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長老の決断、娘の×××

最近執筆に行き詰っています。

先の展開がイメージできません。

取り敢えず、気分転換に美味しい物食べて、食事関係の話を一つ増やす……

 二人は目を点にして此方を見る。夫婦揃ってシンクロするのは構わないのだが、こちらの話を聞いているのか分からないのは困ったものである。


「どうにか……なるのですか?」


「正直、確実とは言えません。私もエルフの出産知識を持った方に、師事した時に聞いただけなので、出産に立ち会ったことはありません。ただ、妊婦に必要な薬とその時の症状を聞いたことが有るだけです」


 そう、幾ら俺でもエルフの出産に立ち会ったことなどありはしないし、エルフの妊婦を診断したことも無い。そもそもエルフに会うのが初めてなので、そんな事は不可能なのだ。


 しかし、俺の持っている知識を伝えることは出来る。この島に助産師が居ないのであれば、それの代わりを出来る人を育てればいいだけなのだ。そういった意味では薬師は適任なのだ。薬の知識があり、診察も出来る。だから俺はこの島のエルフの薬師を、薬師兼助産師に仕立て上げようと画策しているのだ。


「なので、俺の持つ知識をこの島の薬師の方に伝えます。これだけでも出生率は大きく変わるはずですよ」


 エルフの妊娠期間は人のそれとは異なり長い。個人差があるらしいが、数年から長いと十年近くも時間がかかるのだとか。正直そんな長期間短命な人間である俺が付き合っては居られない。それ故の知識の伝授なのだ。最も、タダでは渡さない……。


「その話、誠であろうか?」


 突然、扉の方から声が掛けられた。そこに立っていたのは、見た目は30代後半の貫禄のあるエルフであった。


「「お(義)父さん!」」


 どうやら彼らの親、この集落のトップである長老らしい。見た目全然長老では無いので違和感が半端じゃない。


「ええ、勿論。最も、タダでは無いですよ。薬師として、知の天秤を求めます」


「……分かった。この話は薬師も交えて話そう。私の部屋に来てもらいたいのだが宜しいか?」


「構いませんよ。……あ、では話をする間にイッカさんには揃えておいてもらいたい物が有るのでお願いできますか?」


 俺はイッカに簡単なおつかいを頼んだ後、長老の後ろを付いて行った。彼に案内されたのは、少し広めの応接室であった。


 お茶を頂き、少し待っていると一人の女性が入って来た。


「これで揃ったな。まずは自己紹介といこう。ワシは長老と呼ばれとるナガスじゃ」


「次は私ですね。この島で薬師をしております。アイシャと申します」


 予想通り、男性は長老であった。そして後から入って来た女性、彼女が今回俺の持つ情報を伝える薬師であった。見た目は人間でいえば20代後半ほどで、ラブラと比べてもそん色のない美人だ。ラブラが可愛い系であるのなら、彼女は大人の女の妖艶さを兼ね備えた美女である。


「私は旅の薬師をしております。リオックと申します。この島へはエルフの技術に触れたいと思い遣ってきました」


 お互いに自己紹介をする。エルフは見た目と年齢が人間とは違うので、彼らは百戦錬磨の戦士だと思って、気を引き締めなければならない。


「それで、先程娘達に話していたことは本当かね?」


「ええ、その方が互いに良い結果を見込めると思います」


 後から合流したアイシャも真剣な顔つきで聞いている。それ程驚いていない所を見ると、事前に今回の話の内容を聞いていたのだろう。


「薬師は知識を安売りしません。貴方は何を望むのですか?」


 流石、薬師である彼女は、こちらの事をある程度把握している。薬師は飽くまでも知識に対して対価を求める。これは安易に知識を広めないため、如いては間違った知識が広まらない為に慎重なのだ。


「これは私からの提案なのですが、妊娠初期から出産までの知識は非常に膨大です。通常の知の天秤では時間もかかる上に、一部の知識が抜けるとリスクが跳ね上がるので、少し変則的ですが、私が持つ助産師の知識を教える代わりに、私の疑問に答えて頂くと言うのはどうでしょうか?」


「質問に答える……ですか?」


「ええ、これはアイシャさんへ、と言うよりも、この島のエルフに対してです。あ、もちろんプライベートな事は聞きませんよ」


「成る程、だからエルフの持つ技術と言ったのか」


「ええ、エルフの方と交流できるチャンスなど早々無いですから、私としてもこの機会を逃したくないのですよ」


 俺もエルフの知識を得るためにこの島へと遣って来たが、そんな簡単に教えてもらえるとは思っていなかった。エルフ自体、人間と接点を持ちたがらないのは有名な話だし、その知識を求めるなど、そんな簡単な事だとは考えていない。チャンスがあれば手に入れようと思っていた程度である。


「お主の言葉を信じるに足る証拠はあるのか?」


「飽くまでも薬師として伝える知識です。嘘などつきませんよ」


「長老、それに関しては問題ないと思います。薬師である以上知識を伝えるときに嘘は付きません」


「うぅむ……」


 一つの集落の今後を決める決断である。長老もそんな簡単に決められないのだろう。長老が唸って考えていると、ノックする音が聞こえた。長老が入室の許可を出すと、入って来たのはイッカだった。そして、その後ろにはラブラも続く。


