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島の散策(後編)

呼んで頂きありがとうございます。

現在、当初の予定よりも主人公とフランシアとの絡みが増えて、捨てられた感じがしないのでタイトルの変更を考えています。

変更する場合は活動報告にのせるのでよろしくおねがいします。

「ふふふ、ここは景色も良いし、気持ちが良いわね」


「はい、良い場所を見つけられました」


 そこは少し小高い丘になっていて、辺りには様々な種類の野花が咲いている。丘の頂上には一本の大きな木が伸びていて、大きな木漏れ日を作り出している。俺達はそこに椅子とテーブルを準備して、現在昼食の真っ最中だ。


 昼食は宮殿付きのシェフが作ってくれたもので、新鮮な野菜を使ったハムサラダサンドや、魚のフライを挟んだサンドと、色々な種類の入ったサンドイッチとシンプルなオニオンスープ。そして、色々なフルーツの入った盛り合わせだった。


 今はそれらを食べ終えて、ルーシェの淹れてくれた紅茶でティータイムだ。


 この丘は野花だけでなく、遠目に見える宮殿や、綺麗な色をした海を一望できる場所で、島全体を見通すこともできた。


 そんな風景を楽しみつつ、俺達は食後のお茶を楽しんでいる。


「結構回れたわね」


 この丘は島の丁度中心に位置する。基本的に島の外周をメインに散策していたのだが、地形的に、一度島の内部に入る必要があったので、散策中ずっと見えていたこの丘で昼食を取る事にしたのだ。


「はい、この島はそれ程大きくは無いですね。半日で殆ど見て回れました」


「だな、後は見ていないのは漁村がある方くらいだ」


 そう、俺達は既にこの島の殆どを見学し終えているのだ。


 ルーシェのお嬢に向けた言葉が、ブーメランとなって帰って来た時に照れ隠しにポニーを走らせたからか、あっと言う間に島を回り終えてしまったのだ。


 それに途中競争をしたのも早く回れた原因だろう。


 本来のポニーの歩行速度であれば、一日かけて丁度なのだろう。もしかしたら幾つか見どころを見逃していたかもしれない。


「リオがムキになって私を追い抜くからよ」


「いや、俺は悪くない。悪いのは『敗者が何でも言う事を聞く』なんて言い出したルーシェだ」


「私ですか? ですが勝負は勝負ですからね」


 こいつ否定しない……。


 そう、前回の釣りの時に行った『ビリがトップの言う事をなんでも聞く』ルールで、再び俺達は勝負をしたのだ。


 今回はプチ競馬勝負だ。散策の途中で、真っ直ぐ直線に延びている場所があったのでルーシェがそんな事を提案してきた。勿論俺達は即了承、即勝負となったのだ。


 俺は最初こそ順調だったのだが、途中でポニーのスタミナが切れて失速。そこをお嬢とルーシェに抜かれてしまったのだ。ただ、二番手を走っていたお嬢も、俺を追い抜いた所で失速してしまったので、俺達はビリ争いにヒートアップした。


 結局俺はお嬢を抜くことができず、順位は三位、一位にはルーシェが見事ランクインしたので、俺はルーシェの言う事を何でも一つ聞かなければならなくなった。


「それは分かってる。……優しくしてね?」









 お茶を楽しみ、ポニー達にもしっかり休息を取らせた後、再び島の探索に向かう。


 残り少ない行程だが、漁村には珍しい動物が住み着いているらしいので、それが少し気になっている。


 丘を下り、再び海岸に向けて進んで行く。これから向かう漁村は、昨日俺達が冒険した海域とは丁度島を挟んだ反対側になる。そこは、砂と岩場が多い場所で、大きめの魚や、貝類が豊富に取る事が出来るらしい。


 執事のソビセチュアが言うには、小さな子供も遊び感覚で漁を行うらしい。子供が遊び感覚で獲るものとは何なのか少し気になる処だ。


「海が見えてきたわね……。何だか海が碧いのね?」


 その海は、光の反射なのか他の場所よりも碧い色に見えた、キラキラと反射する海面は翡翠でもちりばめたのかと勘違いしそうな程綺麗に輝いている。


「まあ、綺麗ですね。丘の上からは判りませんでしたが、この様な色の海もあるのですね」


 女性二人は見た事の無い海に興奮気味だ。俺自身、このような碧い海の存在は知っていたが、見るのは初めてなので興味がそそられる。碧く見えるが、透明度は高くて泳いでいる魚が良く見える。


