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今度は五ミリ

 今日は色々と考えさせられる事が多い一日だな。

 このバトルユンボはどう考えても、今の世界の技術レベルを考えるとオーバーテクノロジー過ぎるはず。てか、元の世界でもこれほどまで精巧な機械仕掛けの鎧を作れる所などあるのだろうか。


「驚いたじゃろ」

「驚いたも何も、こんな物を作れる技術がこの世界にはあるんですか?」


 だとしたら、この世界の技術レベルは相当高いはず。

 けど、この国を案内してもらった限りではそんな印象は感じられなかった。これを製作する事が可能ならばもう少し文明レベルは発展していてもいいのだが。


「いや。これはどうやら初代勇者様が戦神に贈った装備品らしい。記憶によると誕生日プレゼント? として贈られたそうじゃよ」


 た、誕生日プレゼント!?

 これが? こんなのをどうやって造ったんだよ初代勇者様。

 ……もしかして、初代勇者様って俺と同じ日本人だったのか?

 それだと色々と辻褄が合うのだが。


「これ、動くんですか?」

「いや。あたし達がどんな事をしても全く持って動かなかった。どうやら戦神以外の人間は動かない様に作られているらしい。試に触れてみたらどうじゃ」


 他の人間が触れても動かないとすると個人認証でもかかっているんじゃないかな。

 俺なんかが触れた所でこいつが動くとは到底思えないのだが。まあ、やってみるけど。

 カレルさんに勧められるまま、俺はバトルユンボへ近寄り肩当にそっと手を触れる。


「……変化ありませんね?」

「そうじゃの」


 やはり変化は見られなかった。


「って、触れたら何か変化が起こるものなんです?」


 こう言うバトルスーツ物は装着しないと起動しないと思うのだが、カレルさんは「動くはずじゃ」と俺の考えを否定する。


「本来ならば、触れた瞬間バトルユンボが分離され、触れた者に自動的に装着されるようになっているはずじゃ。お主が触れても何も変化がないところを見ると、どうやらお主でも起動させることは出来なかったと考えるべきじゃな」


 カレルさんの言っている事が正しいならば、それが必然だな。


「手間を取らせて悪かったの。そろそろ、あやつらも出るころじゃろ。戻るとするかね」

「えぇ。そうしましょう」


 いつまでもこの場所に居たら、二人が心配するかもしれないしね。

 俺は再びカレルさんの転移魔法で元の場所に戻ることにした。


――ギギ


 転移する瞬間、バトルユンボのアームがゆっくり動いたように見えたのは目の錯覚だろう。


***


「ただいまっと……ど、どうしたんだい、リリス?」


 ユニスさん宅から戻った俺達を待っていたのは、明らかに落ち込んでいるリリスの姿であった。何があったか定かではないが、彼女の周りだけ暗線のエフェクトが見えてならない。


「あ、お帰り。シンヤ、イリス」

「た、ただ今戻りました、お嬢様。あの、どうなされたんですか?」

「ちょ、ちょっとね」


 何やらアカデミーであったのだろう。

 このまま彼女を放っておくのも目覚めが悪いので、イリスさんに目線で「この場は任せろ」と頷き、彼女の元へ歩み寄る。


「リリス。ちょっと外の風にでもあたろうか?」

「……うん」


 とりあえず気分転換をさせるため、外に連れ出すことにした。

 不安げに見守るイリスさんに見送られながら、俺はリリスを庭の方へ移動したのであった。


「……で、どうしたんだ?」


 さっきから暗い表情のまま俺と視線を合わそうとしない彼女は、俺の問い掛けに答えてくれなかった。

 ……ふぅ。仕方がないな。


「ひゃん」


 急に胸に触れられて驚いたのだろう。飛び跳ねる様に驚きの声を上げたリリスは涙目で訴えてくる。


「ちょ、ちょっと。人が落ち込んでいるのに、胸……じゃなくて、おっぱいを揉むのはやめてよ」


 だから何で言い直すんだよ、そこで。


「別にいいじゃないか? 普段から揉んで欲しいって催促していただろ? 今日は揉みたい気分なんだ、素直に揉ませろ」

「だからって、何でこんな時に……。私が望んだ時にはやってくれないのに」

「仕方がないだろ。このままじゃ、一向に落ち込んでいる理由を話してくれないじゃないか。俺は口下手だから、リリスが落ち込んでいる理由をそれとなく聞き質す事なんて無理なんだよ。ほらほら、言ってくれないとリリスの胸を揉みし抱くぞ」