「リオックさん、言われた物を持ってきました」


 そう、彼に先程頼んでおいた物だ。それは極一般的な薬草や樹液の入った瓶だ。この島でも簡単に手に入る類の物である。


「これは……?」


「これはエルフの方の妊娠に関わる薬を調薬するための材料で、イッカに揃えてもらうようにお願いしていた物です」


 彼女も、どれも見慣れた物だからだろう。とても驚いた顔をしている。実際、材料はありふれた物を使うのだ。ただ、その調薬方法が少しだけ特殊なだけだ。


「これで薬を作って頂けますか?」


 イッカの言葉にラブラも真剣な顔で頷く。しかし、これは俺が勝手に決めて良い問題では無いので、答えることは出来ない。


「それは長老であるナガスさんの決断次第です。中途半端に進めても、生きる時間の流れが違う私では最後までお付き合いできません」


 俺の言葉に、皆の視線が長老に向く。特に娘の視線は効いたようで、彼は視線を合わせようとはしない。


「お父さん?」


 凍えた。


 俺は一つのワードでこんなにも寒さを覚えたことは無い。本来ならば父に親しみや経緯を込めた言葉である筈なのに、そこから伝わる感情は凍てつく氷のように冷たかった。室内温度も数度下がったように感じる。


「もっ、もちろん今その知識を教えてもらう為の返事をするところじゃった。その時にお主らが入って来ての。なんじゃったか? リオック殿の疑問に答えれば良いのじゃろ? 勿論ええよ。是非とも我々にその知識を教えて頂きたい」


 捲し立てる様に言い放つ長老。娘には相当弱いと見える。こんな事で長老としてやっていけるのか疑問に思うが、実務はイッカが行っているのだから大丈夫だろう。


「そうだったの、ごめんなさい。それで治療は何時から行えますか?」


 先程の言葉を聞いた後だと少し小股が縮こまる思いだ。


「そうですね。一度アイシャさんと確り打ち合わせも必要ですから、後日になると思います。お腹の子もまだまだ時間が有りますので慌てないでください。お腹の子に障ります」


「あ、ご、ごめんなさい。私ったら()いちゃって……」


 ラブラは思い込んだら突き進むタイプの人なのだろう。顔を赤くして下を向いてしまった。


「取り敢えず、今まで通りに部屋で安静にしてください。こちらの準備が整ったらまた報告しますから」


「そうですね。分かりました。リオックさんが村に滞在する間は我が家にお泊り下さい。いいですよね? お父さん」


「ハイ」


 長老はもはや言われるが儘である。イッカは完全に空気と化してる。エルフとは女系の種族なのかもしれない。


 取り敢えず、一旦皆には解散してもらって、薬師である俺とアイシャが話し合うところから始める事になった。その間に俺の部屋や、今後必要になるであろう物などの用意も並行して行うようだ。実際初期の段階で、それ程多くの物は必要とはしないのだが、彼らも初めての事で落ち着かないのだろう。


 俺達は、調薬の都合もあるので、一度アイシャの薬院に向かうことにした。この長老の家からそれ程離れてはいないので、歩いて五分ほどの距離だ。見た目も周囲の建物と大差なく、室内の部屋が少し大きめに作られている他に違いは無いらしい。


 到着して、応接室に案内される前に、アイシャの作業場へと案内してもらい、中の様子を確認する。今後必要になる設備も在ったので問題ない。薬院の応接室に案内され、今後の予定を話し合う。お茶を頂き一息ついたところでアイシャが話し出した。


「それで、今後どのように教えて頂けるのでしょうか?」


「そうですね、まずは妊娠初期に必要な知識を教えます。これはそれ程多くありません。その後、必要な知識を文章に纏めますので、それを基に勉強するのは如何でしょうか?」


 実際、伝えなければならない情報は多い。幸い初期に必要な知識は、最初に服用する薬と、経過観察に必要な知識だけだ。


「確かに……その方が、漏れが無くて良いかもしれません。それでは文章に纏めている間に、私の方もリオックさんが興味ある知識を纏めておきましょう」


「それは有難いですね。時間の有効活用は大切ですから。正直、エルフの方の持つ薬の知識には、非常に大きな興味があるのですよ」


 寧ろその為にここに来たと言っても過言ではないのだから。


「しかし、エルフの薬の作り方には、エルフが持つ力を使った物も多いので、人間の方には作れない物も多いのですがよろしいのですか?」


「ええ、大丈夫ですよ。そういったことも理解しています。でも知識欲と言うものは止められない物なのですよ」


「フフフ、その気持ち、少し分かります。私も新しい事を知るのはワクワクしますから。正に今なんですけどね」


 そう言ってアイシャは茶目っ気溢れる笑顔をする。やはり薬師として働くものはこういった所が似てくるのだろう。親近感が湧いてくる。


 その後、俺達は初期に必要な薬の調合方法と、診察時に必要な知識の勉強をしてから解散した。今日伝えたことは、後日実戦を通しながら再確認することとなる。


 帰り際に紙とインクを買って長老の屋敷へと向かった。



 あ、船への連絡は既に済ませてあるよ。




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