 俺達は海沿いを進み砂地が広がる場所までくる。


 そこは白い砂の広がる綺麗な砂浜が広がる場所だった。ゴミ一つ落ちていなくて非常に美しい場所だ。こういった場所でのんびりするのも悪くないと思う。


 砂浜をポニーに乗って進む。蹄で軋む砂の音がリズミカルでなんだか楽しくなる。前方を見ると、お嬢もルーシェもそのリズムに合わせて身体を揺すっているので二人も同じ気持ちのようだ。


 そうして暫く進んでいると、何処からともなく「みゃあみゃあ」と何かの鳴き声が聞こえてきた。


「あら? 何かしら?」


「なんだか可愛らしい鳴き声ですね」


 俺達はポニーを止めて周囲を見回してみるが、これといって何かが見つかることは無かった。


「どこから聞こえるんだ?」


 三人そろって首をかしげていると、最初に異変を発見したのはルーシェだった。


「ああ! 海猫です!」


 そう言ってルーシェが指さした方を見ると、そこには波に押されるように此方に向かってくる猫……海猫だった。


「みゃあみゃあ」「にゃーにゃー」「にゃうん」「にゃ~ん」


 それは一般的に見る猫よりも、少し尻尾が縦長の猫だった。その特徴的な尻尾を器用につかって此方に泳いでくる。それにそれぞれ自分の口には器用に魚をくわえている。個体によっては自分のサイズよりも大きな魚を引っ張っている欲張りさんもいるようだ。


 全体的に体毛は短めの猫なのだが、海水に濡れて毛が張り付いて完全に濡れ猫状態になっている。猫は濡れるとその細い身体が露になって、人によっては可愛くなくなるという人もいる。俺自身、濡れてない猫の方が可愛いと思う。


「ずぶ濡れね」


 お嬢の意見は率直だ。


「可愛いです」


 ルーシェはトリップしかけている。


 海猫達は、岸に到着すると身体を震わせ飛沫を上げる。俺達はそれを予想していたので遠目で眺めていたのだが、海猫達はそれを気にすることなく食事を始めた。


 大きな魚を銜えていた猫も、他の猫と同じように食事を開始する。正直あのサイズの魚を食べきる事が出来るのか若干謎だったのだが、その理由は直ぐに判明する事になった。


「ミーミー」


 海岸の端にあった茂みから、先程よりも弱弱しい鳴き声が聞こえた。


 それはなんと海猫の赤子であった。


 生後一月も経たない程の子猫達だった。そしてその子猫を世話する猫が数匹連れ立って出てきたのだ。


 子猫達はトテトテと頼りない足取りで、大きな魚を取って来た海猫に向かって行く。


「か、か、可愛い……」


 トランスしてしまったルーシェを、お嬢と俺で両脇に腕を入れて持ち上げる。この中で一番小さなルーシェは簡単に持ち上がった。それでも彼女は子猫に向かおうとするのか、足が空中で歩いている。


 普通に町の中で生活している猫であればそれ程気にすることは無いのだが、このように野生として生きている生き物に不用意に近づく物では無い。実際、親海猫はこちらに警戒する事を怠ってはいない。