 宣言通り揉むぞと手をワキワキさせながら、近寄ると自分の胸を庇う様に腕を組んで、近づいた分だけ離れていく。普段からそんな対応をしてくれればいいのに。


「ほら。揉んで欲しいんじゃないのか? 今なら、リリスが寝るまで揉んじゃうぞ。ほらほら」


 ……自分で言ってなんだが、今の俺って最低だな。ったく。

 ジリジリとお互いの距離が近づき、逃げられないと観念したのだろう。リリスは庇っていた手を解放させて、拗ねた表情で叫ぶ。


「す、好きにしたらいいじゃないの!」


 ……ぇ。

 そこは落ち込んでいる理由を話すところじゃないの?


「ほら、どうしたの? 揉みたい気分なんでしょ? 好きなだけ揉めばいいじゃないの。嫌がる私を後ろから抱きしめて、無理やりすればいいじゃないの」


 なんか対応を間違えてしまったみたいだ。

 完全に開き直ってしまったのか、腕を後ろに回して無抵抗の意思を見せる。

 どうやら意地でも話してはくれないらしい。……ならば、こっちも持久戦覚悟でやらないとダメかな。


***


「……なあ、そろそろ観念してくれませんかね?」

「あ、ん。……い、いや」


 あれから軽く三十分は立っているだろうか。

 未だにリリスは落ち込んでいる理由を教えてはくれない。


「そろそろ、膝がしびれてきたんだが、いい加減に言ったらどうだ?」

「さ、先にひゃん。膝の上に乗せたのはシンヤじゃない。男なら最後まだ、あん。責任持ちなさいよ」

「いやいや、最後までやったらダメだろ。ったく」


 長期戦を覚悟した俺は縁側に座り、リリスの望む通り自分の膝に座らせて、後ろから抱きしめながら胸を責めている。服の上からだから普段と感触が違うけど、これはこれでくるものがある。甘い匂いやら柔らかい感触で我が脳内悪魔さんが「本能を解き放て」とささやき続けている。時折、彼女の腰が動くせいで刺激を受けたらまずい場所も刺激されるのだから余計に騒ぎ立てるのだが、全理性を総動員させて何とか本能と抗っているところだ。


「……ねぇ。そんなに魅力ない?」


 不意にぽつりとリリスがつぶやく。


「ん? どう言う意味だ?」

「そのままの意味よ。……だって、いつまで経っても襲ってくれないじゃない」


 ………………ん?


「ちょっと待て。まさか、落ち込んでいる理由ってそれなのか?」

「だって、指導してもらった教師に言われたのよ。『あなた、男と同棲しているらしいけど、未だに抱かれないなんて、あなたのダンスと一緒でよっぽど魅力がないのね』って」


 俺がシルフィード家にお世話になっている事は、プティーズ・アカデミー中に広まっているらしい。それを快く思っていない教師がダンスのダメ出しと一緒に自分自身がどれほど魅力がない事をリリスに説いてしまったようだ。


「まさか、そんな言葉を信じたのか?」

「だって、こうして揉ませても一向に襲わないじゃない。やっぱり、胸が大きい女の子の方が好きなんでしょ」

「えっと……」


 この場合、なんて慰めたらいいんだよ。

 女性を慰めた経験など皆無だぞ。

 けど、何か言ってあげなくちゃいけない。何か言って安心させなくちゃ、いつまで経っても立ち直ってくれないかもしれない。それこそ、俺を召喚したように無茶な行いをしてしまう可能性だって考えられる。


