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違います。あちらが変態です。

 好奇心に満ち溢れた眼差しを一身に浴びる事になる。

 ブーメランパンツでマッスルポーズなんか決めている俺こと変態を見ても、誰も目を逸らす事なかった。逸らすどころか、興味津々と全身を舐め回す様に観察するものが大半なのはもはやお約束に近いと言っていいかもしれない。

 ……ああ、分かっているよ。どう考えても変態の御仲間入りしている俺がこんな冷静に考えに浸っているかって聞きたいんだろ。現実逃避だよ、言わせるな。この状況を真摯に受け止める事なんて出来る訳ないだろう。


「……何者、あなた?」


 羞恥心でどうにかなりそうになっていたところ、一番近くにいたナディアさんが問うてくる。顔を隠していない俺が誰か分からないと言う事は、イーグレットさんの認識阻害魔法は無事に利いているらしい。

 ……本当ならば覆面をしたい所だが、下着以外で覆面する事は許されない、とか訳の分からない事を言われたからな。これ以上変態道に堕ちて行ったら絶対に戻って来られない気がする。


「……我が名はアンダーマン」

「……ごめん、なんて言ったの。声が小さくて聞こえなかったんだけど」

「……が名はアンダーマン」

「え? なんて?」

「……名はアンダーマン」

「ごめん、もう一回」

「聞こえているんだろ! アンダーマンだよ、アンダーマン!! 下着を愛する変態紳士、アンダーマンだよ!!」


 ……もういやだ。なんで俺がこんな事をしないといけないんだ。

 ……なんでだっけ? あれ? あれれ? よくよく考えればこんな恥ずかしい格好になってまで、彼女の命令に従う理由はなかったんじゃないか?

 何をやっているんだよ、工藤伸哉。冷静に考えれば、この状況を回避する手段何て幾らでもあったんじゃないかよ。


「え、うそ? 本当!? 本当に変態紳士なの」


 ……人が自身の行動に後悔している真最中だと言うのに、なんでナディアさんは喜色満面に溢れているのでしょうか。


「あ、はい。一応、変態紳士をやらせてもらっています」

「なになに、随分若そうだけどどこの国の子? よその国まで来ておいたしようなんて、やんちゃな男の子ね」


 えっと……。

 口では注意しているように聞こえるんだけど、全然怒っているように聞えないのはなぜだろう。普通、こんな変態が出現したら悲鳴を上げて一目散に逃げるか、自己防衛の為に全力全壊の一撃を放つと思っていたんだが……。あ、この世界は俺の普通は通用しないんだっけか。


「それで、変態さん。何をご所望なの? 衣をはぎ取るとか言っていたけど」

「えっと……。その……じょ、じょ、女性の下着を希望しているんですが」

「下着? そんなのが欲しいの?」

「あ、はい。そ、そうです」

「いいけど……。それのどこが変態紳士なの?」


 ……まさかのカウンターを頂きました。

 女性に下着をくださいと言う事が変態ではないと仰りたいのでしょうか。

 この世界の方々は変態レベルが高すぎるよ、本気で。そもそも、どんな事をしたらこの人達は羞恥心を覚えるのだろうか。……薬を使わない限り、羞恥心を抱かないんじゃないだろうな。


「……って、ちょっと待てい! あんた、何をしているの!?」


 人がこの世界の常識に愕然としている間に何で脱ごうとしているんだよ、この人は。

 他の人達も何もしていないにも関わらず脱ぎだそうとしているし。

 ちょっとあなた方、少し協力的過ぎませんかね。イーグレットさんが盗みをした時は大事になったと聞いているのに。


「何をって、欲しいんでしょ? 下着。ちょっと恥ずかしいけど、欲しいって言うならあげるわよ」

「いやいやいや、おかしいでしょ。変態野郎に下着をくれ、と言われて進んで脱ぎだす女性がどこにいますか。しかもなぜか嬉しそうだし!」

「それは……。こうやって求められるのあの人以来だし。私も女ってわけね」

「理由が生々しいからやめて! 生徒の皆さんも見ているでしょ。って!? 既に準備万端な人がいるし。自身に赤いリボンを巻き付けて、その後どうするつもりなの!? 俺より変態度高いんじゃないかな」


 てか、一人でどうやってリボンなんか巻き付けたの?

 それも魔法か!? 魔法なんだな。そんな事に魔法を使ったんだな、あんたらは。


「わたし、男の人に下着を上げるなんて初めてだよ」

「あたしもよ。少し湿らせた方が喜ぶかしら」


 はい、そこ! 少しは嫌がるか逃げる素振りを見せなさい。

 第一に何を湿らすと言うんだよ、あんたらは。


「しまったわ。こんな事になるならリボンを持っていればよかった」

「荒縄ならあるけど、使う?」

「本当!? ありがとう」


 ありがとう、じゃない!

