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商船の到着、島の未来

いつもお読みいただいている方に感謝です。PVが3万を突破しました。これからも頑張っていきます。

『北北東に島の陰を確認しました』


『ああ、こっちも見えた。北側から回って島の南東にある港に接岸してくれ。南から行くなよ、別の海流に流されるぞ』


『畏まりました』


 今、俺が連絡を取っているのは、今回探索隊の一人として参加している俺の配下の虫人だ。彼女は虫人の代表もしているので、忙しい筈なのによく来てくれたものだ。


 モンコネ達とお別れ会をしてから早一月、あれから色々あった。……本当に色々あった。


 まず、次の日にモンコネ達を見送りに行ったのだが、彼らは殆どが二日酔いで、なんとも締まらない出発だった。モンコネなど殆ど死人同然で、俺が最後に見た姿は彼が海に向かって虹の光を発している所だった。


 あとは、アイシャの勉強は外せない。一度に熟しても抜けがある可能性もあるので、毎日時間を決めて少しずつ進めて行った。それと並行して、俺もエルフの薬の調合技術を学んだのだが、やはりエルフ特有の方法なので俺には作成できない物も多かった。調合に十年単位の時間が掛かるものは人間には不可能だと思う。


 その他にも、工芸品の製作や、漁師の仕事を手伝ったりもした。普段携わる事の無い仕事をするのは意外と面白かった。特に御香工房での仕事にはのめり込んでしまって、工房長と共に新商品を幾つも開発した。


 それに、探索がある程度順調に進んでいると判断できた段階で、ナガスとイッカを交えてフェロ公爵領との交易について話しておいた。どのように連絡を取ったのか怪しまれたが、元々この地方への遠征が試みられている事にして、互いに流れ着いている物からその可能性が高い事を伝えたのだ。ナガスは少し不満を示したが、ラブラに話を振って黙らせ、イッカは割と前向きだった。これで交渉がスムーズに進む事を願う。


 そして、最も重要なラブラの経過なのだが、正に経過は順調である。それに俺の持つ知識もアイシャへ伝え終わっているので、今後は彼女が主体となって経過観察することになるだろう。それにエルフの女性陣が色々と騒いでいたので、もう何組か増える可能性もある。アイシャには是非頑張ってもらいたい。


 そんなこんなと目まぐるしく日々を過ごしていたら、何時の間にか一月過ぎていたのだ。俺の流したブイも、つい昨日フェロ公爵領近海で発見されたようだ。それに探索組も出発から十日程でこのブイを遠目に捕捉したらしく、かねがね海流の流れは把握できた。はっきり言って超順調である。連日、忙しさのあまりにストレスを抱えているお嬢の愚痴を聞くことなど些細な事だ。


 俺は探索隊を確認すると、一度屋敷に戻る。彼らが港に到着すれば、何かしらの連絡が来るだろう。ただ、今回フェロ公爵家に近い位置での話をしてしまったので、飽くまでも商会の偉いさんと旧知の仲であるスタンスを取るつもりだ。正直少し油断していたのは認めよう。


 まあ、エルフは素直な人ばかりなので大丈夫だろう。


 屋敷に帰ってくると、コククと丁度出くわしたので一緒にお茶を取る。実はこの人、普段はダンジョンに潜っているようで、昼間には滅多にお目に掛かれないレアキャラだ。今日は何故か珍しく屋敷に居る。


 彼女と二人で会話したことは殆どなかったが、ここでの生活の事や、ラブラさんの事など、話題には事欠かないので楽しいティータイムになった。


「リオックさん、いらっしゃいますか?」


 俺達がお茶をしている所にイッカが入ってくる。


「ええ、ここに居ますよ」


「よかった、実は港の方に外洋船が入港したらしいのですが、もしかしたら以前リオックさんが仰っていた、商会の船ではないか確認してほしいのですが、お時間よろしいですか?」


