13話
...この森は天国かも知れない。30分位森の中をフラフラするだけで、必ず魔物の群れと遭遇する。うーん、【叡智なる大迷宮】にも行かなくちゃ行けないんだよなぁ...
よし、ひとまずの生活の拠点はここにして、飽きたら大迷宮に行こう。ふっふっふ。さぁ、レベル上げの時間だっ!
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「本当なんだって!本当に“世紀末魔王”は【暗黒魔境】に居たんだって!」
「はいはい、寝言は寝て言いましょーねー。
...ていうか、あれほど行くなって言ったのに【暗黒魔境】へ行ったんですかぁ...」
「あっ...」
「ルール違反として、冒険者ランク下げさせてもらいますねぇ♪」
「ちくしょぉぉぉおおぉ!」
荒くれものとして有名である大男が、華奢で可憐な受付嬢に言い負かされている絵は、なんともシュールだったそうな。
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「はぁ、はぁ、はぁ、中々、やるな」
『グルルゥゥ...貴様、こそ、人間に...しては、やる...な』
......俺がこの森に住み始めて2年とちょっとがたった頃、“それ”は突然やって来た。
『グルルラァァァアアァァ!!』
いきなり空から咆哮が降ってきた。
「なんだっ!?」
ドカーーーン!!
咆哮が落ちた場所は半径10Mはありそうなクレーターが出来ていた。“降ってきた”と言うことは、降らせた原因が頭の上にいる。恐る恐る頭上を確認してみる。すると、そこには-----...
「...ドラゴン?」
薄いエメラルド色をしたドラコンが旋回していた。初めて見たドラゴンに驚きと困惑を隠せないアオト。下を向いて独り言が始まる。ここ最近の考え事をするときのアオトの癖である。こんな危険な森の中では自殺行為も甚だしいのだが、アオトなので...まぁ、大丈夫であろう。
「何でこんなところにドラコンが?向こうの世界では、確か高い山の頂上にしかいないはず。向こうとこっちでは、ドラコンの生体は違うのか?ブツブツブツ...」
完全に自分の世界にトリップしたアオト。そして結論に至る。バッ!と効果音がするほどの勢いで上をむき、叫ぶ。
「経験値が自分から来てくれた!...くぅぅ~!血が騒ぐ!」
そう、この世界に来て間もない人間がすぐに答えを出せる訳がない。だから、考えることを放棄した。そして出た結論は、“本能に従おう”である。なんとも馬鹿っぽい結論なのだが、コレがアオトである。
次の瞬間、アオトの体が一瞬宙に浮く。
「あわわわわわわ。...何事だ!?」
前を向いたアオトの目に入ったのは、海を連想させるような青く、澄んだ双眸であった。
「ひゃうわっ!!」
『我を前に騒がしいぞ。人族の子供よ』
シャ、シャベッタァァァッ!
......確かに焦りすぎだ。こういうときこそ深呼吸!ひっひっふー。ひっひっふー。よし、落ち着いた。
「...ふぅ、何か用か?用件があるなら早めに言ってくれ。俺も忙しいんでな」
『お主、切り替え早いのぅ...そんなことより魔物たちに聞いたぞ。ここのボスはお主じゃないのか?』
はて?ボスとは?
「...ここの魔物達って俺のことそんな目で見てたの?」
俺のジト目が魔物達を精神的に攻撃!魔物達はジト目から顔を反らす。...以外に器用だな。
『否定せんってことは、やはりお主が...』
「あぁ、多分そうだぞ。で?何が用だ?いきなり咆哮の雨を降らしといて、挨拶に来たとかじゃないよな?」
『勿論である。...実は我、武者修行中であってな。最近、魔物達の間で結構有名な話があってな。【暗黒魔境】を新しい統べるボスが人間らしいのだ』
「へぇ、俺とお揃いじゃないか。しかし、【暗黒魔境】か...随分ハードで鬼畜な場所なんだろうな」
【叡智なる大迷宮】をクリアしたら、是非とも行ってみたいものだ。
『...お主、本気で言っておるのか?ま、まぁいい。だから、強き者よ!我の糧となって貰うぞ!』
ドラゴンは先程の咆哮の強化版である、“嵐之咆哮”を打ってくる。
「何がだからか知らねぇが、こんなところで死ねるかぁぁぁぁ!」
これが2年間の修行の成果、迎え撃つぜ!
