25話
邪神を拷m...現世のしがらみから解放した日から、3ヶ月近く経った。
アオトはとうとう帰郷することを決心した。最初の目標であった魔王も倒したし、ついでに邪神も狩れたので特に思うところはない。強いて言えば、【暗黒魔境】の魔物達と別れるのが少し寂しいくらいか......
そして気付く。この六年間、ろくな人間と喋ってないことを。精々喋ったのが勇者パーティーの面子だ。しかも、喋ったと言ってもひたすら無視されていたので、唯の独り言とあまり相違はない。虚しい気分になるくらいか...
さらに気付く。この18年間、本当に自分のことだけを思ってくれた人がいたか否か。...否だった。優しくしてくれたと言っても所詮他人の親と、その子供。幼馴染みにもろくに相手にされず寂しく生きてきた18年間。
まさにぼっちの申し子である。あれ?帰りたく...ない...?いやいや、俺はこれから頑張っていくんだ、成り上がるんだ、と己を鼓舞する。
そんな聞いてるだけで哀しくなってくる話は置いといて、アオトは困っている。いや、“白”は困っている。その原因は...
「おや、お孫様?来ないのですか?ならこちらから...行きます!!」
「来ないで下さい。そして落ち着いて下さい。兎に角俺から離れて下さい」
...元魔王が絡んできた。折角“黒”に八つ当たりして気分よく帰ろうと思ってたのに...台無しである。俺がこの森に帰ってきたのがそんなに気に食わないのだろうか?いや、違うんだろうな~。だってさっき『すわっ、強者の気配がっ!』とか叫びながらここに向かってきたもん。
「元魔王、一体なんなんだこれは?こんな斬新な歓迎の仕方は向こうの世界でさえなかったぞ」
「ふっふっふ、これは強者限定の歓迎の仕方ですよ。是非覚えて帰って下さいませ。もっとも、生きて帰れたのであればの話ですが。......もう我慢できそうにありませんので、なるべく死なないで下さいね?お婆様に怒られそうですので」
なんだかとても物騒なことを喚く元魔王。てか、何故に俺を殺すのか...ばあちゃんに怒られそうならやめとけよ。
そんな心の中でのツッコミも虚しく、元魔王は戦闘体勢をとる。
ドゴッ 地面を蹴ったとは思えない音を伴いながら突っ込んでくる元魔王。だが...
「“黒”、手出しするなよ?ちょっと試したいモノがあるから」
『ったく、しゃーねーな。......負けるなよ?』
「愚問だね」
「何をさっきからごちゃごちゃと...!?」
「限界突破」
瞬間、アオトの回りに魔力の暴走が起きる。アオトでは押さえきれないほどの大量の魔力が漏れ出しているようだ。元魔王は走りながら驚いているもよう。なにげに器用である。
「...驚きました。まさかこれ程の魔力を保有していたとは...だが、私に魔法は効かn...」
なんか言ってるけど、今日は試してみたいモノがあるから積極的に使わせて貰おう。元魔王、喜ぶがよい。私の実験台になれるのだからな!
突っ込んでくる元魔王、返り討ちにしたる!
バギッ!!
元魔王が突っ込んでくる勢いを利用して、顔面に目にも止まらぬ速さで回し蹴りを放つ。推進力の力も合わさり、かなり痛そうだ。...顔を狙った理由?...俺、さ。イケメンは死すべきだと思うんだよね。俺に出会いがない理由もお前らイケメンがいるからかな?あっ、なんかイライラしてきた。容赦する理由がなくなったか。よし、全力で顔狙い打ちしてやろう。しめしめ。
「ガッ!?」
「俺、魔法使うなんて言ってないよ?注意散漫だぜぇ?」
ぶっ飛ぶ元魔王。突然の体術に混乱して、受け身を取れないらしい。
当然、そんな余裕をアオトが与えるハズもなく...
(極.体術:縮地!)
縮地を使い、100mほどあった距離を一気にゼロにする。一瞬で距離を詰めた俺に驚いたのか、元魔王の目がギョッと見開いてる。あれ?回し蹴りのせいで元魔王の顔が陥没しているような...あれだ、気にしたら負けだ。続けよう。
そんな陥没している元魔王の顔面を上に思いっきり殴り上げ、上空50mくらいまで来ただろうか。俺も飛ぶ。上空50mくらいまで。殴ると同時に糸を巻き付けておいたので、元魔王は身動きが出来ない。
ビョッ
空気を切る音がどこか遠くに聞こえる気がする。大ジャンプだ。そして元魔王に追い付く。
...元魔王、涙目である。目で訴えかけている。「すんません。もうしません。だから許してぇ!」と。
元魔王よ、これだけは伝えよう。
「だが断る」
慈悲はない。憎むのなら、俺ではなく己の整った顔を憎むのだなっ!
アオトは空中をクルクル回転し、勢いをつけて...
「ヨイショォォォォオオォォ!!」
踵落としをぶち込む。勿論、顔面に。
「ギャァァァァァアアアァァァァ」
下から悲鳴が聞こえた気がしたが、多分気のせいだろう。
ストンッと、華麗に着地するアオト。すぐ横には、頭より下だけ地面から出ている謎のオブジェがある。頭より下だけ地面から出ている何かは、必死にバタバタするも、抵抗虚しく暫くすると沈黙した。
流石に殺すと(この森の管理が)面倒くさそうなので、地面から引っ張り出す。
ズボッ
「プハァッ!!し、死ぬかと思った...」
「大丈夫、この森に【次元の裂け目】がある限り、お前は殺さないから」
「あれ?この言葉、この森に【次元の裂け目】がなかったら私殺されてたのですかな?」
「も・ち・ろ・ん」
「ぐふぅっ!はぁはぁ、このゴミを見るかのような目線!堪りません!!アオト様!もっと私めを罵ってくだ...ゲフッ!」
聞いてるだけで不愉快な気分になったアオトは取り敢えず脳天にチョップを食らわせた。因みにこれは、“黒”と“白”の総意である。
「ご主人様ぁ!ありがとうございますぅ!!」
「誰がご主人様だ。誰が。...はぁ、もう諦めるよ。それより、俺は向こうの世界に帰る。だが、引き継ぎ【次元の裂け目】の管理、よろしくな」
「ハッ!この命に懸けまして、必ずや守って見せましょうぞ!!」
「お、重いな...まぁいい。じゃぁ頼んだぞ。じゃあな」
「はいっ!行ってらっしゃいませ!ご主人様!!」
...できれば女の子に言って欲しかったな。と、“黒”と愚痴りながら【次元の裂け目】に入る。するとグニャリ、と視界が歪む。瞬間意識が遠くなるが、耐えられない程ではない。一瞬景色がホワイトアウトする。思わず目を瞑る。徐々に外の光に目が慣れ始め、目を開けると......
「...帰ってきたな」
『あぁ、戻ったな』
数年前...約7年前に見た景色を少し思い浮かべる。確かここは一面焼け野原だったはずだ。
そして、2年経った今も相変わらず焼け野原だった。安心した。これで、実は何十年も経ってたとか話にならない。
そう、遂にアオトは帰ってきたのだ。約束の日まで、恐らく後7カ月ちょい。
「さて、次のプロセスに入るか」
アオトの旅はまだまだ続く。
お読み頂きありがとうございました。




