29話
「学園の入学テスト...先月だよ?」
...マジかよ。
「あっ、あのさ...それって受けなかった場合ってどうなるの?」
「えぇーと、確か......最底辺のクラスになるね。もしかして学園初じゃない?最底辺なんて」
新入りが答える。ってかお前誰だよ。
「エーリーック!この子誰?」
「えっ?あぁ、“マリー”だよ。アオトが旅に出た後に、色々あってね...」
「俺としては是非、色々の部分を聞きたいのだが...まぁいいか。よろしくな、マリー」
「う、うん。よろしく...」
なんで軽く引いてるの?ねぇ、距離とらないで!俺何かしたの?ねぇ、ちょっと!おーい。
行っちゃった...なんなんだ?
「えぇ...アオト君最底辺クラスなのぉ?ねぇ、今どんな気持ちぃ?最底辺ってどんな気持ちなのぉ?」
「......気持ちよくはないね」
『あ"あ"ぁ?なんか文句あんのかゴルァ!』
“黒”、お前が何言っても聞こえないから。
...サラってこんな性格だったっけ?なんでこんなに歪んだの?ハッ!?まさか反抗期か?もしかしたらルルも...その線でいくとさっきのマリーも、初代も反抗期か?いや、初代は元からか...
思考の渦にハマるアオト。中々進まない状況に痺れを切らした人物が声を上げる。
「ちょっと!いつまでこんなところにいるのよ!早く町に帰るわよ!」
「あ、あぁそうだな。皆!帰ろう!久々のアイルギアだ!」
「「「おぉーー!」」」
「えっ?あっ、帰るのね。俺も付いて...」
ギロリ
ビクッ!
アオト、8つの瞳に睨まれる。そして怯える。邪神にさえも臆すことなく突っ込んでいったアオトだが、どうやら女には弱いらしい。意外な...いや、そんなに意外ではないか。弱点発見である。まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。4対1は無理である。アオト、素直に退散しておく。
「いこうと思ったけどちょっと予定思い出したわ!先にアイルギアに行ってるね!」
ぴゅ~ん
逃げ足だけは世界最速の男、それがアオト。ダサくなんて無い。ただ、生存本能に従っただけである。
「...? どうしたのだろうか?俺達もこれからアイルギアに向かうというのに?」
流石エリック。傷心中のアオトにさらに追い討ちを掛ける。アオトの超高性能イヤーはどんな小さな音も1㎞までなら逃さない!を自負しているため、聞こえなかったとは言えない。言わせない。
(学園で...学園で汚名返上してやるぞっ!あっ...俺最底辺クラスじゃん。存在が汚名じゃん。ヤッベー。どうしよ...よし、帰ったらとりあえず“アレ”を試してみよう。ヨッシャー!やる気出てきた!今なら何でも出来そう!えっ?彼女作れ?...すみません調子のってました)
...戦闘能力以外で、切り替えの速さだけがアオトの取り柄である。アオト、時速100㎞くらいで走っているため、そろそろアイルギアに着きそうである。
「いや~魔法って便利だよねぇ。こんなに速く走れるんだもん」
アオトは『魔法創造:ブースト』を使っているため、中々疲れない。
これ見よがしに魔法を使えない“黒”を煽る。
『えっ?これぐらいなら、身体強化付けないでも走れるよ?まぁ、身体強化すら使えないんだけどね』
忘れていた。“黒”は化け物だった...人間のカテゴリーに入れたら駄目な奴だった...
そんなことを考えている“白”も、人間のカテゴリーに入れたら大分浮く存在なのだが、本人は気づいていない。いつも“黒”と比較してしまっているためなのだが...余りにも比較対象がアレなため、自分が余り凄くないように思える不思議。
一方その頃エリック一行は......
△▼△▼△▼
「いやー、アオト。大分変わってたね。髪なんか真っ白になってたし...」
「もしかしたらー、巷で噂の“純白の魔王”ってアオト君の事かもねー」
「えぇ...それってぇ、最速でSランクになったって言う化け物でしょぉ?アオト君、全然強くないと思うわよぉ?魔力も全く感じなかったしぃ...」
アオト、知らない間に二つ名が着いている。それも、“純白の魔王”という、本人が聞いたら悶死しそうな感じだ。なぜ、二つ名に“魔王”が入っているかというと......
(アレがアオトですって!?嘘おっしゃい!あんなのただの化け物じゃないですのっ!それに魔力を全然感じなかったですって?そんなの隠しているに決まってるじゃないですかっ!それに...)
「おーい、“アイーシャ”?大丈夫か?顔が青いけど...」
「えっ、えぇ。大丈夫ですわ。先を急ぎましょう」
「それならいいんだけど...無理するなよ?」
エリック、上目使いで心底心配そうに訪ねてくる。普段のクールな印象のギャップから、可愛く見えて仕方がない。もし、ここが外じゃなかったら抱き締めているところだった。
「~~っ!分かってますわ!」
内心、「エリック可愛すぎーー!!」と叫びたいアイーシャだが、我慢する。今は、大事なことを考えているのだから。
(それに、アイツの中の魔力を“覗いて”見たけど.........真っ黒だったじゃない!どこが純白よ!多分、あの二つ名を付けたのは“エルフ”ね。人の魔力を覗けるのはエルフしかいないもの...“純白の魔王”、ね。魔力の質が魔王にそっくりだったものね。ふんっ!案外合ってるんじゃないのかしら!...既に私よりは強いわね)
一人、納得するアイーシャ。アイーシャの中で、“純白の魔王”はアオトに決まったようだ。もっとも、観察眼が鋭いだけに質が悪い。因みに、町中でアオトの背中に視線を向けていたのはアイーシャである。そのときから少し勘づいていたようだ。
(もしかしたら、既にレベルも魔王を越えているかも知れないわね...要注意だわ!エリックは...私が守る!)
アオトと完全に敵対することにしたアイーシャ。こうして、また一人、アオトの敵は増えていく...
△▼△▼△▼
「おっ、そろそろ着くな。義父さん...元気かな?義母さんも...」
『あぁ...暫くぶりに会うからな...』
凡そ、7年ぶりの再開となるのだ。少しくらいは感慨深くなるものだ。
「っと、その前に...」
突然道からそれたアオト。
『おい?どうしたんだ?』
「さて、突然だけど“黒”...
ちょっと魔剣に入ってくれない?」




