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20話

 6歳のアオト、孤児院にて。

 アオトはとても静かな子供だった。同い年の子供達とも遊ばずに、一人でずっとぼーっとしていた。

 その時、アオトは“無”であった。特にやりたいこともないし、欲しいものもない。したがって将来の夢なんかあるわけがない。友達もいないし、親もいない。本当にアオトにはなにも無かったのである。


 5才のとき、アオトは『友達』というものに興味を持った。何故かって?特に理由等はない。唯の気まぐれである。ターゲットはいつも一人で本を読んでいる女の子である。下心なんて一切ない。...結構可愛い女の子だったけど。少しくらい下心も...あったりなかったりする。

 会話の経験が全くないアオト。勇気を振り絞り、声をかけてみる。


 「ね、ねえ。僕と遊ばない?」

 「やだ。あっち行って」


 女の子、一刀両断である。決してアオトの顔が悪かったとかではない。女の子は読書が好きなので、本を読みたいから遊びたくない。という意味であった。決してアオトの顔が(ry


普通の子供なら「ふーん、そーなんだー」ぐらいにしか思わない。だが、アオトは違った。初めての同年代との会話。そして、誘うという行為。それをバッサリ切り捨てられる。アオトにとってはトラウマ物である。実際、アオトの心には多大なダメージを与えた。


 それ以降だろう。アオトが大人とすら喋らなくなったのは。“人と話す”という概念自体が嫌いになった。

 そして追い討ちをかけられる。


 孤児院でも、結構カーストの高い子供のグループが読書少女?幼女?に声をかける。アオトはそれを見て、自分の二の舞になるんだろうなぁと、考えていた。

 しかし、現実は残酷であった。そのグループの中で、一番カッコいい男の子が女の子に声をかける。遠くてよく聞こえないが、恐らく「俺達と遊ばない?」的なことを言ったのだろう。女の子、目を輝かせて「うん!遊ぼ!」と、可愛らしい大きな声で言った。

 

 アオトは耳を疑った。アオトが声をかけたときは軽く一瞥し、まるでアオトを罵るかのように言われたあの言葉。そして、今行われた会話の嬉しそうに告げた言葉。全くの別人のようである。本を向こうにほっぽって行ってしまった。


 アオトは疑問に思った。自分とあの少年は何が違うのか。3日間考えた末に出た結論。


 「顔か?顔が違うのか?」


 そう、ルックスである。確かに自分の顔は世間一般ではお世辞にも格好いいとは言えない。そんな残念な顔だが、世間の評価なんて当時のアオトにはよく分からなかった。死ぬ訳でもないのに、なんでそんなに気にするのか不思議ですらあった。

 だが、理解した。アオトは顔こそ悪けれど、脳は優秀であった。そう、それ故に理解してしまったのだ。


 アオトは悟った。“顔が良くないと相手にされないのだ”と。アオトは考えた。顔は変えられない。なら、どうしたら自分を良く見せることが出来るのか。そして、行動に移した。それは...

 

 ......性格を変えたのだ。もとの“根暗”だった性格は隠し、相手に悟られないようにした。徹底してそこは頑張った。次に、性格を作った。“明るくて少し抜けている”性格を。


 結果から言おう。逆効果であった。不細工で無駄に明るくてずぼらな子供、という評価になってしまった。


 アオトは心を閉ざした。そうすれば無駄なダメージを負わずにすむから。

 ...最初に逆戻りである。戻りすぎて、スタート地点よりやや後方に行ってしまったが。


 そうしている間に1年くらい過ぎただろうか。


 6才のある日。不思議な大人が来た。その人はアオトの両親の幼馴染みだったらしい。この世界では、12才で成人する。6才の誕生日は、半成人として祝うことを義務付けられている。


 どうやら、アオトを祝うためにアオトの家まで行ったが、アオトの家は差し押さえられており、聞き回ったらアオトが孤児院に居るという情報をつかんだらしい。

 ......そして、“アオトを引き取る”ために来たとも言っていた。


 アオトは最初は何を言ってるか理解出来なかった。

 自分なんかを引き取っても、なんのメリットもないからだ。


 気付いたときには、孤児院長に着けた大人が笑顔でアオトと歩いていた。

 遂にアオトの恐怖心より好奇心が勝ったのか、恐る恐る質問した。


 「......あの」

 「おう、何だ?」

 「何故僕を引き取ったのですか?そんなことをしても貴方には何のメリットもないでしょう。むしろ、食費が掛かる分、デメリットのほうが大きいと思いますが?」


 はぁ 短いため息のあと、「やっぱりあいつの子だなぁ......」と遠い目をし始めた。

 そんな様子を見たアオトは首を傾げる。すると、大人は、


 「俺はさ、君のお父さんとお母さんに沢山迷惑をかけてきたんだ。それこそ、一生掛けても返せないくらいの恩を感じている。それに...」

 「それに?」

 「約束したんだ」

 「約束?」

 「あぁ。互いが困ったら、必ず助け合おうってね」

 

 まぁ、昔の話だけどね。と、苦笑いをしている。


 「こんな理由じゃ、駄目かな?」

 「う~ん...納得した...」


 若干腑に落ちない部分もあるが、一応納得はした。

 

 それから数分後、アオトはある家に注目した。そこには、なぜか2人の家族とおぼしき人物が此方をガン見している。それを見た大人が


 「あっ、そろそろつくぞ」


 と、伝えてくる。

 途端に緊張してきた。アオトは極度の人見知りと化していた。それもこれも、孤児院での出来事が原因なのだが。

 

 家の前に到着。先程のガン見してた人たちの前に来た。すると、ダッっと子供が駆け寄ってくる。そしてこう言った。


 「アオトは今日から俺達の家族だ!」


 はっ?と一瞬放心する。だが、院長との会話を聞いていた限り、なんとなぁく予想はしてたので直ぐに復活する。

 横に立っている大人にチラッと目線を向ける。すると...