「ええ、大丈夫ですよ。一緒に向かいましょう」


 ここまでは予定通りだ。と言っても、俺は顔つなぎをするくらいで、交渉は本人達にお任せするつもりだ。あまり俺が間に入るのも可笑しな話だろう。


「コククさん、そういう事なのですみませんが、お茶はまた今度ご一緒してください」


「ええ、その時をお待ちしております。お気を付けて行ってらっしゃいませ」


 こうして俺達はコククさんに見送られながら、港に続く道を進む。程なくすると港の規模には不釣り合いな船が停泊しているのが見えた。事前にこの港の深度を調べておいて正解だった。一見したら普通は入港できないサイズだ。……お嬢、少し気合入れすぎじゃないだろうか。


「大きな船ですね」


「そうですね。あ、あのシンボルは私の知り合いが働く商会で間違いないですね」


 その船の大きさ故に、遠目からでも掲げられている旗のエンブレムは良く見える。港には既にエルフ達が集まって来ていて、物珍しそうに商船を眺めている。思いの外好意的な反応だったのは助かった。この後の交渉に大きく影響しかねないので、顔合わせは慎重にいきたいものだ。


 俺達が港に到着すると、エルフ達が道を開けてくれて商船の代表者と顔を合わせる。商会の代表として来ているのはエベレスである。それと、そのサポートにシレヌと言う、女王蟻の力を持った虫人の娘たちが付いて来ていた。彼女達は俺の配下の中では主に商売に携わっており、よく働いてくれている。


「あら? この島の代表者の方でしょうか? 私、ベレッザ商会のエベレスと申します。この度は新しい交易路を探していた折に、こちらの島を見つけたので立ち寄らせて頂きました。」


「これはご丁寧に、どうも初めまして、長老代理をしていますイッカと申します」


「これも何かの縁なので、もしよろしければ幾つかの商品を積んでいますので、よければ商売の許可を頂きたいのですが、よろしいでしょうか? ……あら? そちらにいらっしゃるのはリオック様ではありませんか?」


 今、この時点での俺からエベレスに向ける評価は、大根役者である。不自然な話の切り替えしに、棒読みのセリフ、体の動きも不自然に硬い。横で見ているシレヌの娘達も目を押さえて天を仰ぐ。


 この人選は誰が考えたのだろう。言っては悪いが、もう少し適任の者は居なかったのだろうか。通常であれば完全にアウトだ。


「え、ええ。お久しぶりですね、エベレスさん。お元気そうでなによりです」


「本当にリオックさんの知り合いの方だったのですね。そうなるとサルディーナ諸島群の外からいらっしゃったのですか?」


「ええ、私達はオスマントス王国に拠点を持つ商会になります。こちらには大陸から参りました」


 エベレスの言葉に、周囲のエルフ達もどよめく。今まで外との繋がりは、カタボシ島とカタクチ島を経由して、冬季だけ行き来できるだけだったのが、他にも海路が発見された衝撃は大きかったのだろう。未だ季節関係なく行き来できるのかは分からないが、それも今後の付き合いの中で明確になるだろう。


「イッカさん、折角のお客様なのですし、お屋敷にご招待しては如何ですか? 詳しい話もお聞きできるかもしれませんよ?」


「そうですね……、エベレスさん、是非屋敷の方に来ていただけませんか? その間、集落の皆も興味がありそうですし、商売は自由にしてもらって構いません」


 集落の皆は目がキラキラしている。既に手には財布が握られていて、買い物する気満々だ。個人の買い物は自由にしてもらって、組織としての話し合いは代表者達に任せよう。今後の事も考えれば、この話し合いに俺は不要だ。


 エベレスとイッカを見送って、俺は並べられた商品に群がるエルフ達を眺める。これはアレだ、バーゲンセールで群がる〇〇ちゃんを彷彿させる光景だ。


 普段買い物など、島の中で細々と済ませる程度だからだろう。ここに来てエルフ達の購買欲が爆発したのだ。エルフ製品は高く売れるので、彼らは金だけは沢山持っている。その財力を持ってして、必要な物から必要ない物まで次々と買い求めていく。熱気がすごい。


 俺はこのエルフが住まう島で、長らく来ていなかったであろうビックウエーブに乗れそうにないので、早々に離脱した。これと言って行き場もないので集落の中をフラフラと歩く。こういった時に悲しい人の性なのか、知っている場所に自然と足が向くようだ。