 子猫達の世話をしていた一匹の海猫など、一度もこちらから視線を話してはいないのだ。


「にゃーう」


 俺がその警戒心の強い海猫を見ていると、一鳴きして此方に向かって近づいてきた。


 それも、直線で向かってくるのではなく、円を描くように少しずつ距離を縮めてくる。姿勢を低くして、いつでも飛び掛かってきそうな雰囲気だ。


「リオ……、あれは大丈夫なの?」


「……分からん」


 場に緊張感が走る。


 俺達と海猫の距離が丁度5メートルになった処で、海猫はピタリと止まった。視線が合う。


「リオ、見られてない?」


「あ、やっぱり? 俺も視線がずっと合っているんだよな……」


 視線を外すことなく、お嬢と会話する間も、海猫はこちらを見つめ続けている。


 どれだけ見つめ合っていただろうか、いい加減瞳が乾いて来た頃に、海猫が突然飛び上がった。


「にゃにゃーん!」


 鍛えられた後ろ脚から繰り出された跳躍によって、海猫は俺の胸目掛けて飛び掛かる。


 空中でクルリと丸くなり、俺はその海猫をなんとかキャッチした。


「にゃう~ん。ゴロゴロ」


 めっちゃ甘えてきた。


「ああ?! リオ(ずる)いです!」


 ルーシェが羨ましがるくらい甘えてきた。


「いや、俺に言われても!?」


 それはもう凄い甘えようだった。俺の胸に頭を擦り付け、喉をゴロゴロ鳴らす。その発達した尻尾でしっかり自分の身体を固定して、全力でこちらに甘えてきている。


 そして、この一匹の海猫を皮切りに、他の海猫も此方に集まり、甘えるように足首に自分の身体を擦り付けてきた。不思議な事に、海から出てきた海猫達も既に乾いていて、フサフサ、サラサラの毛並みをしている。


「——!?」


 ルーシェが声にならない悲鳴を上げている。勿論嬉しい悲鳴だ。


「あらあら、甘えん坊さんね。ほら、こことかどうかしら?」


 お嬢も集まって来た海猫の喉を撫でたり、お腹を揉んだりしている。


 俺達は瞬く間に海猫達に集られ、次々と構ってほしいと催促される。俺も他の海猫を構おうとするのだが、最初に飛びついてきた海猫がそれを邪魔する。まるで私以外構うのはダメよ! とでも言うかのような態度だ。独占欲の強い女のようだ。あ、こいつは雌の海猫だった。


 それから暫く海猫にもいみくちゃにされたが、一匹の海猫のお腹から『クゥ~』と音が鳴ったのを皮切りに、海猫達は思い出したかのように自らの餌へと戻って行った。


 子猫達を構っていたルーシェだが、親猫に付いて行ってしまって残念そうにしている。でも、これで良かったと思う。もし子猫の世話を親の海猫がルーシェに任せてしまっていたら、俺達は日が暮れてもこの場所から動けなかっただろう。


 俺達は、海猫達がご飯に夢中になっているうちにポニーに乗ってその場を去る。


 トランス状態のルーシェを此方に戻すのに一苦労したものの、俺達は無事に再出発した。


「ここはルーシェ一人だけで来るのは禁止ね」


「!? そんなぁ~……」


 一人で来るつもりだったらしい。


 それからルーシェは非常に名残惜しそうだったが、もう一度ここに来る約束を取り付けて移動した。そこから何事も無く進んでいると、お嬢が前方に何か発見したようだ。


「あら? あれが言っていた漁村かしら?」


 お嬢の言葉に前方に視線を向けると、そこには小さな集落が見えてきた。集落からはあまり活気を感じられないが、この時間帯であれば漁師たちは海に出ているのかもしれない。それにそれ程数は無かったが、大型の物では無いが、昨日俺達が乗ったカヤックより遥かに大きな船が数隻停泊していた。


 集落に近づいてみると、女性陣が網を囲んでなにかをしている。此方に気が付いた一人の女性が話しかけてきた。


「あら、珍しい。お客さんね。こんにちは」


 それに合わせて他の女性たちも此方に挨拶してくれる。それに俺達も挨拶を返して、何をしているのか聞くと、彼女達は網の修繕をしているとの事だった。鋭い歯や鰓を持つ魚が網にかかると、網が切れてしまうので、定期的に修繕をする必要があるらしい。男性陣は基本的に漁に出てしまうので、こういったことは女性のしごとになるのだそうだ。


 残念ながら男性陣は長期の漁に出てしまっているので、今日は戻ってくることは無いらしい。この季節は外洋に大きな魚が海遊するので毎年恒例の大掛かりな漁にでるのがこの島の習わしらしい。新鮮な海の魚が食べられるかと思っていたので残念だ。