「真.剣技:一文字ッ!!」
ドラコンの咆哮が“面”だとしたら、俺の一文字は、“点”だ。範囲攻撃に対し、一点突破を仕掛ける。結果なんて火を見るより明らかである。
咆哮が晴れた。そこには...無傷で剣を構えているアオトが立っていた。
『なぁっ!?』
無傷で受けられるのは、流石に予想外であったのかドラゴンが一瞬固まる。だが、その隙はアオトにとっては充分過ぎた。アオトの体を蒼白い“気”が包む。これは、汎用能力である身体的強化が進化したもので、名を“限界突破”と言う。これは時間制限こそ短いが、自身のステータスを爆発的にはね上がる。...確か4倍くらいはした気がする。これを使ったと言うことは...
「短期決戦と行こうぜ?覚悟しろよ、蜥蜴野郎!」
『チィッ!生意気なっ!』
アオトの2振りのショートソードと、ドラコン...碧龍の鋭い爪がぶつかり合う。
キィィィィィン!キィィィィィン!
音こそかろうじて聞こえるものの、肉眼では捉えられない程の速度で高速移動し、攻撃し合う二人(一人と一匹)。周囲の魔物達は、被害を食らわないような場所で静かに戦いの行方を見守っている。
「...くははははは!楽しいなっ!蜥蜴!」
『クゥッ!化け物めっ!』
「ヒャッハーーー!」
拮抗していたと思われていたが、徐々にアオトが押し始める。段々と碧龍の体には、赤い線が増えていく。
30分、いや、1時間は打ち合っただろうか。もしかすると、それより長かったかも知れないし、短かったかも知れない。遂にアオトが碧龍に決定機を見つけ、力任せにぶち切ろうとした。碧龍もその未来を想定し、咄嗟に目をつむる。...衝撃が来ない。その事を不思議に思った碧龍が目を開けると、そこにはうつ伏せに倒れ、荒い呼吸を繰り返すアオトの姿があった。
(しくじった~~!限界突破が切れちまった。くそ、暫く動けないぞ!)
そう、最悪のタイミングでアオトの限界突破が切れてしまったのだ。普通なら、このチャンスを逃す碧龍ではないはずだが、碧龍も碧龍で血を流しすぎたため、中々思うように動けない。
「はぁ、はぁ、はぁ、中々、やるな」
『グルルゥゥ...貴様、こそ、人間に...しては、やる...な』
恐らく、次の一撃が互いの最後となるであろう。二人とも、なけなしの魔力を体からかき集め、最後の一撃を穿つ。
「蜥蜴ぇ、はぁ、名前、は...なんだ?」
『はぁ、我、は...碧龍:、ゼノゲイト、と申す。貴様、は、何と言う?』
「アオト...ただの、アオト...だ」
『アオト』
「ゼノゲイト」
「『いざ、尋常に勝負!』」
刹那、アオトが地面を抉り音を置き去りにする速さで接近すると同時にゼノゲイトは、“嵐之咆哮”を放つ。だが、それを読んでいたアオトは咆哮に範囲外に飛び、ギリギリで避けるとゼノゲイトの首元に肉薄する。一瞬の邂逅。碧龍の目が語っていた。
“見事なり!”と。
龍の癖に漢だな、と苦笑しつつ、ゼノゲイトに向けて斬撃を放つ。
「俺の! 勝ちだっ!!!」
少しのタイムラグの後、ゼノゲイトの首が静かに落ちる。
ザシュッ......ボトリ
___________レベルが上がりました_________
___________レベルが上がりました_________
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...
「はぁーーー!楽しかった!」
こんなとき、“疲れた”という言葉より、“楽しかった”と言葉が出る辺り救い用のない戦闘狂である。だが、体は心以上に疲れているのか、碧龍の死体を目の前にアオトの意識はブラックアウトし、そのまま熟睡してしまうのであった。
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