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また、授業に遅れました

 驚くべき事に、ソニアさんとリリスは二つほどしか歳の差がないとのことだ。

 話しは大きく変わるが、アカデミーは十五歳から二十歳の五年制らしい。

 リリスが十七と言っていたから、ソニアさんは十九歳と言う事になる。俺の世界で考えると彼女達は大学生と言う事になる。

 皆さんも思った事はないであろうか。大学生と高校生では随分と色気の違いがある事に。色々と物申したい所ではあると思われるが、少なくとも俺はそう感じたことが少なくない。

 ……俺は何を力説しているんだろうか。

 何が言いたいかと言うと、二つしか歳が離れていないと言うのに、これほどまで色気が違うのはなぜなんだ。リリス達で耐性を付けていなかったら、一瞬で昇天してしまったぞ。何がとは言わないが。


「へぇ。彼が私達と同い年の男の子ね。何て名前なの?」

「く、工藤伸哉っす」


 名前を言っただけで歓声が上がる。


「趣味は?」

「特技は?」

「好きな食べ物は?」


 あれ? あれ? あれれ?

 さっきから、質問攻めを受けているけど内容が普通すぎる。……おかしいな、リリスのクラスの人達は随分と斜め上の質問ばかりしてきたんだけどな。

 まあ、その質問者たちは半裸状態なんだけどな。これに関しては、まあほんの少し慣れたと言いますか驚愕に値する一面ではないので気にしない事にしていたが。


「待ちなさい! 待ちなさい、皆さん。そんないっぺんに質問攻めしたら彼が困るでしょ。ここは前もってアンケートを取った質問のみ答えてもらいましょう」


 既に話しを付けていたのか、総員「分かりました」と納得の声を上げる。

 統率がとれていて大変結構なのだが、そろそろ上着を着てはいただけないでしょうか。

 ……さっきからフィリアさんが悪戯で“ぷるん、ぷるん”と胸が揺れる音を効果音として表示させるようにしている為、気になって仕方がないんだけど。その隣で黙々とデッサンしているシンディーさんは何のために来たんだ?


「…………」


 あ、やばい。リリスお嬢様の表情がみるみるうちに強張って行くんだが。

 入室するなり連れ去られて、引き離されたリリスが俺達の間に割って入る事は難しいだろうな。何せ、相手は先輩だ。俺の世界でも目上の人は敬わなくてはいけないのだから、無理やり突入して、連れ戻す事は出来ないようだ。……多分、そうだと思いたい。

 視線が「デレデレするな」と仰っておられるのですが、それは大きな勘違いだ。確かに彼女達から甘い香り――恐らく香水だと思うが――とか、大半がアルプス級のお山さんで圧倒されていないと言われればウソになるけど、だからと言ってデレデレしていると言われたら心外だ。なにあのお山!? 乳頭が陥没なさっているとか超レアケースなんだけど、初めて見た……ゴホン。


「……もしかして、やばそう?」


 俺が押し黙ってしまった事で、何かを感付いたのかにやけながらソニアさんが言ってくる。ここで悟られたら不利になるであろう。なるべく表情に出さない様に心掛けながら――既に遅い気もしなくもないが――答える。


「いえ、皆さん大変お美しいので圧倒されただけですよ」


 咄嗟に思いついた言葉を喋って、直ぐに後悔する。表情は取り繕ったのに、話した内容はまじりっけのない本音そのもの。ただのお世辞と思って聞き取ってくれたらよかったのだが、大半の人は男性を見るのも初めて。

 故に、お世辞じゃなく本音と聞き取って、純粋に頬を赤らめるお嬢様が殆どであった。


「うっわ! なにそれ、今ので口説かれるとかチョロすぎない?」


 そんな中、明らかに否定的な声を上げる者がいた。一同、その声主がいる方向へ視線を向ける。クラスの中で唯一制服を身に着けていた女性は俺の歯に浮くようなセリフに嫌悪感を隠す事無く嫌そうな顔で言ってくる。


「そんなんで口説けると思っているあんたもあんただけど、今ので頬を赤らめる皆さんも初心すぎでしょ」

「メリッサさん、あなたねぇ。初対面の男性にそんな口を利くのは些かどうかと思うわよ。それじゃあ、いつまで経ってもいい人なんか見つかんないわ」

「大きなお世話よ、ミントス。なに? あなたもこんなもやし男に口説かれた口? もう、やっちゃったわけ?」

「やっ!? あ、あなたねぇ! 少しは言葉を慎んだらどうなのよ!」

「はぁ!? 普段から「男欲しい。やりたいの!」と声を大にして言っていたじゃないの。男がいるからって、なにかわい子ぶりしているのよ」


 思わぬ暴露話に言葉を詰まらせる。

 す、すごい。何が何だか分からないが、圧倒的不利な戦力差が一気にひっくり返されられている。

 メリッサさんの猛攻はとどまることなく、次は俺を包囲していた女性陣へ告げる。


「あなた達もそんな男に魅惑の色香なんて魔法を使って恥ずかしくないの? 理想の幻惑も使うなんて女としてのプライドがないわけ?」


 討滅、撃滅、撲滅。もはや一騎当千の無双劇に等しい。

 メリッサさんが指摘した点は事実であったのか、何人かご立派なお山が小さくなっている者がいた。……魔法でそんな事も出来るのかよ。何て無駄な魔法の使い方をしているんだ。