 おかしいだろ、荒縄を貰って喜ぶなんて。

 てか、何で持っていた。そんなものを。


「……まさか、こんな事になるなんて。こんな事ならはいてくるんだったわ」

「同感ですわ。両方つけていない時に来るなんて、なんて間が抜けているの、私は!」


 憤慨するところがおかしいよ。

 しかもはいていないの!? どう見ても、リリス以上のスタイルの持主だよね。

 体操着から薄ら見える桃色のそれってまさか……。ま、待て! 俺は見なかった、見なかったからな。俺は何も見ていません、ピンク色のボタンなんか見ていませんからね。


「なに慌てているのよ。はい、これ。大切に……ううん。補充したくなったら、いつでも来ていいからね」

「えっと、その……。ありがとうございます」


 なんか普通に頂いてしまったんですが。

 うわぁ。生温かいんですけど。これ、さっきまで普通につけていたんだよな。

 しかもいい匂いするな、これら。エロ本でクンカクンカしたくなる気持ちも分からなくない気が……しないよ! そんなことしないからね。ちゃんとイーグレットさんに献上するからね。


――***――


「なんか、予想外の展開になったわね」

「そうですね……。それ、どうするつもりです?」


 現在、戦利品の品定めしているイーグレットさんに向けて問う。

 判断基準は定かでないが、しげしげと下着を確認しながら分別している。察するにブラの大きさで分けているのだろう。……けど、下の方はどうやって分けているだろう。上下セットの下着もあるから、それは判別しやすいが別々の柄を着ている者のそれを判別するのは至難の業、と言うか見分けられないはず。


「決まっているでしょ。後でお楽しみに使うのよ」


 ……さいですか。

 てか、物凄い速度で分別していくなこの人。


「はい、これ」


 分別し終わったのか、イーグレットさんはある仕分けした一部分の下着類を俺に……って。


「いらないですよ、これ。こんなの貰っても困るだけです」


 思わず受け取ってしまったけど、正直にどうしろと。


「なによ。せっかく貰って置いて、いまにいらないってどう言う了見よ。頂いたんだから、あんたはこれを使う義務があるわ」

「義務ってなんですか!? そもそも、あなたが最初に俺を囮にしようとしたのが問題じゃないですか!」

「意外よね。まさか、くださいと言ったら二つ返事でくるなんて」


 それには激しく同意しますがね。


「だから、彼女達が好意でくれたんだから受け取りなさい。……全部E以下だけど」


 なるほど。

 確か下着ウーマンはEクラス以上の人のしか盗まないと言っていたな。

 けど、そうなると……。イーグレットさんが拝借した下着は全体の割合で言うと三割も満たないはず。


「いえいえ、これはイーグレットさんの為に貰ってきたものです。俺からの好意と思って、ちゃんと受け取ってくれないと困ります」


 流石に受け取れないので、イーグレットさんへ返す。


「私はEクラス以下は眼中にないのよ。あなただって男でしょ。これらですっきりしたらいいじゃない」


 また返された。


「女性が堂々とそう言う発言をするのはいかがでしょう。大丈夫です、自分の事ですからしっかりコントロールできますから」


 また返す。


「情事をコントロールできる訳ないでしょ。この私だって出来ないのだから」


 返される。


「それは、イーグレットさんが変態なだけです。俺と一緒にしないでください」


 返す。

 返される。返す。返される。返す。返される。返す。返される。返す。返される。

 と、下着の譲り合いをし続ける事になるのだが、全くと言っていいほどイーグレットさんは折れる気配がない。……仕方がない、こんな外道な手段を用いたくないのだが。


「でしたら、イーグレットさんの下着もください! それなら、これらも一緒にいただきますから」

「……へぅ」


 下着を受けとり、直ぐに返そうとするのだが予想外の俺の一言にイーグレットさんの全身から湯気が噴出す。


「な、な、何を言っているの。変態なの、変態なんでしょ! こんな私の下着が欲しいなんて、変態以外の何者でもないわよ」


 おお、動揺しているしている。

 物凄く名誉棄損的な事を言っているが、背に腹は代えられない。


「でしたら、この件はなかったことに。この下着類も責任もって処理していただきませんと」

「ぐ、ぐぬぬ」


 なんかすごく悔しそうにしているんですが。

 傍から見れば滑稽その物なのに、何でこんな事で熱くなっているんだ。

 ……まさか、脱がないよな。意地になって脱ぎませんよね、メリッサ・イーグレット。


「わ、分かったわよ。あげれば、これらも受け取るんでしょ」

「……え、マジで」

「マジよマジ! 少し待ちなさい。今すぐに――」


 おもむろに上着を脱ぎだし、果実を包む緑色の下着が……。


「わぁああああああ! ストップストップ、ストップ! なにしてるのなにしてるの、何をしているんですか!!」


 これ以上脱げない様に彼女の腕を掴み、動きを封じる。


「ちょっと、離しなさいよ。あんたが言ったのよ、私の下着が欲しいって。離してくれないと脱げないじゃない」

「俺が悪かった、悪かったです。少し調子に乗りました。ですから、どうか脱ぐのはおやめ下さい」

「なによそれ。あの子たちの下着はもらえて、私のはもらえないと言うの!? 頭に来たわ。なにがなんでも渡してあげるわ」

「どうしてそんな解釈につながるんですか! 待って、魔法を使うのはずるいから。徐々に上着だけフェードアウトさせるとか、どこのエロゲーだよ!」


 結局、イーグレットさんの押しに負けて彼女の下着類まで押し付けられる形となってしまった。

 ……これ、どうやって処理すればいいんだ?

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