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ハーレムは危険がいっぱい?

 最近、思うことがあるんだ。

 女性に囲まれるハーレムは男のロマンの中でも上位に組込まれる夢だと思っていたが、あれは間違いだ。

 だって、考えても見て欲しい。大多数の女性の中に男は俺一人なんだぜ。普通、心細いと言ったらありゃしない。こんな状況で「やふぅー!」と喜んだり「もてすぎて困ってしまうぜ」なんて言える奴は絶対にいないと思う。

 その考えに至ったソースもとはなんだって? と聞くんだろ。

 ……ふっ。何せ、今の俺の状況が間違いなくハーレムなんだ。それで理解出来るだろ。


「ちょっとあなた! 私よりもワンランク胸が小さいのにクドウ君に色目を使わないでくれる!」

「それはこちらのセリフよ。垂れ乳のあなたでは、クドウちゃんのお相手に相応しくないのが分からないの!」


 今現在、俺は二人の女性の間に挟まれて引っ張られています。女性なのでそれほど力は強くないのだけど、互いに自分の元へ引き寄せようと引っ張っている為に腕がもげそうです。

 ほんと、何でこうなってしまったんだろうか。

 いや、原因は分かっている。全てはソニアさんのせいだ!


――***――


「ちなみにそれは誰が言ったの、シンディー?」

「えっと、ミントス様だけど……。違ったの?」

「違うわよ。確かにDP戦で優勝したら、その人の家に一月だけ一緒に住まう権利が与えられるだけよ」

「一月間も一緒に!? と、言うことは……。はぅぅ!」


 ちょっ!?

 何を想像したのか知らないけど、急に全身から湯気が噴出してきたよこの子。

 あ、白目を剥いて倒れたぞ。ちょっと、リリスさんや。数少ない友人ならば助けてあげるべきじゃないの。


「相変わらずむっつりね、シンディー。いったい何を想像したのやら」

「いやいや、苦笑いしていないで助けようよ。ちょっと、シンディーさん!? シンディーさん、しっかり!」

「あぁ、ダメよダメ。その子、気を失ったら軽く一時間ぐらいは目覚めないから」


 リリスの言うとおり肩を揺すってみたり、頬を叩いてみても全く起き上がる様子はなかった。結局、俺がシンディーさんを教室まで運ぶことになってしまうのだが、運んでいる間、肌に突き刺さるほど視線を感じて居た堪れない気持ちになったのは言うまでもなかった。


――***――


「おはよう。なんと今日は――」


 二人の教室に到着し、リリスが先に入室する。

 彼女はクラスメイト達に驚かそうとして、俺が来た事を報告しようとするのだが、既に俺がアカデミーに来たのは承知済みであったらしい。

 リリスが扉を開けて朝の挨拶を行っている最中、ドドドドと怒涛の勢いで押し寄せるクラスメイト達の姿があった。


「ちょっ!? みんな、きゃぁ!」


 獲物を見つけた獣の様に目をぎらつかせたクラスメイト達を落ち着かせようと、俺の前に立って呼びかけるのだが……。

 数の暴力に勝てる訳もなく、あっと言う間にクラスメイトの波に飲み込まれて跳ね飛ばされてしまった。

 間違いなくシンディーさんが言っていたDP戦の優勝者が結婚出来る、と言うデマ情報を耳に入れたのであろう。


「シンちゃん、シンちゃん。ミントス様が仰っていた事って本当なの!?」

「おはよう、フィリアさん。ちなみに、ソニアさんが言っていた事って聞いても?」

「DP戦に勝てば一月の間、毎日シンちゃんを好き放題出来るって話だよ!」


 興奮気味に言い放つフィリアさんの内容は、さっきシンディーさんから聞いた内容と異なっていた。

 噂や人伝えの場合、その人の解釈で本来の内容が捻じ曲がる時があるんだよな。伝言ゲームをやっていた時も、お題を伝えたところ全く違った内容が伝わる時もあるし。

 けど、今回のは色々とヒレが付け加わりすぎじゃない? 尾ひれ胸鰭どころの騒ぎじゃないんだけど。


「とりあえず、好き放題出来るってところは間違いかな」


 このまま、誤解させておくと色々危険だ。

 少なくともリリスのクラスメイト達だけには誤解を解かないと、と思って間違いであることを指摘したのだが……。


「ほら言ったじゃない、DP戦に勝った人に工藤様からご褒美があるのよ」

「いや、それも違う」

「私はシン君からたっぷりお薬を貰えると聞いたけど」


 薬ってなんだよ、くすりって。

 それのどこがご褒美なんだ?