「リリス。何度も言う様に、女性は胸の大きさで価値が決まるなど絶対にありえない。それに、こうして平気そうにしているけど、本当は一杯一杯なんだぞ」

「我慢しなければいいじゃない。我慢する必要あるの?」

「おぉ、あるとも。今やって子供が授かって見ろよ。そしたらリリス。プティーズの夢を諦めなくてはいけない可能性があるぞ」

「……ぇ」


 そこで予想もしていませんでした、って顔で驚かれても困るんだが。


「だって考えてみろよ。子供が出来たら、最低三年ぐらいは現役から離れると思うぞ?」


 よく知っているわけじゃないが、子供が生まれるまでの間と赤子の面倒がかからなくなるまでの時期を考えるとそれぐらいは多分必要になるだろう。


「そ、そんなに?」

「まぁ、子育てをメイドの誰かに任せるならば……。それでも二年は現役から離れるんじゃないか? それじゃあ困るだろ?」

「……う、ん」

「そう言う理由もあるから、俺も我慢しているの。これで納得した?」

「でも、口とか手とか方法は――」

「いやいや。そう言った知識をどこで仕入れてくるんだよ。それに、リリスにそんな事をされたら絶対に我慢できないから無理」

「うぅー」


 可愛く唸った所で、俺の考えは変わらない。

 それにいつかは元の世界に帰らないといけない身だ。戻ったら一生会えなくなるだろう。

 父親の顔を知らないまま育っていく子供がかわいそすぎる。


「……リリス。それじゃあ、賭けをしようじゃないか」

「賭け?」

「そう。リリスが立派なプティーズになったら、お祝いにリリスを抱く。それでいいか? それまで俺は誰も抱かない。……って、言っていてクソだな、俺」


 なんか恥ずかしくなってきた。

 なに、誰も抱かないって。いつから俺は好きな時に誰かを抱けると考える様になったんだ。


「ほんと?」

「ほんとほんと。嘘をついた方が、俺にはデメリットしかないしな。……これでいいか?」

「……うーん。でも、こうやって揉ませて暴走したらその限りじゃないよね」


 お、少し声色が明るくなってきたな。

 今の約束でいい気になったのか、後ろに回していた手を強引に俺の腕から解放させ、少し揉む速度を遅めた両手の上に置いて手助けし始める。


「シンヤは我慢出来るのかな?」

「ちょ、調子に乗るなリリス!」

「調子に乗っていません。シンヤこそ、早く調子に乗ったらどうなのよ?」


 こいつ、人が慰めたら直ぐに付け上がりやがって。

 さっきのしおらしいリリスはどこに言ったんだよ。


「調子に乗りません。俺の黄金の理性はこれぐらいで爆発致しません」

「な、何でよ。一人で盛り上がっている私がバカみたいじゃない」


 だろうね。さっきから、吐息が乱れているし。

 徐々に余裕もなくなっているんだろうな。流石にこれだけ長時間揉んだらこうなるよな。

 俺もなんだか両手が熱くなっているし、手が……手が?


「え、あの……。シ、シンヤ? なんか、あなたの手が光っているんだけど。これってまさか」

「あぁ。これは最初の時と同じ――」


 言い終わる前に、俺の両手が最初にリリスと出会った時の様に輝き始める。

 今度は自分の意志で動かす事が出来たので、リリスの胸から離そうとするのだが、逆にリリスは自分の手を自らの胸に強く押し当てた。

 最高潮まで発光した光はリリスの胸へ吸収され、彼女の胸元に出会った時と同じようにgrownの英文が刻まれ、直ぐに消え去ってしまう。


「……えっと、リリス?」

「うん。……ちょっとクスハの所に行くね」


 不思議な現象が終わったのと同時にリリスはクスハさんの元へ転移し、己の胸の大きさを採寸しに行った。

 後にリリスに聞いてみると、なんと今回はリリスの胸囲が五ミリもアップしたらしい。

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