「……まさか、魔法で理性の高を外させて、骨までしゃぶり尽くそうと考えていたわけ!?」

「な、なんだって!?」


 リリスの言葉に俺も驚きの声を上げる。

 そうか、そういう事だったのか。なんか、大人しいと思っていたがそういう事だったのか。真向からの正攻法が通じないと知ってか知らずか、ソニアさんは魔法を使って搦め手を使って攻めてきたんだな。ずるい、ずるすぎる。メリッサさんが言ってくれなかったら、今ごろきっと……。そう考えると寒気が走って仕方がなかった。


「ちっ。ちょっとメリッサさん! なに、私達の作戦を台無しにしてくれたのよ。これじゃあ、祝☆性行為が達成できないじゃないの。何を考えているのよ!」


 何が祝☆性行為だ!

 フィリアさんもいいタイミングで星マークのエフェクトを付け加えないでください。


「それはこっちのセリフよ。朝っぱらから「男が欲しい人」なんて訳の分からない事を言ったと思えば、こんな暴挙に出るなんて。少しは女子力を養った方がいいんじゃないの」


 おっしゃる通り!

 やばい、やば過ぎる。いま俺、猛烈に感動している。少しでも気を抜けば号泣してしまいそうだ。


「女子力ならあるわよ。毎日一回、必ずしているんだから」

「何でもかんでもそっち方面へ話しを持っていかないでよ! 少しはそっちの話しから離れてくれないかな」

「あれ? 私は具体的に何も言っていないんだけど、メリッサさんは何だと思ったのかな? 直ぐに、そっち方面へ勘ぐるあなたの方こそ女子力が足りないんじゃないの」

「失礼ね。あなたが毎日毎日そう言うから、勘違いしただけよ。料理や洗濯も出来ないあなたに女子力が足りないなんて言われたくないわ」

「ふん、そんなの魔法を使えば問題ないわよ。……あ、ごめんね。メリッサさんのその慎ましい胸じゃ、私の様に魔法を使い続ける事は難しいものね」


 笑顔のまま舌戦が繰り広げられる。

 ソニアさんとメリッサさんの舌戦に誰も口を挟もうとはしなかった。

 恐らく、この二人に口で勝てないのだろう。俺は「どうするよ?」と意を込めた視線を送ると「どうしようもないね」と肩を竦めるリリスの姿があった。

 同様に周囲の人間にも「どうします?」と視線を送るのだが、誰も視線を合わせてはくれなかった。俺自身、今のお二人の舌戦の中に割って入りたくはないのだが、このまま放って置くと下校まで口喧嘩が続く可能性も否めない。それは避けたい。


「あの、お二人ともいい加減に――」


 仕方がなく口を挟んだところ、お二人から「うるさい!」とお叱りを貰い――。


「シンヤ君! こんな愛想や色気のない女より、私の方が女子力高いよね。胸も大きいし。何より、プティーズの一人よ」

「はぁ!? 炊事洗濯お掃除、何でも熟せる私の方こそ女子力が高いに決まっているじゃない! そうよね!?」

「いえ、あの……その。どちらの方が女子力高いなんて、この際どうでもいいのでは?」


 そもそも、その女子力が何を基準に数値化しているのか分からないんだけど。

 あと、論点が随分とずれている気がするよ。


「どうでも言いわけないでしょ! ご飯お風呂わ・た・し、の妻名文句の通り、性行為よりも優先されるのは家事全般! その全てを習得している私こそ女子力が高いのよ!」

「バカを言わないで、メリッサさん! ご飯は女体盛り、お風呂は泡遊びって夫婦隠語なのよ。そんな事も分からないで、女子力が高いと言えるわけ!?」

「そんな隠語があるはずないでしょ!」

「ありますぅ! お子ちゃまなメリッサさんが知らないだけよ。大人の女性なら、それぐらい知っていて当然なのよ」

「私も充分大人よ。その……一人だってちゃんとやれるんだからね!」


 気づいて! 気づいて、メリッサさんと呼ばれた女性さん!

 いま、完全に話の方向がソニアさんによって捻じ曲げられちゃったぞ。

 お願い、気づいて!?


「あの……みなさん」


 話しの行く末に戦線恐々としていると、今の今までデッサンに勤しんでいたシンディーさんからご指摘を受ける事になる。


「もう、授業開始の鐘が鳴りましたけど……」

「……あぁ!?」


 全員から驚きの声が上がる。あれ、なんか物凄い即視感。

 ちなみに、教室移動を必要とする授業であったため、クラス全員授業に遅れてしまう事になってしまった。

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