10話
時間があったので2話目です。
町に入った瞬間に、俺を見た町人が叫んだ。
“世紀末魔王だ!死にたくなければ早く家に入れ!”
そして、町に出禁を食らう、と。これは一体どういう...あっ。世紀末魔王って...ばあちゃんじゃん。
拝啓、ばあちゃん。“世紀末魔王”の2つ名、しっかりと後世まで伝わってるよ。でもさ、ばあちゃんのせいで俺も“世紀末魔王”扱いです。それについて一言。
どうしてくれるんだよぉぉぉぉおおぉぉぉ!!
町に出禁食らったんだけどぉ!?本当に何したの!?
はぁ、過ぎたことは仕方がない、か。それにしても、ばあちゃん...何したの?取り敢えず、体中に付いた返り血落とさないと...
と、言うことでやって参りました!ついさっき、もう二度と来ることが無いだろうと思っていた森です!今、絶賛川探し中です。
「川~、川~、川はどこだ~?」
「あっ、川ならここを真っ直ぐ進んだ所にありますよ?」
「えっ!?本当ですか!?ありがとうございます!」
「いえいえ、お役に立てて良かったです。それでは失礼し...」
「いや、ちょっと待て。お前、何勝手に人の独り言にいきなり介入してきた挙げ句川の場所教えてくれちゃったの?ありがいんだよコンチクショウ!」
そこに立っていたのは、中性的な顔立ちをした20代前半位の若い青年だった。少しだけ人間と違うところと言えば、背中に漆黒の2対の羽が生えていること位か?...少しかな?まぁいいや。
「...情緒不安定ですか?」
「やかましいわっ!」
久しぶりの人との会話で少しだけテンション上がっただけだしっ!
「それもそれで...」
「人の心読むな」
全く!この世界の住人は録な奴がいないな!
「貴方のお婆様程ではありませんよ?」
「だから人の心を...ん?お前、ばあちゃんのこと知ってるのか?」
「勿論で御座いましょう。だって...」
突然、奴の周りにとても濃厚な魔力が漂い始める。
「貴方のお婆様に滅ぼされた魔王ですもの!」
や、そんなに胸を張って言われましても...
「そんなことより、よく俺がばあちゃんの孫だってわかったな」
「えぇ...私が魔王だって結構勇気だして言ったのに...そんなことって...」
「おーい、大丈夫かー?」
「ふふっ、どうせ私の存在価値なんてそんなもので御座いましょう。でも、でも...」
どうやら、元魔王は別の世界にトリップする術を持っているみたいだ。
「でもっ!そこがいいっ!!」
なんか雲行きが怪しくなってきた。おまわりさーんコイツです。
閑話休題
どうやら元魔王は、ばあちゃんの身に宿す狂気、残虐さに随分惚れ込んでいるらしい。コイツ、昔は負け知らずだったがばあちゃんにギッタンギッタンにされた挙げ句、調教(死んでは生き返り、死んでは生き返りを繰り返したらしい。これってごうM...いえ、何でもないです。)されてこんなのになってしまったらしい。俺が、ばあちゃんの孫だと分かったのは、魔力が酷似していたからなんだとか。魔力は遺伝子単位で似るため、確信したらしい。あっ、そうだ。コイツならばあちゃんが町で嫌われてる理由分かるかな?
「なぁ、元魔王。どうしてばあちゃんが町であんな扱いなんだ?こんなのでも、一応魔王だし、倒して世界を平和にしたんじゃないのか?」
「ぶつぶつ...えっ?あぁ、その事ですか。私、コレでも結構顔が広かったのですよ。話は変わりますが、お婆様はどのように魔王城からここまで来たと思いますか?因みに行きは徒歩で来たらしいですよ。後、距離的には150㎞位とします」
「さぁ?行きと同じように歩いたんじゃないか?」
「実はですねぇ、乗ってきたのですよ」
「何に?」
「私に、です」
「はぁぁぁ!?」
「そこで、話は最初に繋がる訳ですよ。顔の広い私の背中にお婆様が乗っている姿を想像してみて下さい。そこで町人達はどお思いますかねぇ...?」
元魔王の上に乗った、狂気を顔に張り付けたような人間が町に来ると...
「新な魔王が誕生した...とか?」
「はい。まさにそのとうりになりました。正にお婆様は恐怖の対象かと」
「はぁ...もぅいいや。それより元魔王はこんなところで何してたの?」
「【次元の裂け目】から出入りする人間がいないか、いたとしたらその対象の排除を、お婆様から命令されました故」
「俺のことはいいのか?」
「お婆様のお孫様をこんなところで死なせるには勿体無いと判断しました」
完璧にばあちゃんの命令を破っていると思うのだが...いいのだろうか?まぁ、本人が何とも思ってないのなら...いいか。
「...因みに、“世紀末魔王”ってどのくらい有名なの?」
「恐らく全世界で、かと」
はぁぁぁ 深い深いため息。
「もぅ、この町じゃなくていいや。元魔王はこのまま【次元の裂け目】の管理お願いね。俺は違う町の近くの森でレベル上げしてるよ」
「レベル上げなら【叡智なる大迷宮】に行かれてはどうですか?あそこなら全体的に魔物のレベルが高かったと記憶しております」
「へぇー、そこでいいかな。どっちに行けばいいの?」
「この森をこのままずっと真っ直ぐに進めばよい、と記憶しております」
流石にザックリし過ぎだろう。
「ずっと真っ直ぐって...どのくらい進めばいいのさ?」
「...200㎞くらい?」
「遠いし、疑問形やめ。こっちまで不安になってくるだろう...」
「行きますか?行きませんか?」
...今の俺、凄いジト目だよ?コイツ、若干頬赤らめてやがる...駄目だ。真性の変態だ。
「行くよ。行ってやるよ!行きますともっ!」
「はい。その心意気です。頑張って下さい」
「はぁ、行ってきます」
「えぇ、行ってらっしゃいませ」
なんとなくこのやり取りに感動を覚えながら、重い足取りで【叡智なる大迷宮】を目指して歩き始めたらのであった。
...まだアオトは知らない。【叡知なる大迷宮】なんて行かず、ずっと他の場所で修行をすることを...この時は、まだ。




