23話
~とある魔王様の追っかけの日常~
はぁはぁはぁ、魔王様に踏まれたい。ゲヘヘ。
おっと、すまない。だらしないところを見られてしまった。
俺はストカ!こう見えて、数少ないS級冒険者だ!巷じゃぁ、『影のストカ』とか『首切りストカ』やら『魔王のストーカー』なんて言われている。...最後の、俺の名前間違えてるじゃん。しっかりしてほしいぜ。だが、二つ名に“魔王”と入っているから個人的には最高なんだけどね。
......彼は知らない。冒険者ギルドでは、『幼女趣味』、『ロリコン』と呼ばれていることを。そして、彼が呼ばれている二つ名で最も呼ばれているのは最後のということを。
俺が魔王様の追っかけを始めたのは、確か10年前ある出来事がキッカケだった。
あの時、俺は結婚間近だった彼女を勇者のクソヤロウに寝取られ、自暴自棄になりながら【暗黒魔境】で自殺を計っていたときだった...
「ふっ、どうせ俺なんて生きてる価値のない人間なんだ。今まで頑張ってきたのにな...」
「......おじさん、さっきから独り言が少々うるさいのですけれど...」
「まぁまぁ、そんなこと言ってくれるなよ...おらぁ今から死のうと......ッ!誰だっ!?」
そこにいたのは目が覚めるような美少女だった。
「...はぁ、遂に俺も幻覚と幻聴が見聞きするようになったのか...」
「んな訳ないでしょう。そこで死なれるのは迷惑なので、他の森へ行ってくれませんか?」
「はぁ、幻覚にも存在を否定されちまったよ...早く死んで楽になろう...」
美少女が遂にキレた。
「だーー!もう、幻覚じゃないって言ってるでしょう!?どうしてそんなに頑固なんですかっ!?」
「だってよぅ、考えて見ようぜ?なんたってここは【暗黒魔境】なんだからさ。君みたいな可愛い娘が一人でこれるわけないじゃないか」
正論だった。
「かっ、可愛いなんて...//」
謎の美少女は照れてらっしゃる。おっ、もしかしてフラグ立った?まっ、伊達にS級冒険者やってないからな。結構有名だと自負してるぜ。
「もしかして俺に惚れたか?」
「あっ、それは絶対にないです」
...別に冗談で言っただけだし。悔しくなんてないし!ないったらないの!
「とにかく!ここで死なれると私が困ります!出ていって下さい!」
「う~ん、ここで何をするのか言ってくれたら退いてもいいけど?」
死ぬことなんざ、他でも出来るしな。
「配下です」
「はっ?」
「私の配下となる魔物をセレクトしに来ました。ここの魔力は濃すぎるのです。貴方がここで死ぬと一瞬でゾンビになって他の魔物を襲うから、魔物が怖がって出てこなくなるのです」
......はて?何故に配下?魔物の配下をつくるなんてまるで...
「魔王見たいじゃないか」
「うん?私魔王ですけど?」
「...はぁ!?」
「たから、私魔王ですって。多分貴方より強いですよ?戦って見ますか?」
おいおいマジかよ。こんな可愛い娘が魔王だって...?そんなの、そんなの...
「最っ高~に萌えるじゃないかっ!!」
「はっ!?」
今度は魔王が驚く番だ。
「えっ!?ほら、私魔王ですよ!?皆が怖がる、あの魔王ですよ!?」
「そんなの関係ないっ!!この世は可愛いが正義なんだ!!握手してください!!」
魔王様、ドン引きである。男の謎な迫力に負けて、つい握手してしまう。
「あっ、ありがとうございます!!貴女様のこと、絶対に忘れませんから!!」
「...えぇ、ありがとう。それよりこのあと用事を思い出したので急いでかえりますね」
「はいっ!お気をつけてお帰りください!」
バサッバサッ
魔王様、顔をひきつらせて急いで帰る。
(恐い!恐いわあの男!!人間には注意しなくちゃね...あぁ、寒気が止まらないわ。帰ってお風呂に入りましょう)
魔王様がドン引きしてるなんて露知らず、男は暢気に歩いていた。
「...よし、登録完了っと!これで魔王様の安否が確認出来るな」
ぐふふふ。完璧だぜ!『影魔法:マーキング』で魔王様の魔力を登録したから、勇者のクソヤロウが魔王様にちょっとでも傷を着けた瞬間に捻り潰しに行ってやろう。
「はっはっは!勇者め、覚えておけよ!」
勇者に対して下克上。
「魔王様ーー!愛してますぅ!!」
魔王様に対して愛の告白。
同時に二人の大物にケンカを売るスタイル。それも街中で。回りからは吹雪のような視線を受けているが、ストカは気にしない。そこに、ストカの友達登場。
「おいおいストカ、大丈夫か?そして今、魔王様愛してるとか聞こえたんだけど...」
「おぉ、友よ!貴様いいところに目を着けたな!いいか、魔王様はな.........」
魔王様のことをひたすら誉めちぎるストカ。それも3時間も。街中で。
街では、“ストカはロリコン”ということが暗黙の了解となり、早10年。この日は、アオトが空から落ちてきて、魔王を潰した日である。生き返ったので魔王はご存命です。
「......え?そんな...まさか...」
「どうしましたか!?隊長!」
ストカは『魔王様親衛隊』の隊長をしていた。彼が魔王様のことを布教しまくったおかげで、今はたくさんの魔王信者がいる。
「魔王様の...魔力が...消えた」
「魔力が、消えた...?それはつまり...」
「あぁ、魔王様が...殺された」
隊長の言葉を聞き、数々の魔王信者が涙を流し始める。
「そんな...魔王様が...」
「いやぁ...嘘だって言ってぇ...」
「誰が殺したんだ?」
ふと、そんな呟きが教会中を木霊する。
「勇者...勇者だ...」
「殺す...勇者を殺してやる...」
「チクショウ...俺の彼女だけじゃ足りないのかよ...」
余談だが、ストカの彼女を寝取ったのは先代の勇者であり、今代の勇者とは別人である。
「確か、勇者パーティーは魔王討伐に向かってるって...」
「そいつらが...魔王様を...」
「お前らぁ!!悔しくないのか!!俺は非常に悔しいっ!!だから...だからぁ...!」
ストカの悲鳴のような怒鳴り声が辺りに響く。
「あぁ分かってますぜ隊長!」
「隊長!死ぬときは一緒だ!」
「お、お前ら...」
無駄に結束の強い魔王信者たちが、黒い笑顔を浮かべる。
「お前らぁ!!勇者は憎いか!!」
「「「おおーー!!」」」
「なら、我等すべきことはたったひとつ!!」
大きく息を吸う。
「勇者の討伐だーーー!!!」
「「「おおーーーーー!!!!」」」
こうして、今代の勇者は討伐された。だが、本来はアオトが落ちたせいで死んだため、勇者は無罪である。
この話は、“残念勇者”として、代々語り継がれるのであった。
死者蘇生とは簡単に言うと、魔力で無理やり体の形を創り、そこに魂をぶちこんむだけ。
だから、魔力の質はアオトと同じだったりする。
ストカが魔力を読み違えたのはそーゆーことです。




