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地域の特徴、町の喧騒

お久しぶりです。

今章ではこれまでとは違った視点で物語を進める事を意識してみました。

もし読み難かったら申し訳ない。

 未だ日の高い秋口が迫った頃、リオックの姿は大陸の西よりにあるカクトゥス王国の端にある街道を歩いていた。街道といっても、道は踏み固められているだけで、一応は均されているが、所々に凹凸がある。仮に馬車で進むのであればその揺れが普段よりも酷くなることは請け合いだ。


 旅の途中のルーチンワークとなっている薬草採取をしつつも、リオックは目的地に向かって着実に近づいていた。街道を挟むように木々が立ち並ぶが、人の住む地から離れた場所であるが、そこには人の手が加えられていることに気が付いていた。


 人の手が入っていない場所であれば、木々は鬱蒼と生える。しかし、今この街道の両脇立ち並ぶ木々は遠くを見通せるほどまばらに生えている。自然に成り立つ森としては木々が少なく、どちらかといえば林と言えた。


 それに所々に見える切り株が人の手が入っていることを証明している。仮に、町で使用する木材を確保するのであれば、運搬のことを考えれば町の近くで伐採した方が効率はいい。


 これは旅をするものからすると非常ありがたい。ここはモンスターが活動する地域に近いので、視界の確保は重要になる。モンスターの発見が早ければ早いほど危険を回避できる。足の遅いモンスターであれば逃げる選択肢取れるし、仮にモンスターから逃げられないとしても、陣形を整え、待ち構える準備時間を確保できる。これが有るか無いかで生存確率が大きく違ってくる。


 そういった観点から、この街道周辺の林には定期的に手を加えられている。これは住む人々がモンスターの脅威をどれだけ正しく認識しているかで違ってくる。例えば大陸南方の国々の街道周辺は木の伐採などされていない。それは、視界の確保よりも、道の整備にお金が使われているからだ。その為、敵が襲撃するリスクは上がるが、物資の輸送が飛躍的に向上する。ただ、それ以上に輸送面の向上は利益があるから優先されるのだ。


 これは国を運用するための限りある資金をどこに優先したかによって変わってくる。元々モンスターのリスクが低い南方では街道整備中であってもそれほどモンスターの襲撃を受ける事はない。しかし、モンスターの領域が近い地域では、街道整備に掛かるコスト飛躍的に上がる。頻繁に襲ってくるモンスターから作業員を守る人員の確保。更に高いリスクの中で作業させる為に給金が上がる。こういった面から、街道を整備するのが非常に困難になっているのだ。


 因みに、フェロ公爵領では多大な資金を投入して街道を石畳で舗装されている。これによって緊急時でも素早く移動が可能になるのだ。これも言葉で聞けばいいことずくめだが、それを行うには潤沢な資金を確保できるフェロ公爵領だからこその力業とも言える。


 このように、街道一つにも統治者達は日々頭を悩ませているのだ。その選択が未来の領地運営にどのように作用するか分からないからこそ、多大な資金の投入を躊躇わせるのだ。


 リオックがそんな統治者目線で街道を観察しながらも歩を進める。途中何度かモンスターの襲撃こそあったものの、散発的なものだったので対処に困ることはなかった。寧ろ食費が少し浮いてラッキーくらいの軽い気持ちだった。


「流石に大規模討伐が近いだけあって人の行き来が多いな」


 大規模討伐、カクトゥス王国、オスマントス王国、サリシュ共和国の合同で行われるモンスターの領域への侵略。少しでもリスクを減らす為、一つの組織が利益を独占しない為に合同開催となった年に一度の大掛かりな行事だ。


 リオックが街道を進む中、普段街道を歩いている時よりも多くの人や馬車とすれ違った。


それにリオックを追い抜く馬車も沢山あった。そのほとんどが荷馬車で、多くの物資が町へと運び込まれていることが窺えた。その多くが糧秣、続いて武器の類が多かった。


 更にその護衛をしている屈強な戦士達が話している内容をすれ違いざまに聞くだけでも、彼らが護衛の後は大規模討伐に参加する旨が窺え知れた。


 ただ、彼らの様子を見たリオックは眉を顰めた。それは彼ら個人に何かがあるわけではない。ただ、リオックが感じ取った彼らの実力が、全体的に予想よりも低く見えたのだ。


 大規模討伐では、基本的に戦闘は徒党を組んで行う。その為、普段ダンジョンに潜っている者たちよりも実力の低い者も参加する。普段は町の中で護衛や門番の仕事をしている者たちだ。


 この大規模討伐では多くの金が動く。その為、参加者達は普段の仕事よりも高い給金が見込めるのだ。だが、その弊害として、実力の伴わないものは命を落とす者が一定数いる。そして、それ以上に負傷する者はその数と比較するのも馬鹿らしくなるほど数が毎年出る。


 今回、リオックの目的は、そんな負傷者たちを治癒する医療チームに参加することだ。リオックの実力があれば、戦闘方面で参加しても活躍できることは間違いないが、これは団体で行われる戦闘で、個人の実力を十全に発揮できない上に、その実力を多くの人に晒してしまうことになる。それはリオックの仕事柄避けたいことなので、今回は裏方の仕事に回ることにしたのだ。


