37話
「こんにちわー!!」
「馬鹿っ!流石に敬語を使いなさい!」
突然、静かだった王の間に元気な二人の声が響く。
「...はぁ。やはりお前だったか。魔力で大体分かった。あれ?ちょっと雰囲気変わったか?なんだか前より強くなってる気が...あっ、アイーシャいたんだ。すまん、気づかなかった」
「はいっ!二倍くらい強くなりました!」
「えぇ...国王様...」
そんな二人を出迎えたのは若いエルフの男だ。顔も整っており、短い金髪も本来の歳を感じられない。...実際は2000を越えていたりするが......
「でっ?今回は何をしたのだ?」
「えぇーとですね------」
「待って下さい。国王様、アオトとは何時知り合ったのですか?」
「はて、何時だったか?」
「あれじゃないですか?SSランクの授与式のやつ」
あぁ~、あれか~。と、納得顔の国王。
反対に、余計意味が分からなくなった。と困惑しているアイーシャ。
「アオト、SSランクってなんですか?」
「いや、今はそんなことどーでもいいじゃん」
「よくねぇよ。あっ...」
つい、素で返してしまうアイーシャ。今で保っていた外面が台無しだ。
「ハッハッハ、そんなこと気にせんよ。俺とアイーシャの仲じゃないか!」
「ありがたきお言葉」
「そういうの止めて欲しいんだけどなぁ...ほら、500年前はよく二人で依頼とか受けたりしたじゃん?そんときみたいにタメ口で...」
「貴方様は、今は王族でしょう?諦めて下さい」
「なんなんだかなぁ...」
うん、エルフだけあって話のスケールが大きいね。ついてけないや。
「おっと、話が逸れてしまったな。で、なんの用だ?」
「うん、さっきエンショントドラゴンを討伐して来たからその報告をしよっかな~って」
「...アイーシャ。俺の耳はおかしくなったのか?」
「いえ、極めて正常でございます」
「なぁ、エンショントドラゴンって『ちょっと買い物行ってくるわぁ~』みたいな軽い気持ちで討伐出来る魔物だったか?アレ、半分くらい神じゃなかった?」
「...この目で確認しました。アオトが魔法を使ったら頭から下が綺麗さっぱり消失しました」
「----お..け....し.........と..が」
「国王様?何か言いましたか?」
「おうっ!?あぁ...何でもない。エンショントドラゴンの件、了解した。ギルドには言っておこう」
「じゃぁ~ね~」
「だから敬語...今更か。では、失礼します」
バタン 再び、王の間に静寂が訪れる。
「...本当になんなんだかな。まったく、調子狂うなぁ。でも、もう後には引けないんだ。運が悪かったと思うんだな。お前は強くなりすぎた。恨むなら自分を恨め」
一人になった王の間に国王の独り言が木霊する。
...その顔は狂気に満ちていた。
△▼△▼△▼
俺は少し考えていた。何かって?国王のことだ。
それは、国王が発した一言が原因だ。
『俺の計画の障害にならないといいが』
確かに国王はこう言っていた。勿論、俺の耳の聞き間違えでなければ、だが。
はて、国王は何をする気なのか。気になるのだが...
「夜も遅いし、取り敢えず帰ろうか」
「そうね。ふわぁ~。眠いし」
明日も学園があるので帰る。エリックの家に。
「「だだいまぁーー」」
「遅いっ!!」
玄関でエリック君がお出迎えしてくれる。わぁ、嬉しいなぁ~。
「まったく!こんな遅くまで何してたのさ!!」
「ちょっと依頼を受けてたんだけど、初代が付いてきてな...」
「ちょっと!?何さらっと私を巻き込んでるのよ!!」
「いや、事実だろ?」
「...二人とも仲いいね」
「「当然だろ?/どこが!?」」
まったく、初代も素直じゃないな~。二人でデート(依頼)する仲じゃないか。
ギロッ おっと、これ以上は自重しておこう。危なそうだ。......主に俺の命が。
「まっ、おやすみ~」
「おはよう」
ドヤ?早いやろ?待たせる男は嫌われるからな。マッハで来てやったわ。
...あれ?返事がない。皆何処に行ったのだろうか?
