう。折角出来た友達(断言)を失いたくない。

 ...おっと、そうこうしている間に結構授業が進んできている。先生は、ハゲではない。優しそうな女の先生だ。

 因みに、今は魔法の初期理論についての講義だ。


 「まず、魔法というものは主に『火』『水』『土』『光』『闇』の5属性に別れています。後は、『光』から派生した『神聖』や、『闇』から派生した『影』等もあります」


 因みに、俺は影魔法持ってます。神聖魔法...使ってみたいなぁ。唯一才能が全くなかったんだよな...がんばって2ヶ月くらい練習したのに...徹夜で。


 「火魔法なら、火を現す。水から水を現す。といったふうに、その『○○魔法』の『○○』の部分を体内にある魔力と引き換えに使うことが出来ます」


 因みに、応用すれば光魔法なんかでは『結界』みたいなのを現すことが出来る。...極めれば出来るよ。きっと。だって俺が出来たもん。


 「とても大事なことなのですが、魔法も進化します。『火魔法』なら、『一改.火魔法』という風になります。現在、ランクは『一改~極』までの、五段階まで確認されています。恐らく、そこでたどり着けば、その魔法は極めたと思っていいでしょう」


 うん。大体あってる。もっとも、その先も一応ある。...まぁ、『魔法創造』なんだけど。あれは、5属性を全て極めたらなんか合体してた。今まで何人そこまで辿り着けたか知らんけど。結構大変だったと思う。


 因みに、進化の順番は『一改』『ニ改』『三改』『真』そして『極』だ。なっ?大変そうだろう?


 「後、保有魔力量によって出現する魔法に大きな違いがあります。...えぇと、そこの二人。前へ」


 俺とウェンディが指名された。


 「貴方達、『火魔法:灯火』くらいは使えますね?えっと、アオト君のほうが保有魔力量が少ないですよね?」


 何を根拠に物申してんだ?コイツ。あれか?クラスなのか?クラスなんだよな?ったく、さっさとSクラスに上がりたいなぁ...


 「では、お願いします」

 「「『火魔法:灯火』!」」


 突如、ウェンディの掌から小さな火玉が出てきた。...そう、ウェンディの掌だけに。


 「あれっ?アオト君は?」

 「.........あれぇ?」


 おかしい。火魔法は便利だから最初に極めたハズなのに...


 「...ぷっ、灯火すら使えないの?」

 「ハッ!これだからEクラスは...どうせ、昨日のだって幻術でも使ったに違いない!」


 ざわざわ...と俺を非難する声が聞こえる。

 

 「あっ」

 「「?」」


 俺はある一つの結論を導く。


 「『魔法創造:灯火』」(ぼそっ)


 ボゥワァッ と、ウェンディとは比にならないほどの大きな火玉が飛び出す。

 この光景を見たクラスメート&先生は、


 「「「........................」」」

 「あれっ?どうしたんです?」


 何も言葉を発さない。

 静かな教室で、爛々と輝く火玉だけが無駄な存在感を醸し出していた。


△▼△▼△▼


 「...あれはいったいなんなんですかっ!?」

 「ねっ?言ったでしょう?アレは理不尽な存在だって」


 何処か、薄暗い場所で二人の女が話している。片方はアイーシャだ。もう一人は...フードを深く被っているため、確認できない。


 「...あのチカラ危険だわ。“あの方”の計画が崩れる可能性がある。なんとかしないと...」

 「確かに、あのチカラは危険だわ。でもね、“アイツ本体はそこまで強くないのよ”」

 「...? でも、あれほどのチカラを使いこなすには体も丈夫でないと...」

 

 その言葉を聞いて、アイーシャはクスッと妖艶な笑みを浮かべる。


 「それは違うわ。“体”じゃないのよ」

 「えっ?体じゃない?」


 女は、ますます訳が分からない...という感じだ。


 「アイツ...“アオト”はね、“心が弱いのよ”」

 「心が...弱い?」

 「そう、心が弱い。アオトの幼馴染みを知ってるわよね?」

 「...えぇ。勇者様達よね?」

 「そう、勇者様達よ。その中で、銀髪の子と茶髪の子...分かるわよね?」

 「勿論よ。“ルル”と“サラ”よね?」

 「その子達よ。アオトはね...その子達に、一斉にフラれてるのよ」


 ケタケタと、とても楽しそうに笑うアイーシャ。

 相対的に、フードの女は顔を顰めた。どうやら、その手の話は余り好きではないらしい。


 「で?」

 「それよ」

 「はっ?」

 「だから、強くなった理由はそれよ」

 「?????」

 