 それに、一人の突出した力などすぐに限界が来る。それに引き換え、戦えなくなった者を再び戦場に送り出す為に治療に回った方が、自分が戦うよりも数倍のモンスターを倒すことができるだろう。


 そんなことを考えながら、薬草の採取をしつつ進んでいくと、今回の目的地であるカクトゥス王国の西北西にある町、『トトン』へとやってきた。





「次のもの!」


 トトンの街に到着したリオックの姿は、長蛇の列に埋もれていた。普段であればこのようなことはないが、大規模討伐直前とあって、多くの人が訪れていた。街道で行きかう人々を見ていたので、多少覚悟をしてはいたが、その考えが甘かったことをここにきて思い知らされていた。


 既に入門待ちの列に並んで一刻。


 そろそろ自分の順番が回ってくる。これだけ長時間待たされると、当然文句を言いだしたり、暴れる者も現れるのだが、そう言った者は問答無用で入門拒否をしていた。そういった荒くれ者を雇っていた人がなんとか入れてもらえないかと交渉するも、最後はその交渉していた者も入門拒否にすると言われてしまえば大人しくするしかなかった。


 それを周囲で見ていた人達が、その後文句を言いだすこともなく。ただただ時間が流れるのを待つだけの時間を過ごした。


「次のもの!」


 そして、やっとのことでリオックの順番が回ってきた。読書をして時間を潰していたのでそれ程苦にはならなかったが、内心ここの門番は無能だなと思いつつも、そんな素振りを表に出さずに対応する。


「目的は何だ?」


「大規模討伐で募集されている医療従事者で参加する為に来ました。私は旅の薬師です」


 そういって、リオックは薬師としての証明を見せる。


「おお、薬師の方ですか。医療従事者の登録は治療院で行います。門を潜った道をまっすぐ進んで左手にあります」


 門番は薬師だと知ると、笑顔でリオックを迎え入れた。


「ありがとう。早速行ってみるよ」


 それから荷物のチェックが入ったが、殆どの物が収納の魔導具に収納されていたので、短時間で確認が終わり、早々に町の中へと入る事が出来た。これは門番のチェックが甘いのではなく、本来収納の魔導具など個人で所有している者など居ない事から、それを確認する習慣がないのだ。


 門を潜ると、そこには活気に溢れた町並みが広がっていた。街の中心地からは遠いが、集まって来た探索者や兵士を相手にする露天などが広がっている。賑やかな中を人とぶつからないように進む。町並みは周辺都市と大差ないが、一時とは言え普段見る事の無い人口密度はなかなか圧巻だ。あちらこちらから客寄せの声が飛び交う道を進んで行くと、一際賑やかな場所に出た。


 そこは町の中心にあるらしい広場なのだが、ここにも多くの人が集まっている。ただ、先程までと違うのは、集まっている人たちの顔つきだった。そこには大規模討伐に備えた物資が集められていて、それを監視する者や、運び込むもの、それを各場所に運ぶものなどが忙しなく働いている。


 広場はロープで区切られていて、積み上げられている物資に興味を惹かれた革鎧を着た戦士風の男を、甲冑を着た騎士が大声で注意を促している。広場は通り抜けられるようにはなっているが、物資の守りの為か窮屈な感じだ。


 積み上げられた物資を通り抜けざまに観察してみると、基本的には糧秣の類と武器、それに防具の類が集められていたようだ。街道ですれ違った荷馬車が運んでいた物資は一旦この場所に集められているのかもしれない。


 そして広場を通り過ぎた頃から、周辺の風景が又一段と変化した。先程までは小さな店舗が多かったが、この辺りは大きな商業施設が多くなった。その為か建物一つ一つが大きい。そしてその中の一つにリオックには見慣れたエンブレムを掲げた建物があった。


「ここかな」


 それは一定の規模の町には必ずある治療院のエンブレムであった。この治療院は、町ごとに独立しているが、町で医療に従事する者を纏める役目を持っている。今回の大規模討伐でもその辺りの取り纏めを担っている。


 建物は周辺の施設よりも一回り大きい。町によって規模は様々だが、モンスターの領域に近い為か、町の規模からしても大きめに備えられている。


 建物の中からは、これからの討伐に備える為か、忙しなく人が動き回っているのが分かる。


 何時までも眺めている訳にもいかないので、リオックは早速その入口へと向かいドアノッカーに手に掛けようとした時……。


「おや? どちら様かな?」


 扉から、白衣を着た壮年の男性が出てきた。


「こんにちは、私は旅の薬師として活動しているリオックと申します。この度は、大規模討伐で募集されている医療従事者として仕事を求めて参りました」


 リオックはベレッザ商会の紹介状を差し出して挨拶をする。第一印象を良くするのは、旅の薬師の必須スキルだ。それに加えて後ろ盾も補償されれば十分な信用を得られるだろう。


「おお、私はこの治療院で医院長を任されているクレンマと申します。彼の有名な商会のご紹介とはなんとも頼もしい。我々は貴方を歓迎しますよ。詳しい話は中でいたしましょう。どうぞお入りください」


「はい、失礼します」


 こうしてリオックは新しい仕事場に足を踏み入れた。



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