雲のココアと夜空のティータイム
その次の夜。
ココアちゃんがお部屋の窓を開けると、外には真っ白で大きな、まるで綿菓子の山のような雲がぷかぷかと浮かんでいました。
「まあ、今夜はとっても大きな雲さんが来ているわ」
ココアちゃんが驚いていると、雲の向こうから「ウララ〜!」と元気な声が響きました。
「ココアちゃん、こんばんは! 今夜はぼくが、新しい素敵な場所へ案内してあげる!」
モコが雲のてっぺんからフワフワと滑り降りてきました。モコの丸いお顔は、なんだかとても誇らしげです。
「新しい場所? どこ?」
「それはね、ぼくが作った『フワフワ雲のティーサロン』だよ! さあ、お月さまブランコに乗って出発!」
ふたりはいつもの黄色い三日月に乗り込み、大きな雲の山へと近づいていきました。
すると、雲の山には小さなトンネルがあり、そこをくぐり抜けると——
そこには、小さな雲のテーブルと、雲で作られたふかふかの椅子が二つ、並んでいました。
そしてテーブルの上には、これまた雲で作られた、真っ白なティーポットとティーカップが用意されていたのです。
「わあ……! 全部雲でできているの? すごい!」
ココアちゃんは目を輝かせながら、雲の椅子に座りました。
座り心地は、まるでお昼寝用の柔らかい枕みたいです。
「えへへ、ぼくが一日中、フワフワの雲を集めて作ったんだよ」
モコはテーブルの向こうに座ると、ティーポットを手に取りました。
「さて、今夜のメインイベント! ぼくが特製の『夜空のティー』を淹れてあげるね」
モコがティーポットの蓋を開けると、中からは真っ白な湯気と一緒に、微かに甘い匂いが漂ってきました。
でも、ティーポットの中には、お水はおろか、茶葉も入っていません。
「あら? モコちゃん、お水が入っていないわ」
「ふふふ、これはね、お水じゃなくて『星の涙』と『月の光』をブレンドした、特別なお茶なんだよ」
モコはそう言って、ティーポットをくるくると一回転させました。
するとどうでしょう!
ティーポットの口から、まるで流れ星のようにキラキラと輝く、黄金色の液体がティーカップへと注がれたのです。
「わあ……お茶が光ってる!」
ティーカップの中のお茶は、黄色や青、ピンク色の小さな光の粒がシュワシュワと弾けながら、優しい光を放っていました。
「さあ、召し上がれ! 『夜空のティー』だよ」
ココアちゃんがティーカップを手に取り、一口飲んでみると——
甘くて、ほんのり温かくて、心の奥がポカポカしてくるような、なんとも不思議で幸せな味わいです。
「美味しい……! なんだか、飲んでいるだけで悪い夢を全部忘れてしまいそう」
「そうでしょう? このお茶はね、優しい夢を見たいときに飲むと、とっても効果があるんだよ」
モコもティーカップを幸せそうに頬張り、ほっぺたをピンク色に染めました。
「あら、でもお菓子が何もないわ」
ココアちゃんが言うと、モコは「待ってて!」と言って、テーブルの下から小さな雲の箱を取り出しました。
その箱を開けると、中には、真っ白で丸くて、まるで雲の精霊のような、可愛らしいお団子がたくさん並んでいました。
「これは『フワフワ雲のお団子』だよ! ぼくが雲を丸めて、星くずをかけて作ったんだ」
ココアちゃんがお団子を一口食べてみると、まるでお口の中で雲がとろけるような、サクサクで柔らかい、なんとも不思議な食感です。
「美味しい……! これ、お家でも作ってみたいな」
「いいよ! 今度一緒に作ろうよ」
ふたりはティータイムを楽しみながら、夜空の不思議や、街の様子について、たくさんお話ししました。
周りにいた小さな星たちも、ティーポットから漂う甘い匂いに誘われて集まり、ふたりの周りをくるくると楽しそうに光を点滅させながら、ティータイムを一緒に楽しんでいました。
黄色い星たちに囲まれて、今夜の雲のティーサロンも、世界で一番甘くて優しい時間に包まれていたのでした。