 気が付けば、この一月で一番多く通った、アイシャの薬院の前に立っていた。俺は慣れた手つきで扉を開けて中へと入り、勝手に湯を沸かしてお茶を淹れる。最初の頃はこの行動に違和感を覚えたが、今では当たり前のことだ。


「あら? リオックさんいらしてたんですか。私にもお茶貰えますか?」


「ええ、お邪魔しています。少々お待ちくださいね」


 アイシャも当然の様に受け入れている。今まで仕事をしていたのだろう。休憩のためにキッチンに来たようだ。


 二人分の茶を用意して、俺達は一息入れる。お互い違う理由で小さなため息を吐いてソファーに沈み込んだ。


「そういえば外が騒がしかったけど、何かあったのかしら?」


 仕事に没頭し過ぎていたのか、彼女はまだ外の様子を確認していないらしい。


「大陸からの商船が港に停泊しているのですよ。今、港は大騒ぎですよ」


「なんですって!?」


 流石のアイシャもこの内容には驚きの様だ。俺も彼女の声に驚いたよ。


「まあまあ、落ち着いて、今行っても人でごった返していますよ。数日停泊するみたいですから、落ち着いてから行ってみては如何ですか?」


「……それもそうね。それにしても大陸から直接船が来るなんて初めての事よ? これは大事件よ?」


「そうですね。しかも船に乗っていた人が私の知り合いだったので驚きましたよ。もしかしたら今後は交易が始まるかもしれませんね」


「……フーン。驚きって言ってる割にはそれ程驚いているようには見えないのだけど?  実は知ってたんじゃない?」


 アイシャは、変なところで鋭いので困る。他のエルフ達なら、小さなことは気にしない精神が凄いので突っ込まれることは無いのだ。


「ええ、その商会が海路の開拓をしていたのは知っていたので、可能性はあると思ってました。それに海岸には大陸からの漂流物が有ったので、確率は高いと思ってましたよ」


「なるほどね。貴方が度々海岸に行っていたのはそういう事なのね。……そうなると、あなたはその船で帰る事になるのかしら?」


「そうですね。アイシャさんへ伝える事も無くなりましたし、私もこれ以上ここに滞在すると、今後の予定に響きそうですから頃合いではありますね」


 この島での目的は粗方片付き、俺が伝えなければならない事も伝え終わっているので、そろそろ帰還の時期である。それに、知り合いの船で帰るのであれば、それ程違和感もないだろうし丁度いい。


「そう……、寂しくなるわね」


 アイシャがポツリと呟く。なんだかんだ、この一月一緒に居た時間が一番長い相手だ。多少なりとも名残惜しい気持ちはある。


「そうですね。でも交易が始まれば、再会もそれ程難しくないと思いますよ」


「それもそうね、是非とも交易を始めてほしいわ。貴方のお蔭でこの島の人口は今後増えるでしょ。これから先、外との交流なしでは島の運営は難しいでしょうからね」


 アイシャは島の未来についても考えているようだ。イッカには人の増加に伴う問題点も伝えてあったが、自分でそこに気が付くのは流石と言える。


「そこは代表の方々の話し合いが上手く行くことを願いましょう。私も又訪れたいですしね」


「あら? 駄目よ。先に私が大陸の方を案内してもらうのだから。貴方はその後よ」


「……もしかして案内するのは私ですか?」


「当然でしょ。こんなに綺麗な私が、一人で歩いていたら誘拐されてしまうわ」


 冗談なのか本気なのか、彼女の言い方に思わず苦笑いしてしまう。確かに彼女ほどの美人で、エルフであることを考えれば、疚しい思いを抱く者も現れるだろう。


「そうですね。その時は是非エスコートさせて頂きますよ」


「そう、お願いね」


 こんなやり取りも後僅かだろう。エベレスとイッカの商談もどんな形であれ数日もあれば終わる。この島での用事は全て終わらせているので、帰るのは問題ない。多少名残惜しくはあるが、これ以上の滞在はお互いに望ましくないだろう。これ以上、人様の家に厄介になれる程、俺の精神は図太くない。


 これまでは、突発的であったが仕事優先で、この島に滞在していた。ここから先はプライベートとして、楽しませてもらおう。


 おっと、お土産も確り確保しておかないとな。




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