閑話:彼らの依頼、命の価値
今回は短いです。
一つの仕事を終わらせて自分達のホームへと戻って来た。今回の依頼は当初聞いていたよりも、あっという間に終わってしまった。事前に貰っていた情報は半分ほどしか役には立たなかったが、一緒に攻略したメンバーの中に非常に詳しい人が居たのは助かった。最も、その人も今回受けた依頼の報告対象なのだが、正直あまり気が進まない。
「失礼するわよ。待たせてしまったかしら?」
私達が待っていた部屋に、この家の主が入ってくる。今回俺達に依頼をしてきた人物だ。
「いえ、美味しいお茶を頂いていたのであっという間でした」
相方は隣で頷くだけ、下手に何か話されるよりは黙っていてもらった方が、こちらとしても有り難い。
「そう、それは良かったわ。早速だけど今回の報告を聞かせてもらってもいいかしら」
相手も会話を楽しむ為にここに来たのではないので、早速本題に入る。こちらとしてもこの場に長居したい訳では無いので、それに異論はない。
「お受けした依頼に関して言えば、『何もわからなかった』と言うことが分かりました」
「私の事を舐めているの? そんな報告で満足すると思っているのかしら?」
依頼主からのプレッシャーが増すが、此方としても他に言いようがない。あまりに実力に差が有り過ぎて私達では完全に役不足なのだ。
「私達は四六時中監視されてました。彼が寝ている時も、休憩だろうと戦闘中だろうと、常に私達に意識を割く余裕があった。それが私達と彼の差なのです。私達の理解の外側の存在です」
「……そう、あなたでも測れない程なのね。貴方が感じた印象を聞いても良いかしら?」
「……何か絶対的に優先する物が有って、その為になら他を切り捨てられる人……です」
敵に回すのは論外、更に彼が切り捨てると判断する範囲に居る限り、彼と関わりを持つのは良くない。彼は間違いなく容赦しない性格だ。彼にとって守る者に値しなければ、味方でいる事も危険が伴う。私はそんな分の悪い賭けには乗れない。
「そう、そうなのね……。仮に、戦う事になったら貴方ならどうする?」
「その選択肢そのものを遠慮したい所ですが、そんな答えを聞きたいわけでないのですよね? 強いて言えば人質を取って対応します。ただ行きつく先は必ず『負け』だと思いますけど……」
「必ず負ける? 人質を使っても勝てないと言うの?」
「いえ、そういった手段を使った相手を、彼が生かしておくとは思えなかったので」
私よりも長く彼の事を見てきた人でも分からない程、彼の行動理念は徹底して隠されていると思う。きっと彼にとっての敵を見極めるのに最も適したスタイルに落ち着いたのだと思う。それが何かは私には分からないけれど、知りたいとも思わない。余計な知識は持たない事も、一つの生きる術だと身に染みている。
「それが貴方の考えなのね……。いいわ、今回の依頼はこれで達成とします。また次もあったらお願いするわ」
「……彼が関わる案件はお断りしますので、ご了承ください」
意外にも二つ返事で了承された。依頼主の方も今後深く彼と関わるつもりは無いのだろう。
依頼の報告を終わらせた後は、報酬を受け取ってすぐさま家を後にする。今回の報酬で多少余裕があるので、当分は大人しく普通の探索者として仕事をして、真面目に生きていくのが吉だと思う。
今回は報酬の額に惹かれて依頼を受けたが、やはり自分の身の丈に合った依頼を選ぶのが長生きのコツだと思う。
朝起きて、知らないうちに枕元に置かれる脅迫の手紙なんて、どんな報酬を貰っても割に合わない。
これにて第二章は終わりになります。
現在第三章を誠意執筆中なので今後ともよろしくお願いします。
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