 「大体の事情は院長から聞いた。辛かったら俺に何でも言え。相談なら乗ってやるぞ」


 そんな回答は待ってねーよ!そんな事を思うが言葉には出さない。否、出せない。


 「...あ、れ?なんで...僕...?」


 アオトは泣いていた。何度も目を擦り、涙を止めようとする。だが、一度流れた涙は止まる気配がない。すると、女の人が寄りアオトを抱き締めた。


 「無理しなくていいのよ。まだ子供なんだから。今くらいは、泣いても誰も文句なんて言わないわ」


 「う、うっ、ひっく。うーーーーー」


 この日、アオトは初めての“愛”を知った。











 アオトの白い部分が声を挙げる。「このまま黒に染まってはいけない!」、「俺は大切な人を守るために強くなったのだろ!」と。

 黒も負けていない。「こんなことにしたのはアイツらだ!」、「俺はもう誰にも縛られない!」と。


 その叫びは、どちらもアオトの物であろう。いまだ、体には制御しきれていない大量の黒い魔力が障気として体に絡み付いている。しかし、変化が起こる。黒い障気に、白が混じり始めたのである。障気だけではない。髪の毛も、黒に白が混ざり始めた。


 アオトの精神は不安定な状況下にある。殺されかけたり、負の感情が爆発したりした。

 そして今、アオトの中には2つの感情が渦巻きあっている。アオトは知っている。この争いは無駄であると。

 

 だから切り離した。


 “感情”を2つに。


 その瞬間、アオトの中は二人目の人格が産まれた。そう、アオトは意図的に二重人格になったのだ。


 髪の毛は黒髪と白髪が不規則的に並ぶ。

 瞳は、右目は黒。左目は白となった。俗に言うオットアイである。


 “黒”は“白”に問う。今こそ復讐をするべきではないのか?と。


 “白”は“黒”に問う。そんなことをして一体何になる?と。


 この話し合いは平行線である。だが止めない。何故なら、二人ともアオトであるから。どちらの言い分も分かっているが故に引くわけには行かないのだ。


 話し合いは3日3晩続いた。


 “黒”は言う。俺が本当の人格だと。お前は所詮作り物でしかないんだ、と。


 “白”は言う。だからどうしたと。結局使われたのは作り物である俺じゃないか、と。



......“白”は、妥協案をだす。日常にお前では、必ず要らぬいさかいを起こす。だから、日常生活は俺がやる。だが、戦闘で本当にマズイときは譲ってやろう。思う存分あばれろ、と。


 遂に黒は折れた。


 分かった。その代わり、1週間に1度は必ず代わること、と。それから、しっかりと意識は共有しろ、と。


 黒は疲れていた。慣れない“怒り”に身を委ねていたから。最早、復讐など頭に無かった。


 “黒”の意識が消える。それと同時に髪の毛と瞳を染めていた黒い何かが消え、ストレスのせいで真っ白になった髪の毛と極度に薄くなった金色の瞳を取り戻す。......髪の色は戻らなかったが。


 アオトは体を起こす。うーーーん!と凝り固まった骨の節々を伸ばす。


 「はぁ、疲れた。やっぱり“白”のほうが体に馴染むな...」


 “何か”に吹き飛ばされて木っ端微塵になった体は、とっくに治っている。不安定な精神の時に生存本能が働き、再生させていた。取り敢えず第2ステージからでる。

 

 少し歩くと、ゴブリンと遭遇する。いつものようにショートソードを抜き、ゴブリンに飛びかかる。


 「あれっ?」


 体に違和感を感じる。何時ものように体が動かない。思うように体を動かせない。直後、脳から声が聞こえた。


 『あっ、忘れてたけど俺が剣技貰っといたから。お前、魔法しか使えないんで夜・露・死・苦!』


 ぶちっ


 「ざけんなゴルァァァァァ!!」


 スカッ


 空振り。俺の体はがら空きである。

 ゴブリンがそんな隙を見逃すはずもなく...


 「グギャッ!」


 背中に回し蹴りをくらい、吹っ飛ぶ。多分何本か背骨逝ったと思う。バキバキって音したし。


 最近吹っ飛ばされてばっかだなぁ。と思いながらアオトの意識は闇に沈んだ。


 






_____固有名詞:アオト の身体を最適化いたします。


_____部分:脚、腕 最適化。本人の希望、“なるべく厳つく”条件に沿って最適化........失敗。再挑戦........失敗。ーーー個体名:魔王 の因子を体内に発見。因子組み換え、最適化........成功。


_____部分:体 最適化。本人の希望、“ガッチガチの筋肉ダルマ”条件に沿って最適化........失敗。再挑戦........失敗。ーーー個体名:魔王 の因子を組み込み、再挑戦........成功。


_____部分:顔、髪 最適化。本人の希望、“渋いオジサンフェイス”条件に沿って最適化........失敗。再挑戦........失敗。ーーー個体名:魔王 の因子を組み込み、再挑戦........成功


_____固有名詞:アオト の希望“渋くて頼り甲斐のある筋肉ダルマ”、第三者視点、“絶世の美少女”。........最適化終了。“文句は一切受け付けない。筋肉は自分で頑張れ”と応援。



 夜な夜な、バキッ...バキッとアオトの体は不気味な音を立てて魔改造されていたらしい。

 自分の変化について知るのは、もう少し先のお話...

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