「...あぁ。サークルか」
学園には、サークル活動がある。各々、自分が研究したいことに打ち込む人が多いらしい。いや~朝っぱらから精が出るねぇ。
えっ?俺?入るわけないじゃん。だって大体のことは知ってるし。...ハッ!?サークルに入ったら、もしかしたら脱ぼっち出来んじゃね!?
くっそう!盲点だった!こうなりゃ俺も...
「...邪魔なんですが」
「おっ?...なんだ、メイドか」
「ラ・イ・ム・で・す!ラ・イ・ム!私にはご主人様に貰った大切な名前があるんですぅ!」
すっかり忘れてた。パーフェクトメイド(笑)だったね。
「で?(笑)さんは何の気なしに用かな?」
「なんですかその呼び方は?ぶち殺しますよ?」
ときどき思うんだけどさ...コイツ、メイドとしての在り方分かってるの?ちょっと戦闘族過ぎやしないかい?
「...で?何の用?」
「いえ、掃除の邪魔ですので早く学園へ行ってほしい所存であります。むしろ、さっさと行け。この無駄飯ぐらい」
「今日も毒舌が冴え渡ってるね。俺、尊敬しちゃう」
「存在価値が虫と同等の貴方から尊敬されても鳥肌が立つだけですので」
「ねぇ、泣くよ?本当に泣くからね?」
これが俺とライムさんとの日課のようなものだ。因みに、罵り方にもたくさんのバリエーションがあり、毎日聞いてて飽きない。
......問題があるとすれば、毎日ちょっとずつ俺のライフポイントが削られることくらいかな?
いや、そっちが一番深刻だったわ。
「ねぇ。俺、朝ごはん食べてないんだけど...」
「勝手に住み着いてる虫にご飯が出るとでも?」
いつになく冴えてらっしゃる。
「いいもん、外で食べるからいいもん」
「行ってらっしゃいませ。帰ってこないことを切望しております」
涙目になりながらそそくさと退散するアオト。
...この頃には、すっかり国王の独り言は頭から離れていた。
△▼△▼△▼
「おはよう!」
「「「.....................」」」
安定の無視だ。虐めだ。訴えてやる!
「先生~、皆に無視されるんですけど~」
「..................」
ふむ、先生も無視と...何て日だ!
まぁ、味方がいない生活には慣れているのでさほど気にする必要もないか。
えっと、一限目は...剣術か。さて、運動場(外)に移動するか。
「今日は、皆の実力を教えて欲しい!二人一組になってくれ!」
ハゲが大声で怒鳴る。...何故怒鳴るし。
皆が声をかけ始めた。が、そこで問題が生じる。
......やべぇよ。俺、ぼっちじゃん。
「余った奴は俺とペアだからな!それが嫌な奴は死ぬ気で組めよ!!」
死ぬ気で声をかけても、全く相手にされない件。これがぼっちの性か...
「よぉし、皆組んだなぁーー!!」
「先生、余りました」
「...なんだ、不要物か。俺は今、生徒に授業をしているんだ。見て分からないか?」
「先生、俺も生徒です」
“不要物”って...学園での呼び名はそれになりそうだな...まぁ、“純白の魔王”よりは全然ましだけどな。誰だよ、あんな二つ名付けた奴...
「はぁ。分かってないなぁ...よし、なら俺の授業を受けるに相応しいか俺が判断してやろう!」
「先生、既に学費を払ってるので相応しいもクソも無いです。早く授業をしましょう」
「そんなわけに行かない。なんせ、俺はギルドランクBまで行った男だからな!」
いや、だからなんだよ。あれだろ?どうせ、パーティーのランクがBなんだろ?居るだけで、ほぼお荷物的な?
「はぁ...何をすればいいんですか?」
「俺を殴れ」
...聞き間違いだろうか。目の前で凄いドM発言をした人がいるんだけど...生徒に向かって『俺を殴れ』?なにそれ怖い。
「俺をのけぞらせることが出来たら合格にしてやるよ。まぁ、無理だろうけどな」
「それぐらいなら...」
って、コイツ身体強化発動しやがった!学生だから見抜かれないとでも思ってるのか?みんなが俺のことを見ている。
...あ、れ?何だ?この感覚は?体が思うように動かな...って!これってまさか...
