始まり
「条件は、まず儂のことをグロチウスさんと呼ぶところからじゃな。」
「そういえば、本名を俺は聞いてなかったっけ?」
レンヤはこの世界に来てからのことを思い出す。
不思議なことに、確かにグロチウスについてのこと
は、このロッジの所有者だということいがいには、何も知らないのだ。
なのに、なぜか話しやすく、気軽に接してくれていた。力の差は、歴然としている。
「それと、儂のことについては、儂からは基本的には、話さん。」
「基本的には、ってことは、話す事もあるのか?」
「老いゆくものは、段々と話好きになるものじゃからな。つまり、聞くことはダメだと言うことじゃ。」
なぜ、聞いてはダメなのかと、一瞬グロチウスの過去に興味を持ちかけたが、気にするのを止めた。
「そして、儂の命令は絶対じゃ!」
「やだ。」
「ま、そーゆうとおもったわい。基本厳守というところで、まけとこうかの。そして、最後に…。」
「まだあるのかよ。」
「お主の持ち物である、この魔法書の使用するタイミングは儂が決定する。」
「…、俺は強くなれるか?」
「ふむ、独学でもお主は強くなれる。しかし、儂の教えにしたがい、師事したほうが、より視野を大きく広げられるぞ?」
含みのある言い方をする、じいさんことグロチウスに少し黙るレンヤ。
しかし、考えに時間を使ったのは僅か数秒。
「ああ、条件を飲む。」
「うむ、契約成立じゃな。」
二人を中心に幾重にも重なり、層をなす魔術式が光り、それが分かれ二人の体に吸い込まれる。
「契約魔術か?」
「うむ、似ているが少し違うな。いわば、絆とでもいおうかの、我が弟子よ。あ安心せよ、契約魔術とは違い、拘束力はありゃせんからの。」
「もしあんたが俺を害そうと思えば、何時でも出来るだけの差はあるんだ、心配はしていない。」
この世界で始まる激動の時代が、今まさにおき始めようとはレンヤは、知らずその渦中には入りはじめた。
「まずは、移動使用かの。」
「どこに?」
ニコっと、楽しそうに笑った老人と青年は、この家から姿を消した。




