28話
『ふーんふんふんふーーん♪』
「...“黒”、ずいぶんご機嫌だな」
『おうっ!だってこれから勇者に会うんだろ?なら、少し立ち合いをお願いしようかな~って思ってな!』
「絶対、駄目っ!」
この戦闘狂がっ!! 脳内で毒づく“白”。
『まったく、戦闘狂なんて...照れるじゃねぇか//』
「照れるなぁぁぁぁ!」
失念していた...このアホも俺の一部だった...むしろ俺の存在意義(戦闘能力)の大半を奪われてるんだった......
なんだか悔しい気持ちになりながらエリック家までの道のりをとぼとぼ歩くアオト。“白”が悔しくなったのは、ほとんど自爆なので自業自得である。
すると、突然前方から数人が戦闘をしている気配を感じた。どうやら盗賊の類いのようである。
「うわ~、旅の途中で盗賊に襲われてる馬車と遭遇とかどんだけベタな展開なんだよ...」
口先ではこんなことを言っているが、助ける気はゼロである。だってめんどいし。
だけど、女の人が乗ってたりしたら助けちゃうかも...とか甘いことを考えていると......
「きゃぁぁぁぁーー!」
......ふぅ。
「おい“黒”、」
『あぁ、分かってるよ...もしこれが俺の知っているような展開ならば...』
「『助けたら必ず惚れるはずっ!!』」
二人(?)の漢の考えは一致していた。そして神に祈る。「どうかテンプレであって下さい」と。果たしてその願いは神に通じるのか否か...
「「助けに来たぞ!」」
えっ?ハモった?誰と...?
ふと、横を確認してみる。すると...
「エリック...?」
「えっ?...アオト...なのか?」
「おいっ!お前ら何者だ!!」
おいおいマジかよ。ここで会うか...もうちょいさ、TPOってやつを考えてほしいのだが...
「エリック...久しぶりだな!」
「あ、あぁ...それにしても随分変わったな...顔つきとか髪とか...」
「場合によってはタダじゃ済まないぞっ!?」
突然の再開に一応喜ぶ二人。エリックの後ろをチラッと見てみると侍られてる女達の驚く顔が面白くってつい、笑ってしまう。
「お前ら、相変わらず一緒なのな...」
「うん。アオトがいなくなって寂しいのか、前より一層ベタベタしてきてね。対応に困ったよ」
「おいっ!?なんで無視するんだ!?俺達盗賊だぞ!?お前ら助けに来たんじゃないのかっ!?」
俺の女っ気のない(向こうでの生活を含む)8年を振り替えってみて、ズキンッと軽く胸が痛んだが無い物ねだりしてもしょうがないので、素直に妬んでおく。
「ははっ。本当にエリックは羨ましいな...俺が持ってないものを全部持っててさ...」
「...? 何か言ったか?」
「いやっ、なんでもないよ。馬鹿な男の独り言さ...」
「?」
はぁ、コイツ鈍感スキルまで持ってるのか...こりゃ勝てませんわ...
「ねえっ!なんで反応してくれないのっ!?...グズン。もう嫌だよぉ...」
盗賊の頭、涙目を通り越して泣き始めてしまう。すかさず他の盗賊が慰めに行っているが無視だ。
「なぁ、あの盗賊どうする?なんかあのまま帰りそうな勢いなんだけど...」
「あぁ、それなら俺達はギルドの依頼で盗賊を倒しに来たんだ。だから全員殺すつもりだけど?」
「じゃあ、ちゃっちゃと殺るか」
「OK。あっ、アオトは向こうの方で見ててね。危ないから。おーーい!みんな!殺るよー!」
ぞろぞろと美少女・美女、総勢4名がやってくる。そしてエリックを囲む。この光景を見たアオトは、咄嗟に感情を捨てた。捨てなかったらきっとコレを見て暴走するに違いないから...