 フードの女の頭は現在進行形で、大変混乱しているだろう。フラれたから強くなった...訳が分からない。


 「アオトはね、二人を自分のモノにするために強くなったのよ」

 

 遂にお腹を抱えて笑い出すアイーシャ。随分愉快そうだ。


 「それはなんとも...」

 「そっからがまた面白いのよ?アレ、Eクラスじゃない?」

 「...そうね。けど、なんでEクラスなのかしら?」

 「フフッ...間に合わなかったのよ」

 「間に合わなかった...それって、つまり」

 「そう、入学試験に間に合わなかったのよ!」


 床を転げ回るアイーシャ。淑女のする行為ではない。非常にはしたない。注意したいところなのだが、この際どうでもいい。話さえ聞いてくれるのなら。


 「で?具体的に私は何をすればいいのかしら?」

 「アッハッハッハッハ...ふー、ふー。ええっとね...








 ......もう一度、アオトの心を折って欲しいの」


△▼△▼△▼


 「...あれ?ウェンディは?」

 「えー?何か用事があるとか言って、しばらくDクラスで授業受けるらしいよー?」

 

 剣術の先生からお墨付きをもらった次の日、ウェンディの様子が見当たらず、ルルに尋ねたら意外な返答がきた。


 「Dクラスに...?なんで?」

 「さぁー?知り合いに頼まれたとかなんとかー?」

 「なんとかて...」


 こんなとき、ルルの大雑把さが恨まれる。


 「そんなことよりさー!」

 「うおっ!?」


 いきなりルルが腕に絡み付いてくる。しょっちゅうされているが、未だに馴れない初な反応を見せるエリック。普段のギャップから...なんか...こう...キュンッてなる。


 「いつになったら“アレ”を皆に伝えるのー?」

 「...皆に伝える必要あるか?」

 「うーん...取り敢えずー、アオト君には伝えるよー?」

 「...まぁ、学園を出るときでも遅くないだろ。“ソレ”を発表したら皆に殺される自信がある」

 「えぇー?エリックなら叩きのめせるでしょー?」

 「物騒なこと言わないでくれよ...」


 ...アオトの学園生活は波瀾万丈になりそうだ。


△▼△▼△▼


 学園生活を初めて、早半年。この時期は“あるイベント”がある。それは......


 「おまえらぁーー!『闘技場』に出たいかーー!」

 「「「おおおおおおおおおおお!!!」」」


 なんかイベントがあるらしい。『闘技場』なるイベントだが...絶対戦闘するよね?するんだよね?ねえねえ、するんでしょ?


 「今年は俺らが勝つぞーーー!!」

 「「「......おおおおおおお!!!」」」


 おい、間があったぞ。間が。多分あれだな。理性ではわかってるんだよ。Dクラスが勝てないことくらい。でもね、場の雰囲気がソレを許してくれない...コイツら見てて面白いな。


 「楽しそうだねっ!」

 「う、うん。そうだね。楽しみだよ」


 俺に話し掛けてくれる女神。その名もウェンディ。可愛い。

 この子、ハゲをぶっ飛ばした辺りから声を掛けてくれる優しい子だ。だけど、どこか信用できない。なんでだ?本能的な何かが反応している。


 「もし...アオト君が良かったら、一緒に行く?見学も出来るみたいだよ?」

 「................えっ?」

 「もっ、もしかして嫌だった?それなら全然無理しなくて...」

 「そんなことないですっ!ぜひご一緒させてください!」


 これは...これは........モテ期がキタっ!!


 「えっとな、因みにルールは........」


 遠くでハゲがルール説明をしているがどうでもいい(断言)。今大事なのは目の前の事だ!


 「ふふっ、約束だよ?」


 ああああああああ!!可愛いいいいいいい!

 上目使いで『約束だよ?』とか可愛すぎいいいいいい!!しかもちょっと頬が赤いしいいいいいい!!照れてる!照れてらっしゃる!誰に?俺に!

 これは、本格的にモテ期なのかっ!?


 神様!今まで糞喰らえとか言ってすいませんでした!これから毎日お参りします!!


△▼△▼△▼


 「........計画通りですね」

 「えぇ、そうね」


 ふたたび、アイーシャと謎のフード女が話している。


 「まさか、あんなに簡単に堕ちるとわ...」

 「ふふっ、言ったでしょう?アイツは心が弱いから隙が多いのよ」












 アオトの知らないところで進む計画。

 これから、いったい何が起ころうとしているのか...ただ、一つ言えることがあるとすれば...





........アオトはそう遠くない未来、××という

事だけであろう。

××ってなんでしょうね?

露骨な伏線を出しときます。


さて、回収される日はいつ来るのやら........


お読み頂きありがとうございました。

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