30話
「突然だけど“黒”...ちょっと魔剣に入ってくれない?」
『......うん?ちょっと待とう。アレだよな?魔剣ってお前が召喚したはいいけど魔剣側が使用を拒否ったアレだよな?』
「やめて、ナチュラルに古傷えぐらないで」
『いやー、あん時面白かったよな~!召喚した魔剣がいきなり、「あっ、すみません。生理的に無理です」とか言ってくるんだもんな~!しかもその後、魔剣が召喚すら拒否したときは、本当に傑作だったぜ!』
「...喜べ“黒”。たった今貴様に人権は無くなった」
『なんて物騒なこと抜かしてんだお前は』
そう。アオトは昔に魔剣を召喚したことがある。固有能力一覧にはあったが、剣なら既に足りていたため、全く使う必用はなかったのだがものすごくロマンを感じたため使うに至ったのだ。
そして出がらしの拒否...いや、拒絶である。不意にも、初恋を振られたときをフラッシュバックしたアオトは速攻で魔剣を返して、一週間くらい寝込んだのだ。
「...ぐずん。そんな昔の話なんて忘れたし!忘れたったら忘れたの!」
『はいはい。俺が悪かったから泣くの止めて~』
「泣いてなんかないし!」
以外と心が弱いのが“白”の特徴である。特に、トラウマに関しては人一倍敏感である。中々に扱いづらい人格なのである。
「うぅ~。召喚するよ...あぁ~、緊張してきた!落ち着け~落ち着け~」
『そうだ!“白”なら出来る!頑張れ!』
「俺は出来る~俺は出来る~。よし、いけそう!行くぞ!『魔剣召喚』ッ!!」
突如、アオトの足下に巨大な魔方陣が浮かび上がる。その魔方陣は、何重にも重なっていき...
キンッ!
甲高い音と共に空中に一本の剣が浮かび上がる。真っ黒な一振りの刀。それは、一目見ただけで業物だ!素人でも分かるほどに美しい。
残念なのは、外面に内面が比例していない...むしろ絶賛反比例しているレベルである。
《ま~たお主か!もう儂を呼ぶなと言ったであろう!?それでも呼ぶとは...お主、死にた...》
「『あ"あ"ぁ?やんのかゴルァ!?』」
見事な恫喝である。普通の人間が恫喝しただけなら怯えるぐらいで済むであろう。ただ、アオトが本気で殺気を込めた恫喝をすると...
《へへっ兄貴!俺はどこまでも貴方に着いていきまさぁ!!》
一瞬で掌を返す魔剣。
「あぁ。分かればいいんだよ。それよりさ、少しお願いしたいんだけど...」
《へい!何でも言ってくだせぇ!》
腰に指していた剣を地面に置いて、視線を送るアオト。
「この剣に人格移してくれない?」
《お安いご用でさぁ!今すぐ移るんで、少し待って下さい!》
魔剣がそう易々と自分の体を変えていいのだろうか?と疑問に思ったが、話がこじれそうなのでグッと我慢しておく。
パッ と魔剣が光ったかと思えば、膨大な魔力が移動しているのが分かる。ズズッ と地を這うように移動した“それ”は新しい体に入る。
《うぅ~ん。兄貴!移動完了しましたぜ!》
「ご苦労。元のお前の体は、有効活用してやるからな」
《へい!了解でございまさぁ!...ところで俺の体、何に使うんですか?》
「それはなぁ......こうするんだよッ!!」
アオトは魔剣を持ち上げ、胸の近くまで移動させる。そして一気に魔力を込める。
『えっ?おいっ!ちょっ、待て!まだ心の準備が...って、おわぁぁぁぉ!!』
......人格の引っ越しを始めたのである。途端に周囲に、真っ黒な魔力が渦を巻き始める。真っ黒な“それ”は、暫くアオトの周りを暴れ回るが途中で断念したのか素直に魔剣にズズッと言う汚い音を出しながら魔剣の中に入る。
「ふぃ~、終わったー!!」
『...勝手にやりやがって...覚えとけよ!?』
「あっ、人化の魔法かけてやろうと思ってたけどやーめた!」
『嘘!嘘だから!体を与えてくれてありがとうございました!!だから人化の魔法御願いしますっ!!』
“黒”の、今までに見たこともないような必死さで“白”の説得にかかっている。しょがないな...と、ため息をつきながら人化の魔法を発動させる。するとそこに現れたのは、顔はアオトに瓜二つで汚い顔つき...ではなく、普通に美少年...いや、美少女である。
あるぇ?なんで女なんだぁ?あっ、忘れてた。こっちの体はいじってないんだった。黒目黒髪の美少女が目の前にいて、正直目の毒です。
「っしゃーー!人の体だっ!!これでアイツらに復讐...ガフッ!?」
「まったく、いいか?復讐は禁止だ!ち・な・み・に、俺とお前は主従関係にあるからな?覚えとけよ?」
『ほうほう、つまり俺がマスタ...あっ、やべ、首が閉まって...グヘッ...』
沈黙する“黒”。くっ、惜しい奴が死んでしまった(自爆)。
「くっ...“黒”の冥福を祈って...黙想」
「するな!俺はまだ生きてるから!!」
「なん...だと!?(驚愕)」
「驚くな!...はぁ、お前と話してると疲れるよ...もういいだろ?」
いくら見た目は美少女でも、中身はいつも道理で、いくらか安心した“白”。これで中身まで完璧だったらどうしようとか迷っていたのだが、杞憂だったようだ。
「さて、引っ越しも済んだことだし...って、まだいたんだ。元魔剣。帰っていいぞ?あっ、それともこれから聖剣もちの人間がここを通るから、ソイツの仲間になったらいい。じゃっ、そゆことでー」
これ以上関わるのが面倒な“白”は、早口で言いくるめると、ささっと踵を返して帰ってしまう。
そんな元主人を追う気になれない魔剣が一本残されている。
「な、なんだったんだ...あの魔力は...もしかしたら魔王様さえも相手にならないかもしれない程なんて...」
その日、地面に刺さって剣が独り言を呟いているという報告が相次いだそうだ。その後、無事に勇者に保護されたもよう。
魔剣がどんなことになっていようが構わない二人は、遂にアイルギアに到着する。
「おぉ...」
「帰ってきたな...」
中に入るための検問の長蛇の列に並びながら、思わず呟いてしまう二人であった。
遂にアオトはアイルギアに帰ってきた。実に7年ぶりの帰郷である。
7年間のぼっち生活を上塗りするための生活をすることが出来るのか...!?それは神のみぞ...いや、もしかしたら神さえも予測不可能な生活が、今ここに始まる。
学園編まで後2~3話と言ったな?...アレは嘘だ。
すみません。予定どうりに行きません...もう少し掛かると思います。
お読み頂きありがとうございました。