「それも違うね」

「だから言ったじゃない。優勝者には一日中胸を揉んでもらえる権利を与えられるのよ」

「……それも違います」


 それはそれで大変魅力的かもしれませんが、俺の理性が崩壊するのでご遠慮願いたい。


「じゃあ、一日中罵ってくれるってことも?」

「それはご褒美と言えるのか?」

「一日中足を舐めてくれるんでしょ」

「それもご褒美と言えるのかよ!」

「勇者様と一緒ごっこをしてくれるんじゃないの?」

「なんで特殊プレイばっかり要求するの!? このクラス、少し……いや、かなり業が深い人ばかりだよ!」


 ひどい、ひどすぎる。

 人それぞれ趣向があるのは理解できないが、真顔で聞いてくる内容ではない。

 特に最後のコスプレを要求した人! 言うと同時に魔法を使って魔法様の衣装に着替えるとかどれだけ本気にしていたんだよ。何気にクオリティー高いし。


「もう! みんな違います! DP戦で優勝した人には一月間シンヤを家に招く事が出来るだけよ!!」


 リリス復活。

 再び、俺達の前に立ってくれた彼女がソニアさんと話した顛末を説明してくれる。

 これで騒ぎは納まるかと思ったのだが、どうやら俺の考えは甘かったらしい。クラスメイト達は未だに背負っているシンディーさんを魔法で彼女の席に運ぶと、俺はいつの間に用意された席に座らされ、逃げ道を塞ぐ様に囲まれてしまう。

 所要時間およそ数秒。物凄い連携プレイであった。俺が「え?」と驚きの声を上げた時には時既に遅し。完全に包囲網を敷かれてしまった。

 それから冒頭に戻る事になる。何を考えているか定かでないが、自身をアピールしながら攻められるものだから、もうタジタジ状態である。

 ハーレム王を目指している勇者たちに告げる。自分の力量を弁えてハーレムを形成しないと、必ず後悔する事になるぞ。あなたに、制御できる自信があるならば構わないが。


 ちょっと、そこの御嬢さんや! 俺の腕を取って引き寄せようとしないで。ご自慢のお山で腕を挟んだら身動き取れないから。

 あ、そこのお人や。対抗心燃やして同じように腕を取らないでくれ。しかも、感触が直に伝わるんだが。まさか、魔法を使って下着を取り払ったの!?


「うにゅう、えへへ……。結婚したんだから、あなたは私のよ」

「なにその寝言!? ちょっと起きているなら助けてよシンディーさん! って、あぁ!! 待って、待ってくれ。どこに手を突っ込もうとしているの。ちょ、リリス! リリスさんや。俺の色んなものがピンチなんだけど。お助けを、お助けを!」


 あかん。あかんぞ。

 わいのあれがビルドアップしちまうがな。……変な口調になるほど気が動転している俺を助けてくれ。この際、悪魔さんでも厭わない。誰かこの状況を打破する人物プリーズ!


「うわっ!? なんか、凄い事になっているね」


 通じた!?

 ご都合的過ぎる展開な気がするけど、それでも構わない。

 ちょっとそこのあなた、苦笑いしていないでお助け……を。

 全員が予想しなかった乱入者の正体を知って固まる。全員から注目の的になっていた彼女は、そんな事などお構いなく小さく手を振りながら言う。


「はぁい、シンヤ君。お姉さんが迎えに来たぞ」


 こんな状況でなければ、俺は確実にこう言い返したことであろう。

 この現況を作ったあなたはお呼びじゃない、と……。

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