いや、流石にそんなはずは...ちょっと鑑定。
______________________
名前:アオト
年齢:15
適正職業:ぼっち※
レベル:―――――
______________________
いや、なんだよこれ。...俺の脱ぼっち計画が...まさかの存在自体をぼっちにされるとは...
と、取り敢えず適正職業について“鑑定”してみるか。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
適正職業:ぼっち
➡適正職業:孤独者 からの派生職業(あるレベルまでいくと職業の派生が行われる)。
兎に角独りでないと落ち着かない。視線に敏感になり、大勢の人(三人以上)に見られると緊張して貧血になりやすくなる(貧血になる確率:80%)。
______________________
あれ?バッドステータスが増えたな。なんで自分に➕の効果はないの?➖ばかり増えていくの?
...おっと、貧血でフラフラする。まともに意識が保てない。
「さぁ!いつでもこいよ!!その代わり、駄目だったら退学してもらうからな!」
なんか声が聞こえるけど、意識が朦朧としてよく分からない。
取り敢えず殴ればいいのかな?
「え~い」
「ゴブフッッ!!」
ビューーン!! と、物凄い勢いで飛んで行くハゲ。なんか凄い血ヘド吐いてたが気にしたら負けだ。
「「「............」」」
皆の俺を見る目が変わった。憐れみや、嘲りから、畏怖、恐怖の対象へと変わった。
意識が朦朧としながらでもハッキリと分かったことがある。
これ、一生ぼっちですわ...
△▼△▼△▼
一方その頃、エリックはと言うと...
「はぅ...エリック様、素敵です!」
「剣を振るお姿...嗚呼、まるで一枚の絵画のようですわ...私はエリック様と会うために生まれてきたのよ!」
「...周りの女どもが邪魔ね」
「チッ、エリックに色目を使う女が多すぎるー」
「ええ。こんなんじゃぁ、何時までもうかうかしてられないわぁ」
「...お二人とも、落ち着きなさいな。何も、今に始まった事じゃないでしょうに」
因みに、一番最後に発言したのがアオトが(誰ッ!?)とか言ってた人物である。
まさにアオトとは正反対。
Sクラスも剣術の授業なのだが...
「エリック様!もう私が教えることはありません!」
「先生、ありがとうございました」
「い、いえいえ!勇者様に御礼など...滅相もない!」
(はぁ...俺は剣術を学びに学園に来たようなものなのに...)
と、こんな感じで勇者様は落胆していた。
(アオト...虐められてなきゃいいけどな...俺より剣術も上だったし、大丈夫かな?まぁ、三年前の話だけど)
物思いに更けていると、後ろからフニッと柔らかい感触が。
「エリック様、やはり勇者となるとこの学園のレベルでは低かったですか?」
「...そもそも、アイルギア以上の学園ってあるの?ここ、一応“王都”でしょ?なぜか“町”っていう分類だけど」
「はい、恐らく世界でもっとも優秀な教師を集めましが...」
「ってかさ、“ウェンディ”」
「はい?」
「“王女”である君が無防備にボディータッチをするのはどうかと思うんだけど?」
はい、新入りは王女様でした。
王女は王女らしからぬ顔でニヤリと笑うと、
「なら、責任とって結婚して下さってもいいのですよ?」
「あのねぇ...」
「エリックは渡さないよー!」
「王女様ぁ、少しは節操を持ってねぇ。エリックはとっくに予約済みよぉ」
こうして、授業はカオスになって行く。Sクラス、20人分の視線がエリック達に突き刺さる。
当然、その視線のなかには主に男子の怨念や嫉み等の感情も混じっているが...
主人公よりも、主人公らしいエリックであった。
さて、アオト君は主人公てしての尊厳を守ることは出来るのか...!?
多分、もう少ししたら物語も大きく展開すると思います。
お読み頂きありがとうございました。