「新鮮な魚は無いけど、今日揚げた貝や海老があるけど食べてみるかい?」


 そう思っていたら、その女性が他の物を勧めてくれた。


「あら、それは興味あるわね。お願い出来るかしら」


「はいよ!」


 貴族令嬢を取り繕っているお嬢と、普段通りを貫く女性の会話は聞いていると面白い。


 女性に案内されて付いて行くと、そこには石で囲った囲炉裏の様な物の上に、鉄網が置かれている場所だった。


「ここは海女が海から出て体温を上げる場所なんだけどね。ついでに何か摘まめるようにこうやって準備してあるのさ」


 海から上がって体温を上げる間に、ついでとばかりに採れたて新鮮な貝を食べる。なんとも贅沢な話だ。間違いなく美味しいだろう。


 俺達は囲炉裏の周りに座らされ、女性は食材を取りに一度出て行った。この部屋は海女さんが海から出て直ぐに来る場所なだけあって、磯の香りが強く残っている。


「なかなかパワフルな女性ね」


「そうですね。ティターニア様とは違ったパワーを感じます」


 二人は俺達を案内してくれた女性の活力に驚いているようだ。俺は旅をする間に、彼女の様な女性を多く見てきたのでそれ程違和感はない。因みに俺は彼女の様な女性を『肝っ玉カーちゃん』と心の中で呼んでいる。二人には是非違ったタイプの大人の女性になって頂きたいものだ。


 暫く雑談をして待っていると、女性は桶を持って戻って来た。


「はい、お待ち! これを鉄網の上で焼くんだよ」


 そういて彼女が差し出して来た桶には、牡蠣にサザエ、アサリとシャコガイにエビ、カニが入っていた。


「「「おお~」」」


 三人そろって驚きの声を上げる。お嬢とルーシェは生きている姿を初めて見たから。俺は久しぶりの高級な貝に甲殻類が食べられることに。理由は違うが興奮が収まらない。


「このソースを掛けて食べると更に美味しいよ!」


 女性は真っ黒なソースを差し出してくる。その香りは魚介を発酵させたものだと判断できた。しかし、その香りは食欲をそそり、目の前の貝たちとも相性がよさそうだ。


 女性は豪快に鉄網の上に食材を並べていく。貝類など、まだ生きているようで、火に炙られて踊っている様にもみえる。


 そこに先程の黒いソースを上から垂らすと、周囲になんとも食欲を誘う香りが漂いだす。


「ああ、これはたまらないわね」


「お腹が空く匂いですね。待ち遠しいです」


「(ごくり)」


 もはや言葉が出ない。目の前で着々と出来上がっていく食材を早く食べたくて仕方がない。


「はい! そろそろ食べてもいいよ」


 今か今かと待っていると、女性からGOサインが出た。


「「「いただきます」」」


 俺達は各々興味がある物を手に取り口に入れる。


 俺が最初に手に取ったのはパカリと開いた牡蠣だ。


「んん!?!?」


 口に含んだ瞬間、濃厚な旨味が口の中に広がった。甘みと塩みが絶妙なバランスで調和し、少しの苦みがアクセントになっている。口の中でその身はツルツルと踊り、トロリと舌の上で溶ける。


「ああ、お酒がほしくなるわね」


「本当ですね。ウンデフィーノで作られている、お米のお酒が合いそうです」


 二人はこれを肴に、酒を飲みたいようだ。俺も普段はお酒を控えてはいるが、これを酒のあてにして飲むのは悪くないだろう。バカンスなのだから多少の飲酒は解禁している。


「ああ、これは合うだろうな」


「そうよね。帰りに少し買っていきましょうか。帰ってからそれで飲みましょう」


「いいですね。秘蔵のお酒をだしますよ」


 すっかり二人は飲む気満々だ。


 俺は取り敢えず目の前の美味しい貝に集中する。どれもこれも美味しく、瞬く間に俺達の胃袋へと消えて行った。


 美味しい物を食べて気分を良くした俺達は、大量のお土産を買って漁村を後にする。


 敢えて物足りないくらいの量を振舞って、追加で注文させるとはあの女性は商売上手なようだ。ポニーの鞍に着けられた鞄をパンパンに膨らませて、俺達はこの後の飲み会に期待を膨らませて宮殿への帰路へと付いた。





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