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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
6章・I plan on her's plan
60/70

【12枚目・祈りという行為は彼女にとって代替手段になり得るか】

12-1


「風花-ふうか-ちゃん、起きて。もう着くって」


 祐希奈-ゆきな-が私を揺すってそう声をかけてきたので私は目を覚ました。衛都楼水希-えとろう みずき-を追いかけて急遽、新幹線に飛び乗った私はようやっと岐阜県まで到着した。興奮していたが、車内では気絶するように寝てしまっていた様だった。飲みかけのペットボトルを飲み干して私は新幹線を降りた。

 祐希奈を連れてホームに降り立ち深呼吸をする。携帯で次に乗り換える路線を調べる。

 岐阜県の山中を示していた緯度と経度。衛都楼水希に別の足があるとも思えない以上、彼女も私と同じように新幹線と在来線、バスを利用して近くまで行き魔法で飛んでいくしかないに違いない。そこまで差は出ないだろう。

 何度地図を見てもそこには何もない。そんな山奥に衛都楼水希が求めている何があると言うのだろうか。


「私、何してんだろ」


 ふとそんな言葉が口をついて出た。こんな訳の分からない事に巻き込まれて、そして今こんな所まで来てしまった。衛都楼水希という人間を私はよく知らない。彼女は何を思って、魔法少女となる事を選び、刃を向ける決意が出来たのだろうか。

 そして何を知っていて、何を求めて、何を成そうとしているのだ。


「祐希奈はね、風花ちゃんが水希ちゃんに会いに行くのは正しい事だと思うよ」


 私の手を握った祐希奈がそう言った。


「喧嘩したままじゃ、駄目だよ」


 その言葉は妙に幼く聞こえた。そうである事に間違いは無いはずであるが、それは何故か奇妙に思えた。

 祐希奈が私の手を引く。

 衛都楼水希の言葉が私の何処かで反響していた。今、私がいるのは正解の方だろうか。それとも衛都楼水希を突き動かすその何かが正解の方にあるのだろうか。

 岐阜県、常谷山-とこやさん-。標高1400メートル。その中腹をあの座標は示していた。新幹線から単線を乗り継いで、常谷山の最寄りの駅から登山道入り口まではバスを利用して向かうとバスを降りる際に運転手に呼び止められる。


「お嬢ちゃん。この往復バスが最終だよ、大丈夫? もう夜になるし何処に行くの? そんな格好で山登るんじゃないよね?」

「お父さんがそろそろ下山してくるの。お姉ちゃんと一緒に、この先の駐車場で待ってることにしたの」


 答えに窮した私を祐希奈の咄嗟の嘘が助けた。祐希奈が笑顔を見せて手を振ると、運転手は納得したように手を振って返す。夕日に少し翳りの差した空を見ながら私は言う。


「バス無いって。帰れなくなるかも」

「でも、行くんでしょ? 風花ちゃん」




【12枚目・祈りという行為は彼女にとって代替手段になり得るか】




 衛都楼水希には一つの予感があった。月夜風花-つや ふうか-は自分を追って此処まで来るだろうと言う予感だった。それは驕りでもあったし、確信でもあったし、願望であるのかもしれなかった。

 何の音もしない冬の乾いた空気が、日が沈む度に冷え込んでいくのを感じる。カードが全て揃ったことで示された座標。その場所に衛都楼水希は居た。山中に存在した開けた一画。立ち枯れた背の高い草の陰に腰の高さ程の、何か塔の様な物があった。金属製で土で汚れている。所々、錆が見えるが完全に風化した風でもない。座標の位置に意味深にあるそれは、衛都楼水希の求めている物であると確信していたが、少し拍子抜けもした。


「なんかしょぼいね」


 静玖-しずく-にそう笑いかける。そんな衛都楼水希に静玖は少し苛ついた様子で言った。


「始めないの?」

「もうちょっとだけ待って欲しいな。多分、月夜ちゃんは来るはずだから」

「何であいつを待つ必要があるわけ」


 衛都楼水希は答えなかった。傍らに刺し置いていた刀の柄を握るとそれを引き抜く。驚いて静玖は振り返る。そこに降り立った姿を静玖は睨みつけた。濃緑の巫女装束と大振りの剣。


「やっぱりそうだ。月夜ちゃん」


 月夜風花は祐希奈に隠れているように、と言って彼女を下がらせた。そうして衛都楼水希の方へゆっくりと歩いてくる。動こうとした静玖を手で制して衛都楼水希は月夜風花の前に立った。


「来てくれたんだね月夜ちゃん」

「私を待ってた?」


 衛都楼水希の言葉に月夜風花は少し困惑した。衛都楼水希の目的は全く見当が付かなかったが、しかし少なくとも誰かが来ることを待つ必要などありそうにもなかった。衛都楼水希が指先を唇に添えて言葉を探してから楽しそうに言う。


「そうだね。なんて言うかさ、誰かに聞いて欲しかったんだろうね、あたし。今まであったこと、これから起こすこと。ようやっと此処まで来た感慨深いものを、あたしの中だけにしまっておくのに耐えきれそうに無かったんだよ。誰かに知っておいて欲しくて仕方がない、それが月夜ちゃんなら尚更そうだよ」

「なら教えて、水希さんが今何をしようとしているのか」


 月夜風化は一呼吸置いて、そうして視線を衛都楼水希へと合わせた。視線は向けられていても、その意識は衛都楼水希の手にした得物に引かれていることに気付いて衛都楼水希は刀を地面に突き立てて、手が届かない様、二歩前に出る。

 それを見て月夜風花は剣の柄を握る手から力を抜き弛めた。

 衛都楼水希が笑顔で言う。


「昔話から始めよっか」



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