エリックを囲むと、8つの綺麗な瞳が俺のことを睨んでくる。またも俺の心がズキリと痛む。
これに関しては、ぼっちの期間が長すぎた故の症状なので気にしたら負けだ。
「エリックー、この方はどちらさんー?」
「えっ?覚えてないの?アオトだよ、アオト!」
「アオトー?あぁ、そんな人いたねー。確か3年前くらいに逃げた人でしょー?」
ルルが笑顔で聞いてくる。もっとも、目は笑ってないが。
それにしても、俺の評価が酷すぎる件について。俺言ったよね?“自分磨きの旅”って。...あれ?俺、逃げてる?これ。
「噂のアオト君...どんな人なのかな?」
「ほら、あそこに白髪の変な奴いるでしょ?アレがアオトよ」
「アレか......慰めてこようかな...可哀想に」
俺の超強化されている聴力は例え一キロ離れた会話も聞きのがさない!よって、こんな会話も聞こえてしまうという弊害もあるのだ。
出来れば慰めてほしいな...君達の登場のせいで心が色々ズタボロだから。後、可哀想そうにってどういうことだゴルァ!
~30分後~
見事に見せ場もなく、5人組の盗賊はこの世から永久に退場しました。皆が戦っている間、攻撃による余波が馬車と、怪我人には厳しそうなのでその辺のカバーをやってました。勿論、独りで。
構成は、エリックとルルが前衛でなんか新しい人が中衛。後衛は初代とサラで上手く回してた。
「...強いな」
恐らく馬車の護衛であろう騎士の男性が呟くのを、俺は聞き逃さない。どうやらこっちの世界では、“このレベル程度”で強いらしい。ふむ、勉強になった。
因みに悲鳴を上げた女性はまるで恋する乙女のようにエリックのことを凝視している。おーい。俺も頑張って守ってるよー!
...無事に盗賊を皆殺しにしたあと、馬車の人たちにめちゃくちゃ感謝された。...俺以外。
特に悲鳴を上げた女性の感謝が凄かった。とても熱い視線を送っていた。...エリックに。
もういい。この事は忘れよう。覚えていても悲しくなるだけだ。
しかし、コイツらも冒険者か...何か感慨深いな...
「そうか、お前らも冒険者ギルドに入ったのか...」
「ん?“お前らも”ってことはアオトもギルドに入ってるのか?」
「ああ。一年前くらいに入ったな。所でランクは今何処だ?」
因みに俺はこの前SSランクになったな。なんか、大陸初のSSランクとか言ってた気がするがスルーしてたからよくわからん。確か一番上らしい。ごめんな、適当で。
『ランクとかどうでもいいから早く殺らせろ』
戦闘狂は黙ってろ。
俺の勝手な予想だが、チートクラスの奴等が揃ってるんだからSランクは越えてると思う。
「ふふん、聞いて驚け!俺達は...」
おぉ...自信満々だ。やはりSランクは越えているのか...??
「Bランクだ!!」
「はっ?」
思わずすっとんきょうな声を出してしまう。
いやだってさぁ...あんなに自信満々でBランクとか言われても俺が困るというか、その...
「なんだよその声は...言っておくが本当だぞ?ホレッ。冒険者カード」
「...本当だ」
「これでも勇者なんでね!当時は最速とかって言われたけどね...なんか一年前くらいに最速でSランクになった子供がいるとかいないとかで俺達のことなんかうやむやになっちゃってさ...」
ごめんなさい。それ、俺です。
『やーい、“白”が自重せずに向こうの素材出しまくったせいだーー!』
...今度、人格を1つに纏めることが出来る魔法を研究しとこう。さっさとこの黒との生活とお別れしたい...コイツのせいでプライバシーの欠片もないよ......
よし、話題を変えよう。
「なぁエリック。俺さ、学園のテストを受けるために帰ってきたんだけどさ......」
「「「えっ?」」」
...え?何その反応。えっ、怖いんですけど。なんですか?
「えぇーと、どうしたの?」
「いや、あのー。学園のテストはさ...」
「“先月だよ?”」
......マジかよ。
お読み頂きありがとうございました。




