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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
6章・I plan on her's plan
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【12-2】

12-2


 この世界には魔法というものがある、いや、「あった」という方が正確かもしれない。確かにあった筈のその存在は、近代化に伴う科学技術の発展ともに、いつしか空想の産物と化していった。むしろ現在の科学技術は最早魔法と呼んでも差し支えないのかもしれない。

 けれども、魔法という存在に執着した者達が居た。かつて存在した魔法を利用しようとした者達は、その為に幾つもの手段を講じその為の組織を造り上げた。魔法を現代に蘇らせようとした。それは機関ミズガルズと呼ばれた。


「機関ミズカルズは魔法を研究する為に当時の内閣府情報局長が設立した組織だよ。そこで行われていたのは人工的に魔力生成を可能とし、魔法術式を解析できる機関、通称カフトワンダーの開発。そして魔法使いの人為的な発生。その二つだね」


 人間にはそもそも、大気中に存在する魔力を取り込み操ることが出来る能力、通称「魔術回路」が備わっているのだという。しかし、現代人には魔力を操る事が出来なかった。でなければ、この世界から魔法という存在が消えたりなどはしない筈である。

 一部の人間は現代でも魔法を使える。その事実が僅かながらに確認されていた事から、人間にそもそも備わっている魔術回路に対して無意識の内にロックのようなものをかけてしまっているのではないか、という仮説を機関ミズカルズは立てた。魔術回路に無意識の内にかけたロックさえ解除できれば魔術回路が人間に備わっている以上、魔法が使えるようになる筈である、と。


「月夜-つや-ちゃんみたいな、カフトワンダーに頼らない魔法使い。それを人工的に作り出す、って言うのが機関ミズカルズの最終目標だったんだよ」

「そんな事いってもどうやって」

「訓練、暗示、投薬、手術、その他もろもろ」

「そんなの」

「勿論、正規合法で優しい手段なんかじゃなかった」


 数少ない魔法使いのデータでは、その何れも幼少期に魔術回路の萌芽が認められたことから機関ミズカルズは幼少期の児童に対して魔法使い生成の為の特別なプログラムを施した。実験対象にする為の児童の徴収には児童養護施設に預けられた身よりの無い子供が選ばれた。

 しかし機関ミズカルズの行った魔法使いの人工的な生成実験の成果はあまり芳しくないどころか無理な身体、精神の酷使、投薬の副作用といった要因で次々と死亡者を出す。にも関わらず機関ミズカルズによる魔法使い生成計画は進行し続けた。

 そうして何人もの犠牲者を出しながら奇跡的に二人の成功例が生まれた。魔法使いという存在。それは順調に成長し成果を残した。


「その二人は水希-みずき-と柚希-ゆずき-と名付けられたんだ」

「それって……」

「だけど問題が生じたんだよね。六年前、魔法使いの成功例だった水希は研究施設から脱走しちゃったんだ。水希は脱走中に都内の繁華街で発作を起こして、救急車で中野の病院に搬送されたんだけど。それは機関ミズカルズにとって想定外の事態だった」


 児童養護施設から引き取られ特殊な実験を受けていた少女、水希。駅前の繁華街で水希は倒れ救急車によって搬送された病院で原因不明の発作で死亡した。機関ミズガルズが内閣府と繋がりはあったが、この一件に介入するのが遅れてしまう。

 業務通り水希の治療を担当した医師は、水希の特異性に気が付いた。謎の薬物反応。奇妙な手術痕。水希の所持品。

 水希は死亡したが、それは医師の不手際というよりも、彼女の特異性によるものであった。


「月夜ちゃんは覚えてないと思うけど、六年前に脅迫事件が起きた。山盤寺-さんばんじ-という医師が、児童養護施設ひまわりの代表者の上幹-かみもとき-という男にファシロペウムの世間公表をネタにして金銭を求めたっていう事件があったんだよ。

 ファシロペウムは当時児童に大量に投薬されていた精神興奮剤。発作を起こさせることで魔術回路のロックを一時的に解除させる、ってやり方を使って魔法使いを作ろうとしてた」

「それがまさか」

「死亡した水希を担当したのが山盤寺医師、そして水希を機関ミズカルズに提供したのがひまわりだよ」


 山盤寺医師は水希という少女が所属している筈なのが、ひまわりであるという事まで調べ上げその代表に対して脅迫事件を起こす。それは彼が正義感に駆られてのものであった。世間的に注目を引く様な事件を起こすことで、ひまわりに警察の捜査が向くことを期待した。

 しかし、山盤寺医師は自殺という形で事件は決着する。


「事態の露呈を懸念した機関ミズカルズは山盤寺医師を暗殺することで収集を図ったけど、結局その一件で機関ミズカルズは魔法使い製造計画を中止した。まぁその後復活してカフトワンダーを造っているけどね」

「水希さんはじゃあ、一体」


 前回の戦闘の時、衛都楼水希-えとろう みずき-はカードと同時に別の魔法を使っているように見えた。月夜風花-つや ふうか-の言葉に衛都楼水希は小さく笑う。


「二人成功したって言ったでしょ。それがあたし。柚希」

「死んだその子の名前を名乗っているってこと?」

「そうだね」

「なんで……そもそも、あなたは何者で何をしているんだ」

「魔法使い製造計画に平行してカフトワンダー製造計画も進められた。当たり前だよね。そっちの方がコストもリストも低いもん」


 魔力生成装置の開発は進み、カフトワンダー実用化に近づく。そこで機関ミズカルズは方針転換をした。魔力生成装置、これを人体に組み込むことで疑似的な魔法使いを作り出すことは出来ないか、ということだった。

 そうしてそれは成功した。


「それが静玖-しずく-だよ」

「静玖さんが……」

「魔力生成装置を埋め込まれた疑似的な魔法使い、そして実験により人工的に作られた魔法使い。施設で偶然にも会った二人は自分たちの境遇に耐えられなかった。だから、世界に復讐を誓ったんだ」

「復讐?」


 カードが全て集まった時に表示された座標。衛都楼水希が言っていたラグナロクという言葉。


「カードが全て集まった意味、この場所の意味。それが水希さんの言う復讐なのか」



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